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  • 2017/08/30 掲載

伊藤穣一氏が米国バイオスタートアップ最前線を紹介、不可能は可能になるのか?

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バイオテクノロジーの分野では急速な変化が起きている。ITとバイオの融合により、これまでは考えられたなかった製品やサービスも登場しつつある。MITメディアラボ所長・伊藤穰一氏がホストとなり、最先端テクノロジーとビジネスの現在地を探るイベント「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2017 TOKYO」では、Ginkgo Bioworks、Akili Interactive Labs、Tupac Bioがバイオテクノロジーを活用したビジネスをテーマに議論を繰り広げた。

庄司 里紗

庄司 里紗

ライター/ジャーナリスト。1974年、神奈川県横浜市生まれ。国立音楽大学卒業後、フリーライターとして活動を始める。インタビューを中心に雑誌、Web、書籍等で活動後、2012〜2015年の3年間、フィリピン・セブ島に滞在。親子留学事業を立ち上げ、早期英語教育プログラムの開発・研究に携わる。現在は人物インタビューのほか、地方創生、STEM教育、バイオテクノロジー、食の未来などをテーマに編集・執筆活動を展開中。明治大学サービス創新研究所・客員研究員。http://risashoji.net/

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MITメディアラボ所長 伊藤穰一氏がホストとなって開催された最先端テクノロジーとビジネスの現在地を探るイベント「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2017 TOKYO」

微生物をリデザインして香料を低価格に

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Ginkgo Bioworks パトリック・ボイル氏
 ボストンを拠点とするGinkgo Bioworksは、遺伝子操作によってカスタマイズされた微生物を「製品」として提供するスタートアップだ。同社の顧客には香料やフレグランス、栄養補助食品などを手がけるさまざまな企業が名を連ねている。日本の「味の素」 も、彼らとパートナーシップを組む企業の1つだ。

 同社のデザイン部門を統括するパトリック・ボイル氏は、製品の“製造プラットフォーム”としての微生物の役割について解説した。「DNA is CODE」(DNAはコードである)と主張するボイル氏は、DNAをプログラミングコードとして利用し、酵母などの微生物の遺伝子を書き換えることで、クライアントが望む機能を発現するように微生物を“リデザイン”する手法について紹介した。

 こうした技術によって、企業はより効率的に化学製品を製造することができるようになる。同氏は一例としてローズオイルを挙げた。天然のローズオイルの精製には高価なバラが大量に必要だが、Ginkgo Bioworksが育種に取り組むバラの香りを再現する酵母(微生物)を使えば、安価なフレグランスの製造も可能になる。

 ボイル氏によれば、彼らのビジネスを支えるDNAの合成コストは、現在、劇的なスピードで低価格化が進んでいるという。中でもDNAシーケンシング(ゲノム解析)のコストが「ムーアの法則をはるかに上回るスピードで低コスト化しています」との指摘は、非常に興味深い。

ADHDやうつ病、アルツハイマーに効くデジタル・メディスン

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Akili Interactive Labs
ラルー・ヨスト氏
 こちらもボストンを拠点とするAkili Interactive Labsは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)やうつ病、アルツハイマーなど認知力に関わる疾患に対して治療やスクリーニングが可能なデジタル・メディスンの開発に取り組んでいるベンチャー企業だ。

 デジタル・メディスンとは、ゲームに楽しく取り組みながら前頭前皮質を訓練し、従来の薬剤では完治できないこれらの疾病の改善を試みるユニークな治療法である。

 一見すると、よくあるロールプレイング・ゲームのようだが、同社のCCO ラルー・ヨスト氏によれば「さまざまな臨床テストによって、脳の認知機能を改善する効果が認められています」とのことだ。現在は、今夏に予定されている米食品医薬品局(FDA)からの正式認可を待っている状況だという。

「私たちのデジタル・メディスンは、通常処方される薬と同等の効果が認められるものです。また、スマートフォンアプリを通じてモニタリングした患者の症状や状態をデータベース化し、医師に通知・共有できれば、それぞれの患者に最も適した治療法、つまり個別医療も可能になるでしょう」(ヨスト氏)

誰もが簡単にDNAを設計・合成できる時代がやってくる!

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Tupac Bio
イーライ・ライオンズ氏
 Tupac Bioは創薬のためのDNAソフトウェアを開発する企業だ。同社のCEO イーライ・ライオンズ氏は、DNAシーケンサーの飛躍的な進歩など、合成生物学の発展を支える近年の技術革新について説明。がん細胞に働きかける免疫治療や、危険な病気を媒介する蚊に対する遺伝子コントロールなど、世界各地で進められる研究プロジェクトについて紹介した。

 また、さまざまなレベルでのDNA設計を可能にした同社のソフトウェアについても解説した。同社では、多くの薬剤候補を短時間で調べるハイスループットシーケンシング技術などによって、新薬開発を含むバイオデザインのプロセスの自動化・効率化を実現したという。「将来的にはゲノムのデザインも手掛けたい」と語るイーライ氏は、世界を変えうる合成生物学の分野に、今後も貢献していくと述べた。

【次ページ】バイオの進化が社会に与える衝撃はIT革命にも匹敵する?

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