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2017年06月22日

エーザイは「医療ビッグデータ」を創薬にどう生かしているのか

「医療ビッグデータ・コンソーシアム」が3月、政府や関連省庁に「政策提言2016」を提出。医療ビッグデータの活用そのものは叫ばれて数年が経つが、ようやくその動きが本格化してきた。そうした中で、医薬品メーカーのエーザイも2016年から中期経営計画「E-WAY2025」を発表し、ICTによるイノベーションを創薬分野で引き起こそうとしている。データサイエンティストとして、多面的な切り口から医療データを活用してきたエーザイの青島 健氏がMarkLogic World 2017に登壇し、「ビックデータとバイオマーカーによる医薬品開発の意思決定」をテーマに、同社の取り組みや事例などについて解説した。

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医療ビッグデータの利活用が本格化している

(© elnariz – Fotolia)



創薬に貢献する意思決定の拠り所としてのNoSQLデータベース(DB)

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 いま「医療ビッグデータ」が注目を浴びている。医療ビッグデータを活用することで、新治療技術の発見につなげたり、創薬などの医学・医療の技術を革新したり、医療の効率化・最適化や医療費の適正化などを実現できる可能性があるからだ。とはいえ、まだその基盤構築さえできていないのが実情である。医療ビッグデータを活用していくためには、数十年問という長いライフサイクルで継続が可能な医療情報基盤づくりが求められる。

 医療ビッグデータ・コンソーシアムでは、この課題を念頭に置き、医療ビッグデータを「つくる」(求められる次世代病院医療情報システム)、「つなげる」(National Database:NDBをはじめとする医療ビッグデータの民間活用)、「ひらく」(個人情報保護のあり方)という3本柱で推進しようとしている。2020年までに、この方針に沿った医療プラットフォームを完成させる意向だ。

 最近の動向は、病院から処方された医薬情報(レセプトデータ)をDB化し、前出のNDBとして厚生労働省がデータを開示するようになった。ただし、これらの情報は薬のみで、個人が病院でどんな治療や検査を受けたのかということまでは含まれていない。

 そのような動きのなかで、2016年度に青島氏が所属するエーザイも、新たな中期経営計画「E-WAY2025」を発表した。同社は戦略のひとつとして、創薬でICTドリブンのイノベーションを起こす方針を掲げているという。つまり医療データを活用し、創薬に貢献する意思決定を行うということだ。その中核となる組織として、同氏が務める「hhcデータクリエーションセンター」がつくられたわけだ。

「エーザイには、さまざまな実験や臨床のデータが蓄積されています。薬をつくるために、動物や細胞を使った多くの実験を行い、人に適用できそうならば、臨床試験に入ります。さらにレセプトデータも使えるようになりました。とはいえ、これらのデータは社内の部門ごとのDBによってサイロ化され、統合することは至難の技でした」(青島氏)

 そこでエーザイでは、今年の上半期からマークロジックのNoSQL DBを導入し、データ統合へのステップを踏んでいるところだ。マークロジックのエンタープライズNoSQL DBは、社内に散在しているデータを、高速かつ低コストで統合し、そのうえで容易に管理したり、高速な検索が行える。SQLを使わない新しいDBとして、ここ数年で急速に存在感を強めている。

 青島氏は「まだスタートしたところですが、最終的に我々の持つデータを統合し、創薬開発の速度を上げたり、患者の個別ニーズに合致したソリューションを提供したいと考えています。さらに多くのデータを統合・解析することで、薬の新たな組み合わせや、薬とデバイスの組み合わせを開発していくことを目標にしています」と語る。

統合DBにより創薬でどんな意思決定が行えるのか?

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エーザイ
hhc データクリエーションセンター
データサイエンスラボ 部長(兼)
東京室長 博士(工学)
青島 健氏

 実は、統合プラットフォームの構築は、これまで非常に時間と手間ががかかる作業だった。実際にエーザイは、これまで10年越しでプラットフォームを構築してきたそうだ。

 青島氏は「しかし、いまは開発スピードも加速しており、すぐに結果を出せるようにしなければならない状況です。これまで過去70年間で、FDA(米食品医薬品局)によって認可された新薬数は毎年平均20ほどでした。コストは右肩上がりになり、いまは1000億円かけても新薬ができないような状況です。そこで開発コストを下げて、なおかつ新薬づくりを成功させる確率を高めるためには、データサイエンスを活用していく必要があるのです」と強調する。

 データ中心のアプローチにより、効果的なスパイラルを回し、医薬品開発に貢献する。そのために青島氏は、「ビッグデータの利活用による創薬の意思決定」の事例を挙げた。

 たとえば認知症の創薬がある。世界の認知症患者は4000万人で、その治療コストは90兆円もかかっている。そのうち7割ぐらいが、要介護者となっており、大きな社会問題になっている状況だ。しかし、ある薬やタンパク質がアルツハイマー病の治療に役立つかどうか、ターゲットを絞って評価するためには非常に長い時間がかかっていた。

 そこで、その早期判断を行うために、エーザイは米国の「ADIN」(Alzheimer's Disease Information Network)の大規模DB、脳のイメージングデータ、バイオマーカーに加え、自社のインハウスデータを用いて、創薬研究の意思決定を行ったそうだ。

 まず800人ほどのゲノムデータなどを解析し、ターゲット薬を探す。次にゲノムに変異が起きたとき、アルツハイマーと関連があるかどうかを統計的に解析する。データのスコアーが高いほど、病気も進行していることになるが、これまでの伝統的な評価方法ではレアケースでの検出に限界があった。そこで、ADINデータを総合的に評価し、ターゲット薬が本当に効きそうかどうかを調べたという。

 青島氏は「ADINデータとインハウスのデータを組み合わせてみると、一見効くように思えたターゲット薬に優位性がなく、最終的に認知症の創薬として向いていないことがわかりました。従来までは何年もかかったターゲット薬の妥当性の検討が容易になりました」と、データドリブンの意思決定を評価した。

【次ページ】ビッグデータやバイオマーカーを生かしたNoSQL DB活用

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