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  • 2017/06/14 掲載

AirMap、Rapyuta、Yuneec、世界のドローン企業が語る開発状況と規制問題

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日本は、いま国家戦略特区でドローンの実証実験を積極的に推進しているが、まだ法整備も含めて課題も多い。当面は、農業、インフラ点検、さらにドローン配送などのB2B分野の応用が進みそうだが、世界に目を向けると、本格的な普及に向けた共通課題もあるようだ。AirMapのベン・マーカス氏、Rapyuta Robotics(ラピュタ・ロボティクス)のモーハナラージャ・ガジャン氏、Yuneec Technologyの田 瑜氏、楽天の虎石 貴氏ら、世界のドローン企業のキーパーソンが、ドローンの開発状況や空の安全管理、規制問題などについて議論を交わした。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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NEST2017で開催されたドローン・セッションの模様。先進的なドローン開発を進める世界のドローン企業のリーダーたちが議論した

楽天と合弁会社を設立した「AirMap」

 新経済サミット(NEST2017)では、世界各国のドローン関係者が集まり、ドローン活用の状況や空の安全管理などについて議論が交わされた。まずは、登壇したキーパーソンとその企業を紹介しよう。

 AirMapのベン・マーカス氏は、ドローンを安全に飛行させる空域情報を提供するAirMap社を2年前に設立した人物だ。同社は2017年3月、楽天と合弁会社「楽天AirMap」を設立して話題にもなった。

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AirMap 共同創業者 兼 CEO
ベン・マーカス氏

 同社が提供する無人航空機管制システム「UTM(Unmanned Traffic Management)」ソリューションは、DJIやインテル、3D Robotics、Yuneec Technologyなどの主要ドローンメーカーで採用されている。

 UTMを使うことで、空域管理者は管轄内で飛ぶドローンを把握し、飛行への承認の自動化や、SMSや電話によるドローン運行者への連絡も可能になる。操縦者は常に飛行情報を取得でき、飛行計画を近隣の空港や当局に共有可能だ。

ソフトバンクと協業した「Rapyuta Robotics」

 Rapyuta Robotics(ラピュタ・ロボティクス)のモーハナラージャ・ガジャン氏は、東京工業大学に留学し、宇宙船の制御理論を研究した経験をもつ親日家だ。ちなみに「Rapyuta」という社名は、宮崎駿のアニメ「天空の城ラピュタ」のラピュタから取ったものだという。

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Rapyuta Robotics 共同創業者 代表取締役社長 CEO
モーハナラージャ・ガジャン氏

 ラピュタ・ロボティクスはアインシュタインを輩出したチューリッヒ工科大学からスピンオフした大学発ベンチャーで、最先端の制御技術とAIを活用した「クラウド・ロボティクス・プラットフォーム」を開発した。

 同社は、多様なマシンをネットワークで融合し、生活をより快適に改善することをミッションとしている。

 4月にはソフトバンクとの協業を開始。ロボットとクラウドを柱に、ドローンの自律制御と自動充電といったロボティクス・ソリューションを投入する予定だ。今後は、同社のプラットフォームを開放し、工場や自動倉庫で、移動ロボットやドローンなどと連携するソリューションを展開していく。

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工場や自動倉庫で、移動ロボットやドローンなどと連携するソリューションを開発中

中国ドローンの第一人者が創業した「Yuneec Technology」

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楽天のドローンの取り組み。ドローン配送サービスの「そら楽」の第一弾は、昨年4月に千葉県のゴルフ場でトライアルを行い、飲み物をプレイヤーに届けた

 Yuneec Technologyは、中国の電動飛行機業界のリーディングカンパニーとして知られている。同社の田 瑜氏は、ドローンのほかに、垂直離着陸機(VTOL)と有人VTOLの開発プロジェクトも率いており、注目を浴びている。

 同氏は自社のドローン「BREEZE」を披露し、デモを実施した。これは4Kビデオカメラを搭載したドローンで、自動追跡機能を備えている。価格も500ドルと破格で、日本での販売も狙っているようだ。

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4Kビデオカメラを備えたYUNEEC technologyのドローン「BREEZE」。自動追尾機能も備え、価格は約500ドルと破格

