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2017年07月03日

経営者の意向を超える企画提案の変革(9)

ディスカッションでは「なぜですか?」を積み重ねよ バリューリスニング実践法

コンサルティング・プロモーションでは、バリューリスニングという技術を身につけている必要がある。バリューリスニングとは、意思決定者とのディスカッションを通じて、環境認識と意思、知見を分解して引き出し、意思決定者のロジック構築を支援するものだ。バリューリスニングはどのようなものか、これを事例に基づいて解説する。また、バリューリスニング実践に求められるノウハウ「ファクトの追求」についても解説する。

執筆:データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

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経営者は、戦略達成のための企画提案を待っている



バリューリスニングは、意思決定者のロジック構築を支援する

 第7回で、メッセージファースト=説得の設計を解説した。最終報告のみならず、ディスカッションの場であっても、望ましい落としどころに落とすために、説得の設計をすることは必須だ。

 ただし、それだけで望ましい落としどころに落とすことができる訳ではない。最終報告やディスカッションの場では、当たり前だが意思決定者も何らかの考えをもっている。その考えを尊重し、準備した提案内容とうまく融合させた提案内容にすることで承認獲得の可能性は高まる。

 企画提案において意思決定者の意向を超える企画提案をするには、ディスカッションの中で意思決定者の考えを速やかに得て、それを踏まえた落としどころを創造することが求められる。意思決定者の考えを聞かずに、ただ準備したものを押し付けるのでは、承認はままならないのだ。

 しかし、すべての意思決定者が、考えをうまくまとめられる訳ではない。そこで提案者が、ディスカッションを通じて、意思決定者の悩みを解くロジック構築を支援することで、意思決定者にとっての提案者の価値を高めるのだ。本稿で解説するバリューリスニングは、そのための技術だ。

バリューリスニングのやり方

 意思決定者は、自分の環境認識と意思、そして自身がこれまでに集めた知見の3要素から決定を行う。そこで、意思決定者とのディスカッションでは、まず意思決定者の考えを問う。問うことで得られる答えはロジックだ。

 しかし最初に出てきたロジックは真に受けない。「なぜですか」と、意思決定者がそのロジックをもつに至った背景の事実認識(ファクト)を問う。その答えはあいまいだったり、事実情報でなかったりするので、さらに「なぜですか」と、ファクトが得られるまで追求する。また、ファクト以外に意思の確認も行う。

 得られたファクトから、意思決定者はそのファクトのどこにピン!ときて考えを固めたのか、意思決定者の気づきを洞察する。そして、得られたファクトと気づきを材料に、提案者自身がロジックの仮説を構築する。そして意思決定者に対して、構築したロジックを確認する質問を行い、最後に構築したロジックを提示して合意を得る。

 ディスカッション・プロポーザル(第6回で解説した手順STEP-6)では、意思決定者から得たファクトだけでなく、必要に応じてこちらで準備したファクトも提示することで、意思決定者と協働でより価値の高いロジック構築を目指す。バリューリスニングを用いたディスカッションの例を以下に、合意したイノベーション・ロジック、主な課題とその解決策を図1に示す。

バリューリスニングを用いたディスカッションの例

提案者:「工場長、今回の原価低減プロジェクトに向けて原価低減策を検討中です。そこでまず工場長がお考えの原価低減策を伺えないでしょうか」
(まずイノベーション・ロジックについて意思決定者の考えを問う質問

工場長:「今は個々のサプライヤーが物流手配しているのを何とかしたい。大手はミルクランを推進している。当社でもミルクランを始めたい」

提案者:「自動車業界などで進められている、調達側がトラックを仕立てて複数サプライヤーを回る巡回集荷ですね。しかしなぜミルクランを始めたいとお考えなのでしょうか」
(意思決定者がその考えに至った背景を問う質問)

工場長:「今はサプライヤーに納入させているので、その分高くついているはずだ」

提案者:「なるほど。納入にかかる物流費は調達価格に含まれているので、これを当社がトラックを仕立てて巡回集荷することで安くできそうですね」
(得られたファクトから構築したロジックを確認する質問)

「ところでほかにミルクランを始めたい理由はありませんか」
(もっている考えは一つではないので他の考えを問う質問)

工場長:「在庫圧縮にもつながらないかと考えている」

提案者:「それはなぜですか」
(意思決定者がその考えに至った背景を問う質問)

工場長:「以前、購買部になぜ在庫削減が進まないか、その理由を質したところ、サプライヤー各社でトラックを仕立てるので、納入は荷量がまとまる頻度になると言っていた。『頻度を上げさせて小ロット化させれば良い』と指摘したが、積載効率が落ちるので値上げを要求されることになるそうだ」

提案者:「なるほど、積載効率優先でドカン配送になっているのですね。おおむねそうなのでしょうか」
(得られたファクトから構築したロジックを確認する質問)

工場長:「うむ、そうなっているようだ」

提案者:「巡回集荷するミルクランにすることで、当社の努力で積載効率を高めるとともに、多頻度小ロット納入にして在庫水準を引き下げるのですね」
(構築したロジックを提示する)

工場長:「そうだ。それがねらいだ」

提案者:「ミルクランにすることで、論理的にはリターンを得られると思います。ただし実現には課題もあると思います。どのような課題認識をおもちでしょうか」
(イノベーション・ロジック実現上の課題について考えを問う質問)

工場長:「小規模なサプライヤーが多いが、そのようなサプライヤーは物流を外注しておらず、自社のトラックを使っていることが多い。ドライバも専任はいない。経営者が自分の時間を割いて運転してくるところすらある」

提案者:「物流を当社が行っても、サプライヤー側は固定費で対応しているので、価格を安くすることはサプライヤーを苦しめるだけになるのですね。一時的には対応してくれても持続できる保証はありませんね」
(得られたファクトから構築した課題のロジックを確認する質問)

「他に課題はありませんか」
(課題認識は一つではないので他の考えを問う質問)

工場長:「ミルクランにして多頻度小ロット化すると、これまでより納入指示回数は数倍になる。さらに当社はこれまで調達物流はやっていない。今の購買部がこれに耐えられるか分からない」

【次ページ】 得られたファクトから構築した課題のロジックを確認する質問

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