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  • 2018/03/07 掲載

グローバル化を成功に導く方法とは? アシックス、ぺんてる、長瀬産業らが熱論

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日本の製造業がグローバル化の波にさらされていることは周知のとおりだ。実際、企業の存続をかけて、海外進出を果たしてきた。しかし一方で、多くの企業が流行りの「グローバル化」という言葉に惑わされていないだろうか。アシックス、ぺんてる、長瀬産業、パナソニック ES社(モデレーター)の各担当者が「グローバル化の見直し:日本の可能性の道を切り拓く」をテーマに、熱い議論を交わした。

海外比率75%のアシックスがオーストラリアで成功した理由

 アスリート向けのシューズやウェアなど、スポーツ用品全般を扱っているアシックスは、いまや売上の75%が海外で占められ、グローバル化が進んでいる。その中で同社には、いくつもの成功事例があるという。

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アシックス
取締役 フェロー
西脇 剛史 氏
 製造業向けイベント「Manufacturing Japan Summit 2018」(マーカスエバンズ主催)に登壇したアシックス 取締役 フェロー 西脇剛史氏は、「我々の商品が最も成功しているのはオーストラリアだ。その理由は、スポーツに対する興味が高いお国柄が挙げられる。同国は個人で走る際にも、フットドクターが走り方を分析し、お勧めのシューズを選んでもらうという習慣がある。そこで我々のシューズの機能性が評価され、強みが浸透した」と説明する。

 その一方で、今後の課題を抱える海外事例もあるという。たとえば米国では、ECが台頭しており、従来の売り場がドラスティックに変化している。さらにミレニアム世代と呼ばれる若い層は、機能性よりもデザインを重視する傾向がある。リテールでは、ターゲットやコンシューマが変わりつつあり、大手量販店などのホールセールは苦戦している。

海外比率72%のぺんてる「現地化」の試み

 創業70年を迎えた文具メーカーのぺんてるは、単体売上が240億円、連結400億円弱にのぼる。社名は、大日本文具時代の商品に由来しているが、ペンとパステルを合わせて「ぺんてる」にしたという。1960年にサインペンが大ヒットしたが、現在は文具だけでなく、医療品、電子製品、カー製品、産業用ロボットなど、幅広く事業を手掛けるようになった。

 同社の売上構成比をみると、こちらも海外比率が72%と圧倒的に大きい。海外展開は日本企業としては早く、すでに1950年代に進出を果たし、生産拠点も構築した。同社は、創業者である堀江幸夫氏の創業イズムを忘れないように、社訓を毎朝唱和しているという。

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ぺんてる嘱託
元品質保証部長
青木 晃 氏
 ぺんてる嘱託 元品質保証部長 青木 晃氏は「たとえば、機械が故障することは、飛行機なら墜落と同じことだ。我々は品質を厳格に行うことで伸びてきた。現在はグローバルで6ヵ所の生産拠点と21ヵ所の販売拠点を持ち、120ヵ国でネットワークを展開中だ。最初に販売拠点をつくり、その後に生産拠点をつくるという流れで進めてきた」と説明する。

 ぺんてるは、海外進出後、何度も危機を乗り越えてきた。同社の優れた点は、やはり創業の精神を守り、品質管理を中心として、販社も海外拠点も一丸となって取り組んできたことだろう。一方で、海外進出にあたり、宗教や言語の問題もあって、苦労したという。

 青木氏は「海外では公用語に英語を使ってきたが、メキシコの現地労働者は英語を理解していない。そのため生産拠点の立ち上げに約3年かかった。その間に公用語をスペイン語に変更し、管理もビジュアル化を重視した。タイでは仏教の問題に直面した。工場の入口にお参りできる施設をつくり、現地の風習に沿うように工夫した。そういうことで洪水があったときも、従業員が協力してくれた」と当時の様子を振り返った。

MIでグローバル競争が激化、研究開発に求められるダイバーシティ

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長瀬産業
NVC室 室長
折井 靖光 氏
 長瀬産業で2017年から社長直属のNVC室(New Value Creation Office)を立ち上げ、室長として活躍している人物がNVC室 室長の折井靖光氏だ。同氏は、長瀬産業に移る前に、30年ほど日本IBMに在籍しており、グローバル化の先頭を走ってきたという。

 IBMの最終製品は、スパコンとハイエンドサーバで、主要材料のほとんどが日本メーカー製という実情がある。ところが最近では人工知能(AI)が登場し、同社で「マテリアルズ・インフォマティクス(MI: Materials Informatics)」と呼ばれる新規プロジェクトが始動。IBM Watsonなどによって、新材料を発見したり、開発期間を短縮するのだという。

「MIは非常にインパクトがあるプロジェクトで、欧米メーカーの追い上げが激化するという危機感を抱いた。ぜひ、この武器を日本の材料メーカーにも使ってほしいと考え、長瀬産業へ異動するきっかけになった」(折井氏)

 同氏は、IBMで生産技術に従事したことから、早い段階で製造ラインをフィリピン、タイ、中国などに移管してきた。いわゆる「EMS(Electronics Manufacturing Service)」による受託生産は、圧倒的にコストが下がる。しかし一方で、グローバル化によるデメリットも感じたそうだ。

「本来、現場で持つべき生産技術が海外に流れてしまい、テクノロジーによってコストを下げる工夫がなくなってしまった。コスト競争力という大きな武器を得た反面、生産技術という本来日本が強い技術競争力を失うこととなった」(折井氏)

 また同氏は基礎研究・開発部門にも属していた。研究開発の職場はダイバーシティが重要で、多様な人材がいないとユニークな新しいアイデアが出てこないことを身に染みて感じたそうだ。

「IBM Watson研究所では、欧米人以上にインド人、中国人(台湾人)、韓国人が多い。日本人は数えるほどしかいない。そこで彼らは修行を積み、最終的に母国に戻って、母国の牽引力になる。グローバリゼーションは製造業だけでなく、研究開発でも重要だ」(折井氏)

【次ページ】企業が生き残り続けるために「技術の継承」をどうすべきか

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