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2017年09月13日

連載:企業立志伝

花王の創業者が「正道を歩む」に込めた熱い志

洗剤やトイレタリー、化粧品などを幅広く扱う、日本を代表する日用品メーカー・花王の企業行動の原点は「正道を歩む」という言葉にあります。2004年に制定された企業理念「花王ウェイ」の中の「基本となる価値観」に盛り込まれたこの言葉は、単に法令順守にとどまらず、消費者や取引先に誠実に対応し、より大きな満足を提供するという花王のものづくりの精神を表すものです。そこには創業者・長瀬富郎氏の熱い志が込められています。

執筆:経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

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花王グループの企業理念「花王ウェイ」


奉公先で副支配人に、やがて独立へ

 長瀬富郎氏は1863年、現在の岐阜県中津川市で農業と酒造業を営む長瀬栄蔵氏の次男として生まれています。生家は父親が庄屋・組頭と並ぶ村方三役の一つ、百姓代を務め、農業のほかに代々材木商や造り酒屋などを営んできた商家でもありました。

 商家のしきたりの中で育った長瀬氏は小学校を卒業すると、11歳で母親の実家である、加茂郡神土村の若松屋に奉公に出ています。当時は塩やざる、ほうきなどの荒物を扱っていました。

 16歳で番頭に昇進した長瀬氏は「この人と思ったら裸になっても尽くす」と評されるほど仕事に励んだだけでなく、夜は地元の小学校校長を務める先生のもとに通って勉学にも勤しんだ結果、下呂に開設された若松屋塚田支店の副支配人を任されるほどになりました。

 副支配人として、さまざまな商いの経験を積んだ長瀬氏は、やがて独立を考えるようになります。1885年、「独立した商法の基を立てる」ことを決意した長瀬氏は若松屋を退店します。

無一文、裸一貫からの再スタート

 独立した長瀬氏が最初に手がけたのは、米相場によって商売に必要な資金を蓄えることでした。

 そしてそのお金を元手に新たな事業を始めるというのが長瀬氏の計画でしたが、浮き沈みの激しい相場の世界で計画通りに物事が進むことはありませんでした。

 みんなの期待を背に上京した長瀬氏でしたが相場で失敗、結局は無一文になり、裸一貫から再起を期すために日本橋馬喰町の伊能商店に入店します。

 ここでも長瀬氏は大いに手腕を発揮、番頭として店を任されるほどになりますが、ここで出会った輸入品の石鹸や歯磨き粉などがその後の長瀬氏の運命を決めることになりました。

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花王のこれまでの歩み


 1887年、長瀬氏は伊能商店で培った実績と信用を基礎に、馬喰町に洋小間物商・長瀬商店を開業、石鹸や石鹸入れ、西洋文房具などの卸売りと小売りを行うことになりました。長瀬氏23歳の時であり、これがのちの花王となっていくのです。

外国の高級石鹸に負けない国産の高級石鹸を自らの手でつくりたい

 当時、長瀬氏が扱っていた石鹸のほとんどはアメリカ製でした。国産石鹸も徐々につくられ始めてはいましたが、石鹸の質は悪く、顔を洗うと皮膚を傷めるというほどの代物でした。

 やがて外国製の石鹸に比べて国産の石鹸の品質が著しく劣っていることに不満を持った長瀬氏は、質の高い国産石鹸の製造を決意。伊能商店時代からの知り合いで、「石鹸の釜加減では右に出る者はいない」と言われた村田亀太郎氏を口説き落として石鹸製造に乗り出すことにしました。

 長瀬氏が目指したのは外国の輸入石鹸に劣らない、国産優良石鹸の製造です。そのためには村田氏の技能によって素材の品質を向上させることはもちろんですが、同時に色素や香料の配合なども大幅に改善しない限り外国の高級石鹸に勝つことはできません。

 そこで、長瀬氏は高級石鹸の製造に欠くことのできない化学知識を知り合いの薬剤師の協力を得ながら習得、1902年に石鹸製造のための請地工場ができるまでは長瀬氏自ら石鹸の香料と色素の調合を行いました。

 1890年、こうした努力の甲斐あって完成したのが「花王石鹸」です。「花王」という漢字に関しては、当初「香王」や「華王」という案もありましたが、長瀬氏が何よりこだわったのは「かおう」という読み方です。

 当時の国産石鹸は質が悪く、顔を洗うと皮膚を傷めることもありましたが、長瀬氏が新たにつくった花王石鹸は他の石鹸と違って「顔洗い」、つまり「顔の洗える国産石鹸」という点を強調するために「かおう」になったと言われています。「月のマーク」もこの時から使い始めています。

【次ページ】宣伝は良品を消費者に届けるための良心的な生産者の奉仕である

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