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  • 2017/07/11 掲載

スマートスピーカーによる「家庭向けIoT」競争、アップルがアマゾンに勝てない理由

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アップル「HomePod」の参入により、スマートスピーカーによる「家庭内IoT」の普及競争が始まっている。アマゾン、グーグル、マイクロソフト、アップル、そして数々の新興メーカーがしのぎを削る中で、消費者は何を基準にデバイスを選び、どのように利用して行こうとしているのか。消費者の決め手は価格にあるようだが、今後のカギを握るのは、ある事業者との協業という声もある。

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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Amazon Alexaを搭載したAmazon Echoは、
すでに圧倒的トップの地位を築いている

圧倒的なトップはアマゾン

連載一覧
 アップルが「Amazon Alexa」に代表されるスマートスピーカーの分野に「HomePod(ホームポッド)」による参入を発表したのが6月初旬。ここでは「Amazon Echo」「Google Home」という二大製品がほとんどのシェアを占めているが、アップルがこの一角を切り崩せるのか、これまでのスマートスピーカーとどのような違いがあるのかなどが注目された。

 HomePodは当然ながらアップルのSiriを使用する。これはAmazon EchoがAlexaを、Google HomeがOK Googleを使用しているのと同様に、音声コマンドにより他の家電機器を連動させてサービスを受けることができるシステムだ。これにより可能となる機能に関しては、アマゾンやグーグルとそれほどの違い、つまりアップルの独自性はない。強いて言うなら2台のHomePodを使ってステレオスピーカーにできる、という程度だ。

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アップルが12月にも発売する予定の「HomePod」

 今後、マイクロソフトが独自のAIである「Cortana(コルタナ)」を使った同様のスピーカー「Invoke(インボーク)」を、サムスンが「Bixby(ビックスバイ)」を使ったスピーカー「Vega」をリリースする予定で、スマートスピーカーはIoTの要ともなるだけに各社が家電製品や車と連動したサービス、そしてシェアの奪い合いに発展しそうだ。

 現時点では「Echo」「Echo Tap」「Echo Dot」と三種類の製品を販売するアマゾンがスマートスピーカーとしては全体の7割近くの売り上げを占めており、圧倒的なトップと言える。

 2017年の第1四半期(1-3月)の販売実績データを見ると、Echo Dotが53%、Google Homeが30%、Echoが16%、Echo Tapが1%となる。興味深いのは2016年の第4四半期(10-12月)ではクリスマスなどホリデーシーズンによりスマートスピーカーの売り上げが一気に伸びたが、その時点ではグーグルが39%、続いてDot38%、Echo21%、Tap2%だった。(Adobeによるデータ)

 スマートスピーカーの売り上げのほぼ4分の3がホリデーシーズンに集中していたため、シェアそのものはアマゾンが7割でも売上額で見るとトップは単独ではGoogle Homeとなる。ただしアマゾンの3種類のデバイスを総合するとグーグルに勝っている。

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スマートスピーカーの販売実績

アップルがアマゾンに勝てない理由

 この市場にアップルはどのように食い込めるのか。「非常に難しいのではないか」というのは消費者調査を行うモーニング・コンサルト社だ。同社ではアップルがHomePodの発売を発表した後、「スマートスピーカーを購入するにあたって最も重要な要素は何か」という調査を行った。その結果、全体の3割が「価格」と答え、「音声認識の正確さ」の14%を大きく上回った。

 Echoは定価が179ドル99セントだが、現在米国ではネットなどで実質150ドル前後で販売されている。Tapは129ドル99、Dotは49ドル99だが実勢価格は40ドル程度。Google Homeは129ドルで、Echoと比べると価格では競争力があるが、アマゾンのように製品バラエティがないこと、Dotのような廉価製品がないことがやや弱点と言える。

 ところがアップルのHomePodは349ドル、という価格設定だ。

 リサーチ会社eMarketer社では、今年の終わりまでに米国では3560万台のスマートスピカーが販売されている、との予測を出しているが、うち2490万台がAmazon Echoシリーズになる、としている。

 アマゾンのシェアは70.6%、続くグーグルが23.8%。この残りの5%程度をアップルやサムスン、マイクロソフトが奪い合う形になる、という。

 ただし同社では2024年にはスマートスピーカーは世界中で年間に120億ドル規模の市場を持つだろう、とも予測しており、今後急激に巨大化する市場にはもちろんアップルやマイクロソフト、サムスン、そしてその他の新興企業が参入できる余地は十分にある。

 しかしそれも価格とサービスがリーズナブルである、と消費者に認められた場合。アップルのデザイン、性能には一定の評価はあるものの、他社製品と比べて2倍近い価格は大きなネックとなりそうだ。

 iPhoneを例にとると、スマートフォンというコンセプトを世に出したのはアップルだが、その後他者に追随され2016年第4四半期のシェアは12.5%にまで落ち込んでいる。スマートスピーカーの場合アップルが追随する立場でもあり、HomePodの価格設定には首を傾げる向きも多い。

【次ページ】アップルが「逆転」に向けて取り組むユニークな戦略

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