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  • 2017/08/07 掲載

ドローンビジネスを基礎から解説、シェアや市場動向はどうなっているのか

新連載:ドローンが描くビジネスの未来

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日本でのドローンビジネス市場規模は2016年度では353億円、2022年度には約6倍の2,116億円に達すると見込まれている。ドローンビジネスは業務活用を中心に伸びており、ドローンの周辺サービス市場が機体市場を超えて大きくなっていくと予測される。ここでは、こうしたドローンビジネスの急成長を国内外の動向、行政の動き、ドローン活用が進む分野、そして今後の課題などを解説する。

ドローン・ジャパン 取締役会長 春原 久徳

ドローン・ジャパン 取締役会長 春原 久徳

三井物産デジタルおよびマイクロソフトでPCマーケットの黎明期からPCの普及に貢献。 2013年ごろからドローンビジネスに身を投じ、2015年にセキュアドローン協議会会長に就任。ドローン・ジャパン株式会社を2015年12月に設立し、取締役会長に就任。

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ドローンビジネスの現状はどうなのか
(© vchalup – Fotolia)


ドローン市場の成長予測、2022年には周辺サービスが倍に

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 世界中でドローンビジネスは動き始めているが、日本でも2016年はまさに「ドローンビジネス元年」と呼ぶべき年であった。

 2016年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は353億円とされ、2015年度の175億円からほぼ倍増している。2017年度には前年比51%増の533億円に拡大し、2022年度には2,116億円(2016年度の約6倍)にまで達すると見込まれている。

 2015年12月の改正航空法の施行により、コンシューマーがドローンを趣味で飛行させることが難しくなったこともあり、2016年はドローンビジネスの中心が趣味から業務活用に大きく舵が切られた年にもなった。しかし、これは日本特有の現象でなく、世界中で共通しており、ドローンビジネスの中心は業務活用になってきている。

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国内のドローンビジネス市場規模の予測
※1.ドローンビジネスの市場規模は、「機体」と「サービス」と「周辺サービス」の3つで構成される。
※2.機体市場は、業務用(固定翼及び回転翼)の完成品機体の国内での販売金額。軍事用は含まない。
※3.サービス市場は、ドローンを活用した業務の提供企業の売上額。ただし、ソリューションの一部分でのみドローンが活用される場合は、その部分のみの売上を推計。
※4.公共団体や自社保有のドローンを活用する場合は、外部企業に委託した場合を想定し推計。
※5.周辺サービス市場は、バッテリー等の消耗品の販売額、定期メンテナンス費用、人材育成や任意保険の市場規模。
(出典:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2017」)


 分野別に見ると、2016年度はサービス市場が154億円と43.6%を占めており、機体市場が134億円、周辺サービス市場(バッテリー、保険、スクールなど)が65億円である。

 各市場とも今後は拡大が見込まれているが、2022年度においては、サービス市場が1,406億円(2016年度の約9倍)、機体市場が441億円(2016年度の約3倍)、周辺サービス市場が269億円(2016年度の約4倍)に達する見込みだ。

日本と世界の市場動向、シェアはDJIが寡占

 世界の状況との比較でいえば、機体市場は、中国メーカーのDJIの寡占化が進んでいることもあり、中国が強く、サービス市場は欧米において、その開発が進んできている。

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家庭向けドローン市場シェア
(出典:Goldman sachs Investment Research.)


 日本においては、機体市場は業務用機体が中心だ。特に今までも世界より先行していた産業用無人ヘリによる農薬散布機のダウンサイジングとしてのドローンが動いている。

 しかし、日本での機体の台数シェアは、欧米と同様で、DJI製が7~8割を占めている。サービス市場は、各サービスともに実証実験段階のものが多く、まだ、本格的に動きだしているものは少ない。

 欧米では、このサービス市場が活発化しており、日本はまだまだ「国プロ(国家プロジェクト)」といわれるような国や各省庁の予算を使った実証実験が多い。それもなかなかサービス化に至らないものも多く、そこに課題もある。

 一方、周辺サービス市場は、操縦スクールが拡がってきている。2017年に入ってから、その数は100校を超えてきているが、その修了生と操縦を依頼するクライアント側のズレも生じてきており、よりその業務にあう形でのオペレーション技術(単なる操縦だけでなく、業務知識も含めた管理能力など)を身につける場としての動きも大切だ。

国内ドローンビジネス市場を構成する主要8分野とは?

 日本のドローンビジネス市場は、2016年まで「黎明期」であり、この2017年から2019年にかけて「普及期」に入っていくことが予想されるが、2016年に市場として立ち上がってきたのは以下の分野だ。

空撮事業者:

 主に有人ヘリやセスナで映画、ドラマ、空撮を行ってきた業者がドローンにシフトしてきた。加えて、空撮コストも下がったこともあり、各自治体でのインバウンド観光客向けのWebマーケティングの素材としての観光空撮が各地域で拡がってきた。

農薬散布サービス:

 日本の田んぼの総面積は150万ヘクタール程度であり、その3分の1程度である約50万ヘクタールの田んぼが今まで産業用無人ヘリで農薬散布されてきた。残り約100万ヘクタールに関しては、機体コストや操縦の難しさなどで拡げていくことが難しかったが、農林水産省がドローン(マルチコプター)での農薬散布ルールを定めたこともあり、活用が拡がってきている。

土木測量:

 国土交通省が推進するi-Construction (公共道路工事の3次元プロセス化)により、道路工事の際のドローンによる写真測量の技術をベースにした3次元測量が拡がってきている。

点検・検査:

 各種点検・検査分野でのドローンの活用も期待が大きくなっているが、その中でいち早く立ち上がってきているのは、ソーラーパネル点検だ。特に、エナジーソリューションを初めとする企業が点検サービスを検査からレポートまでの一連のシステム化したことが大きい。

 2017年以降、拡がりが見込まれるのは以下の分野だ。

設備点検:

 大きな構造物の屋根や高所の点検に関しては、技術上の課題が克服されてきており、2017年には本格稼働する可能性が高い。また、現在、取得した画像や映像を3次元の位置情報を合わせながら管理していく技術が確立していないが、今後、航路データ等と同期をとる形で、検査のため撮影した場所を3次元構造物に合わせ込む技術 が進むにつれ、構造物の点検も進んでくるだろう。

インフラ点検:

 日本では橋梁やトンネルといったインフラの老朽化が進んでいる。2014年に国土交通省は、2m以上の橋とトンネルの近接点検を5年に1度に義務化する省令を出した。2m以上の橋は70万に及ぶが、その点検の進捗は緩やかだ。

 3年前より、ドローンを含むロボットでの点検の研究・実証実験がなされてきたが、ドローンなどのロボットはGPSにその測位や安定を頼っているため、橋の下のようなGPSが届きづらい環境では測位や安定の維持が困難であった。今後、非GPS環境化での技術が進むにつれ、活用が拡がっていくだろう。

【次ページ】ドローン活用を支える行政の動きはどうか?

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