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2017年09月04日

ペーパーレス化で「斜陽産業」、富士ゼロックスやリコーの生き残り戦略とは

コピー機や複合機をはじめとした複写機メーカーが事業構造の転換を進めている。複写機市場はオフィスのペーパーレス化によって斜陽産業となりつつあり、各社は対応を迫られている。この業界にはいわゆる優良企業も多く、そうであるがゆえに過去の成功体験が逆に足かせになることもあるようだ。

執筆:経済評論家 加谷珪一

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富士ゼロックスが直面する問題は不正会計処理だけではない


会計不祥事の背景にあるのは市場の伸び悩み

 富士フイルムホールディングスは今年6月、傘下の富士ゼロックス販売子会社で発生した不正会計処理をめぐって、過年度決算の修正額が281億円になったことを明らかにした。これによって富士フイルム本体の決算では375億円の損失が発生している。

 富士ゼロックスは、もともと米ゼロックスと旧富士写真フィルムとの合弁としてスタートした会社で、かつては超優良企業として知られていた。

 複写機のビジネスは、機器本体を販売しただけではあまり儲からない。消耗品の販売やメンテナンスを組み合わせることで大きな利益になる。複写機を利用する顧客も、初期負担が大きくなることから、機器の一括購入を望まないケースが多く、リース契約で提供するのが一般的だ。毎月のコピー枚数に応じたリース料金で回収するという形態になっており、長期で契約が継続した場合、メーカー側には大きな利益が転がり込んでくる。

 今回の不正会計はニュージーランドとオーストラリアの現地子会社において発生したもので、あらかじめ定められた最低条件をクリアしていない案件もリース処理し、そこで発生した損失を計上していなかった。売り上げに応じたボーナスなど、各種インセンティブを受け取ることを目的に過大な売上計上を行ったということであり、不正会計としてはよくあるパターンといえる。

 ただ、超優良企業として知られていた同社においてこうした事態が発生したことは、業界関係者に少なからず衝撃を与えた。直接的な原因は現地子会社に対する管理体制の不備ということであり、同社もガバナンスを強化する方針を明らかにしている。

 だが、不正会計の背景には、複写機市場の縮小という大きな流れがあることは間違いない。これまで売れるのが当たり前だった製品が、必ずしもそうではなくなっているのだ。

リコーも同様の悩みを抱える

 実際、複写機事業を含む同社のドキュメント・ソリューション事業の売上高は、2年連続のマイナスとなっている。富士フイルムは、変化への対応力に関しては定評がある企業だ。銀塩フィルムの消滅という危機的な状況を前に、富士ゼロックスを子会社化して当面の収益源を確保しながら、果敢にM&Aを実施。フィルム事業からの完全脱却に成功している。

 今度は富士ゼロックスがペーパーレス化という市場の変化に直面したわけだが、2010年には「複写機卒業宣言」を行い、文書のデジタル化などITソリューションに軸足を移した。ソリューション化は一定の成果を上げたが、モノに依存する部分を完全に排除することはなかなか難しいというのが現実のようである。

 リコーも同じような悩みを抱えている。同社の2017年3月期決算は、売上高が前年比マイナス8.2%の2兆円、当期利益はほぼゼロという厳しい結果だった。複合機などを含む主力の画像&ソリューション部門の売上高は前年比9.2%のマイナス、部門利益は44%のマイナスであった。

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(クリックで拡大)

大手3社の複写機(複合機)関連事業の状況


 業績が急に悪化したように見えるが、これまで無理な販売を重ねていた可能性が高く、前期決算のタイミングで販売不振が顕在化したと解釈するのが自然だ。過去の成功体験が対応を遅らせたのかもしれない。

 こうした事態を受けて同社では、昨年から全社的なスリム化を実施している。日本国内はほとんどリストラの対象になっていないが、米国で約1000人、欧州で約1000人など、約3700人の人員削減に踏み切った。2018年3月期には450億円の構造改革費用を見込んでいるので、場合によってはもう一段の人員削減があり得るだろう。

 一連のリストラは早くも効果を発揮しており、同社の2017年4〜6月期決算では、当期利益が前年同期比で2倍増になった。もっとも売上高は微増で推移しており、事業そのものが劇的に回復したわけではない。米国では追加で1000人以上の人員削減を行っており、四半期の利益は苛烈なリストラの結果によるものだ。

 キヤノンも、似たような状況であり、2017年3月期のオフィス関連の売上高(プリンタ含む)は前年比でマイナス14%の落ち込みとなった。2018年3月期についても売上高は横ばいになる見込みである。

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