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2017年08月10日

RCEPとは何か? TPPに代わって注目集める「経済連携」の基礎を解説

ここ数年のアジア太平洋地域の広範囲的経済連携といえば、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が注目されてきました。しかし、2017年のトランプ政権がTPPからの離脱を宣言したことで、TPPの影響力と注目度が減少。一方で注目を集めているのが、アジアの自由貿易協定である「RCEP(アールセップ:東アジア地域包括的経済連携)」です。RCEPとはそもそもどんな経済連携なのか。TPPやFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)とは何が違うのか、そして国内の産業に及ぼす影響などについて解説します。

執筆:田中 仁

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米国のTPP離脱に伴って注目を集めているのが「RCEP」だ



RCEPとは何か?

 RCEPとは、「Regional Comprehensive Economic Partnership」の略称であり、日本語では、「東アジア地域包括的経済連携」と呼ばれています。

 内容としては、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心にした国家群(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミヤンマー、ラオス、カンボジアに日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国)が参加する広域的な自由貿易協定のことであり、別名メガFTAとも呼ばれています。

 この経済連携協定の議論は、2011年11月にASEANの提唱により始まっており、実現すれば世界の人口の約半分である34億人、世界のGDPの3割にあたる20兆ドル、世界の貿易総額の約3割に当たる10兆ドルを占める広域経済圏が実現することになるのです。そのため、広域的経済連携協定としては、現在、世界で最も注目すべき項目の一つであると考えられています。

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(クリックで拡大)

RCEP、TPP、ASEANなどの参加国の違い

(出典:『外交青書・白書』(外務省))


想定される経済連携はどのようなものか?

 ASEANはすでに、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国と個別にFTA(自由貿易協定)を結んでおり、関税障壁の撤廃に動いています。RCEPは、こうした個別のFTAを包括的に束ねることで、広域的な経済連携を実現しようという構想です。

 この構想では、関税の自由化を実現するだけに留まらず、サービス分野においての規制緩和や投資障壁の除外が含まれています。

 これが締結されれば、たとえば国を跨いだ広域的なサプライチェーンの実現・拡大や、通関コストの大幅な低減などが現実のものとなります。自由経済という観点では非常にメリットが大きいわけです。

 また、RCEPの参加国としてすべてのASEAN加盟国が含まれていることも大きなポイントです。事実、20世紀までは、北半球の先進国によって世界のGDPの8割が生産されていましたが、今世紀は、人口に比例する形で、東アジアにその割合が大きく推移してきています。つまり、生産性の地域的な分散が実現しているというわけです。

 協定参加国には、インドネシアやマレーシア、また中国やインドなど世界的に見ても人口大国といえる国々が名を連ねていることから、インパクトの大きさが伺えるでしょう。

RCEPの「8つの大原則」と「8つの領域」

 RCEPには、8つの大原則が規定されています。それが以下です。

  1. WTO協定との整合性の確保
  2. 既存のASEAN +FTAの締結からの大幅な改善
  3. 貿易投資における透明性の実現と円滑化の確保
  4. 参加途上国への配慮
  5. 参加国間の既存の二国間FTAの存続
  6. 新規参加条項の導入
  7. 参加途上国への技術支援、能力構築の実現
  8. モノ・サービス貿易、投資および他の分野の交渉

 また、また交渉分野としても8つの領域が設定されています。

  1. モノの貿易
  2. サービス貿易
  3. 投資
  4. 経済技術協力
  5. 知的財産権
  6. 競争
  7. 紛争処理
  8. その他

 このように見ると、RCEPは極めて多面的な領域をカバーした経済連携協定であることが分かります。

RCEP推進に伴う日本企業のメリットとデメリット

 上記の通り、RCEPはこれまでにない規模の経済連携協定であり、実現されれば非常に大きなメリットを享受できると考えられています。しかし、参加国を個別に見ていくと、それぞれの国で、デメリットが発生することも少なからず想定されています。

 以下が主なメリットとデメリットです。

メリット
  1. 輸出総額の半分を占めるRCEP地域との貿易活性が見込める
  2. 将来有望な市場への参入障壁が大きく低下する
  3. RCEP参加国域内の制度統一により、企業の参入が容易になる
  4. ASEANで製造された製品を中国などで安く販売できるようになる
  5. 農作物を消費者に安く提供できるようになる
  6. 日本の農作物の海外での販売が容易になる
  7. 各種の制約がなくなることで自由な域内投資環境が実現する
  8. 知的財産の面では模造品や海賊版を域内で防ぐことができるようになる

デメリット
  1. 域内大手企業による価格競争が激化(中小企業が困難に)
  2. 関税が撤廃され、国産農作物が輸入農作物に価格競争で負ける可能性
  3. 国内における食料自給率が大幅に下がる
  4. 国内の金融資産が海外に流出しやすくなる

 総括的に見ると、日本にとっては製品輸出や域内事業の拡大という大きなメリットがあると言えます。専門家の試算では、国内の関税が全面撤廃された場合、日本円で約11兆円の経済効果が創出されると見込まれています。さらに、非関税障壁がすべて撤廃された場合には、最大18兆円の経済効果まで見込まれています。

 しかし、たとえば国内農業など、少子高齢化・人口減少の悪影響を受けるセクターでは他国との競争に勝つことは難しく、食糧自給という国の安全保障面で思わぬリスクが顕在化することになる懸念もあります。

RCEPとTPPは何が違うのか

 さて、冒頭でも触れたTPPですが、今回のRCEPと根本的に何が違うのでしょうか。

 元々TPPは米国主導で内容が画策されてきたものです。交渉の中心的課題も、米国と途上国の多分野における対立と、日米の関税に関する撤廃の対立に焦点が当てられていました。そのため、アジア地域の国同士の経済連携とは全く焦点が異なる連携協定であるということが言えます。

 TPPでは、それまで交渉の中心になっていた米国が離脱したことにより、注目度と影響力が減少してきていることも事実。その裏側で、実利的な連携として議論されてきたRCEPに注目が集まってきているという構図なのです。

 RCEPは、元々ASEANと個別にFTAを結んできた各国を協定で束ねる、ということが基本思想なので、すべての軸足はアジアの経済発展・協力というところが強く、その部分はTPPとは異なるところといえるでしょう。それぞれの協定では、参加国も大きく異なります。

 TPPでは、日本、ベトナム、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ。RCEPは、ASEANの10カ国(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミヤンマー、ラオス、カンボジア)に加え、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドとなっています。

【次ページ】RCEPが実ビジネスに与える影響とは?

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