• 2009/11/06 掲載

モバイル文化研究会 西岡郁夫氏ら「モバイル広告は5,000億円の眠れる市場」--市場活性化へ課題を提言

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近年急速に注目を集めている携帯電話からのインターネットアクセス。一方で、通信の秘匿義務などにより、広告効果を測定する手法が確立されないことがモバイル広告市場の拡大を阻害していると、モバイル・インターネットキャピタルの代表取締役社長で、モバイル文化研究会代表を務める西岡郁夫氏は指摘する。モバイルビジネスの活性化を目的としたシンポジウムが開催され、総務省 情報通信国際戦略局情報通信政策課長 谷脇康彦氏や慶應義塾大学総合政策学部長 國領二郎教授らが登壇した。
モバイル広告市場は5,000億円以上。効果測定手法の確立がかなめ


モバイル文化研究会代表
西岡郁夫氏

 モバイル文化研究会は5日、「モバイルビジネス活性化への提言」と題したシンポジウムを開催した。同研究会は、モバイル文化の発展と市場創出を目指して設立された団体で、モバイル系のコンテンツプロバイダだけでなく、クライアント企業、研究機関、メディアなどがメンバーに名を連ねている。

 今回のシンポジウムの登壇者は、モバイル・インターネットキャピタルの代表取締役社長で、モバイル文化研究会代表を務める西岡郁夫氏のほか、特別講演のスピーカーとして、総務省 情報通信国際戦略局情報通信政策課長 谷脇康彦氏、そして、パネルディスカッションのモデレータとして、慶應義塾大学総合政策学部長 教授 國領二郎氏、パネリストに花王 Web作成部長 石井龍夫氏、キャリア・マム 代表取締役CEO 堤香苗氏、慶應義塾大学総合政策部 准教授 新保史生氏らが顔をそろえた。

 西岡氏は、日本には携帯電話によるインターネットアクセスの情報を広告に利用したがっている企業は多いが、その一方で通信の秘密や事業者側の都合もあり、視聴率やPVに相当する測定情報が得られない現状が問題だと指摘。このことが、多くのクライアント企業のモバイルインターネットへの広告投資を鈍らせているとした。

 現在、日本の広告市場はテレビで2兆円ほどの規模で、インターネット広告で7,000億円ほどの規模がある(2008年度)。インターネット広告に占めるモバイルインターネット広告の割合は、そのうちのわずか1割程度にとどまっている。テレビには視聴率調査があり、インターネットにはネットレイティングスの調査データや、クリックや実際の購入などの効果測定の手法も確立されているが、モバイルインターネット接続については、同様のしくみやデータが公開されていないことが問題だという。

 モバイル文化研究会では、この問題について政府や通信事業者などへ提言を行い、新しい市場創出につなげたい考え。同研究会によれば、モバイルインターネット広告が今より使いやすくなれば、1億台以上が契約している携帯電話の広告市場だけでも5,000億円規模の効果が期待できると試算している。なんとしても、この「眠れる市場」を掘り起こしたいわけだ。

 モバイルインターネットにおいて、視聴率データのようなものが出てこない背景には、通信の秘密を保持しなければならない携帯電話事業独自の事情がある。ユーザーの通話内容と同様に、パケットの内容やユーザーの属性情報などを安易に公開できないというわけだ。そのため、西岡氏は、この議論には業界のみならず行政も巻き込んだ慎重な議論が求められるとした。

技術的な検証だけでは不十分、総務省の方針


総務省
情報通信国際戦略局情報通信政策課長
谷脇康彦氏

 特別講演として登壇した総務省の谷脇氏は、総務省としてのICTの現状認識と今後の取り組みを発表した。谷脇氏は、1990年からの日米のGDP成長率とIT関連の投資額を比較したグラフを示しながら、米国は2000年のITバブル崩壊以外は、GDPの落ち込みがあった年でも情報関連投資は増え続けているが、日本はGDPの落ち込みと情報関連投資の落ち込みが連動しているという。日本では、世界でも有数のブロードバンド先進国であるはずなのに、企業の情報関連投資の優先度が高くないようだとした。


景気変動と情報化投資(日米比較)


 また、今後国内の人口は確実に減っていくだろうとし、そのような状況ではIT業界、通信業界も既存のモデルだけでは成長が期待できない可能性を指摘した。新しい市場を創出し、産業全体を底上げするには、情報関連の投資をもっと戦略的に考える必要があるとし、総務省でもICT利活用をもっと進めるためには、ビジネスモデルの変革や創出を含めた市場拡大、産業創出が不可欠という考えを示した。


ICT政策の今後の課題


 そのための取り組みとして、MVNOの促進、グローバル展開のための支援、ユビキタス特区政策などを進めているとした。モバイルインターネットの視聴率データについても、その取得や公開について通信事業者を巻き込んだ形で実証実験などを行っていることを述べた。


ICT政策の今後の課題


 しかし、ユーザーの属性情報やアクセス情報などは、個人情報や通信の秘密とも関連する問題なので、技術的な検証だけでは不十分な部分もある。この問題については、各種の規制や制度の見直し、放送と通信の融合政策の中での法整備によって対応していきたいとした。

 さらに、通信事業者、サービス提供者、一般企業、ユーザーとステークホルダーが多岐にわたり、制度や政策を考えるうえでは省庁の縦割り行政も問題になるとして、企業のCIO、CTOに相当するのような政府の情報戦略を取りまとめる機関(一定の権限を含む)の必要性も語った。

 総務省の「放送と通信の融合」は、まさに縦割り行政により他省庁から批判的に見られることがあるが、省庁や業界を横串でまとめるような垂直統合型モデルの障害は、官民ともに問題点を内包しているようだ。

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