世界のドローンや関連技術の取り組みは、どこまで進化したか

 パネルディスカッションでは、まずモデレーターのティム・ホーンヤック氏が「なぜドローン用の無人航空機管制が求められているのか?」と、AirMapのマーカス氏に問いかけた。

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モデレーターを務めた科学技術ジャーナリスト ティム・ホーンヤック氏

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 マーカス氏は「ドローンを飛行する際は、衝突防止だけでなく、空域をアンロックして安全な航行を実現する情報が必要だ。気象条件も含め、飛行を回避すべき住宅地や道路、歩行者などを総合した完全な全体像を提供すれば、安全飛行に役立てられる」と説明する。

 続いてホーンヤック氏は、Rapyuta Roboticsのクラウド・ロボティクス・プラットフォームの目的について尋ねた。

 ガジャン氏は「我々は、ドローンをデータ収集マシンと捉えており、クラウドとの連携によって、さらにインテリジェントになるものと考えている。クラウドを介してドローン同士が通信し、情報をやりとりしながら学習することで、スマートになる」と強調した。

 ドローン宅配は、米国でもアマゾンが計画を発表しているが、国の認可が下りるまで3年はかかるという。ホーンヤック氏は、日本国内におけるドローン配送の状況について、楽天の虎石 貴氏に説明を求めた。

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楽天 執行役員 CEO戦略・イノベーション室 オフィスマネージャー
虎石 貴 氏

 虎石氏は「日本政府は他国よりもドローンについて協力的だ。しかし現状では規制も多く、更新をお願いしている。現在の規制は、ドローンを想定したものではない。そのため当局も配送サービスが始まると何が起きるのか、情報を知りたがっている。我々は、当局や社会と連携し、新しいルールをつくっていきたい」と同社の考えを示した。

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YUNEEC technology 創業者 兼 CEO
田 瑜 氏

 ドバイでは、一人乗りドローンが実用化されようとしているが、Yuneec Technologyが開発中の垂直離着陸(VTOL)機も同様のものだ。ホーンヤック氏は「人が乗れるドローンはいつ実現できるのか?」と田瑜氏に可能性を聞いた。

 田瑜氏は「現状ドローンの効率は良くないため、有人では20分間ほどしか飛ばせない。そこで垂直離着陸の固定翼モードによって効率を改善し、2時間まで飛行時を伸ばし、200kmの移動を目指す。そうなれば通勤や通学に使える。技術よりも規制のほうが重要だが、この流れは誰も止められない」とし、有人飛行への熱い思いを語った。

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YUNEEC technologyのVTOL型有人飛行機。ドローンのように垂直に離着陸し、飛行する際は固定翼のように飛ぶ。両者の利点を兼ね備える

世界に共通して存在する「ドローンの規制問題」は解決できるか

 田瑜氏の話を受け、ホーンヤック氏はドローンの規制問題について話を向けた。今後、規制問題はドローンの普及に影響を与えるため、まさに各国で議論されている問題だ。

 マーカス氏は「例えると、ドローンはヒモのない凧のようなもの。規制の枠組みを考える際には、伝統的な航空機の規制からアプローチするより、凧を安全に飛ばすためにどうすべきか? ということを考えるほうが合理的だと思う。航空機とドローンは全く違うものだからだ」とユニークな見解を示した。

「AirMapは、すでに10万回のフライトに対して空域情報を提供してきた。安全を損なう場所にドローンが飛ばないように、操縦者に注意を発している。ドローンを見えない距離で飛行させるには、技術で安全性を保証しなければならない。さまざまなものに対して衝突を回避できることが重要だ」(マーカス氏)

 日本でAirMapとUTMの普及を目指す楽天の虎石氏は「UTMは安全性を確保できる素晴らしいアイデアだ。どこにドローンが飛んでいるのか把握できるし、不審なドローンが入れば検知できる。我々はAirMapとともに、安心と認められる技術を提供したい。物流以外にもセキュリティ、点検、農業分野などにニーズがあると思う」と語る。

【次ページ】日本はコンシューマー市場で成功できない?

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