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  • 2017/07/04 掲載

EMS・ODM業界の世界ランキング:シャープ買収のホンハイ、日本の電機はすべて飲み込まれる?

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世界の大手電子機器メーカーが、競争力を強化するために事業の集中と選択を進める一方、製造部門のアウトソーシングを加速している。こうした流れを受け、ニーズが拡大しているのが電子機器の製造を一括受託するEMS(Electronics Manufacturing Service)だ。とりわけ、低コストの生産体制と安定した生産技術を売りにした、アジアのEMS企業の成長が著しい。その代表格がホンハイ(フォックスコン)、ペガトロン、クアンタ、コンパルといった台湾勢だ。かつて世界を席巻した日本の電子機器産業はこうした海外のEMS企業に侵食され、今や風前の灯だ。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

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世界的にEMS/ODMの存在感が増している
(© xiaoliangge – Fotolia)


EMSとは何か? メーカーが「丸ごとアウトソーシング」する理由

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 「EMS」と言っても、IT業界に詳しくなければ、ピンとくる人は少ないだろう。Electronics Manufacturing Service(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)の略で、電子機器の製造受託サービスのことだ。

 メーカーは、一般的に製品の設計・試作・生産・配送・保守といった機能を担っているが、そうした一連のメーカー機能のうち、特に生産面をメーカーに代わって担うのが、「影のメーカー」とも呼ばれるEMS企業である。

 EMSは1980年代頃、米国のシリコンバレーなどで発展した。日本でよく見られるメーカーの「協力工場」という仕組みを参考に編み出されたビジネスモデルとも言われている。1990年代に入ると、主にIT業界を中心にグローバルに広まっていった。

 協力工場はメーカー1社の専属であるケースが多いのに対して、EMS企業は複数のメーカーから同時並行で生産を受注する「水平分業」のケースが少なくない。

 また、協力工場の場合、たとえば製品に使う部品はメーカーから指定されることが多いが、EMS企業は製品の部品や資材も基本的には自社ルートで調達する。

 一方でメーカー側は、EMSを活用することで付加価値の高い設計や開発、マーケティング、アフターサービスなどに経営資源を集中できる。自社では生産設備を保有しないファブレスなども広がっていった。

 EMS企業側は装置産業のため、売上げ規模を拡大してスケールメリットを追求しつつ、自律的に収益構造を改善していった。

 その後、EMSがアップルやソニーといった世界的な大手電子機器メーカーにも採用されるようになったことで立場が一転。一般の電子機器メーカーを凌ぐほどの巨大企業も出現している。

 その代表格が今話題となっている台湾のホンハイ(鴻海精密工業)だ。

EMS、ODM、ファウンドリの違いとは

 EMSと似たビジネスモデルとして、ODM(Original Design Manufacturing)やファウンドリが挙げられる。ODMは、設計から生産までの各工程を顧客と相談しながら二人三脚で行うもので、設計から生産まで一貫して“お任せ”で請け負うEMSとは異なる。家にたとえれば、ODMが注文住宅、EMSが規格型住宅に当たると言えよう。

 一方、半導体業界で普及しているファウンドリは、発注したメーカーの設計図に基づいて製品を生産するビジネスモデルで、協力工場のような垂直分業の一種だ。

 EMSは、OEM(相手先ブランド供給)とも同一視されやすいが、OEMはあくまでも「自社製品」を他社ブランドとして供給しているのであって、最初から顧客専用の製品を作り込むEMSとは立場が違うと言えよう。

 食品メーカーが小売業のPB(プライベートブランド)を作ったり、協力工場がファッション企業のアパレルを仕立てたりする受託生産は、これまでも製造業の世界で幅広く行われてきた。

 しかし、EMSは電子機器という、技術力を競うハイテク分野を対象としている。しかも、EMSに踏み切ることはある意味、電子機器メーカーとしてのアイデンティティを放棄することにもつながる。それでもなお、IT業界でEMS化が進んでいるのはなぜだろうか。

 大きな契機となったのは電子機器のデジタル化だと言われる。電子機器は汎用のデバイスの比率が高いのだが、デジタル機器は精度が高く、部品数もアナログ機器に比べて60~90%も減った(AV機器の場合)。そのため、製品のアセンブリ(組み立て)では技術的な差別化が難しくなり、価格競争に陥りやすくなった。

 ITは日進月歩で技術が陳腐化しやすいうえ、開発には巨額の投資が必要だ。そこで、大手電子機器メーカーの多くは、リスクを回避するため、半導体やソフトウェアといった技術力を生かせる分野に経営資源を集中し、外注化したほうが有利な分野については思い切って「餅は餅屋に任せる」という方向に、舵を切るようになったのだ。

EMSの世界ランキング、台湾勢が上位を独占

 EMS/ODM企業のグローバルランキングは以下の通りだ。

画像
EMS/ODMの世界ランキング

 この図を見ると東アジアやASEANの企業が、圧倒的優位に立っているのがわかる。それらの地域は、低コストで生産でき、かつ一定の生産技術水準に達しているという条件を備えているためだ。とりわけ、台湾勢が第1~4位を独占しているのが目を引く。

 世界第1位はホンハイである。1974年にプラスチック加工会社として創業、カリスマ経営者として知られる郭台銘(テリー・ゴウ)氏が、一代で台湾最大の企業に育て上げた。

 中国などに生産拠点を構えるフォックスコングループの中核で、ヒューレット・パッカードやデルのパソコン、アップルの携帯電話、ソニーのゲーム機などを手がけてきた。

 資本力を背景として2016年、経営危機に陥ったシャープを傘下に収め、再建に乗り出したことは周知のとおり。最近では、東芝の半導体事業の買収を巡って、日米韓連合とのつばぜり合いを演じている。

 第2位となったぺガトロンは2008年、台湾の大手コンピュータメーカーであるエイスースの生産部門が独立して誕生した。マザーボード、パソコン、サーバ、ネットワーク機器、モバイル端末、液晶テレビなど、得意とする電子機器は幅広い。

【次ページ】日本のEMSは? 今後、成長戦略をどう描くのか

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