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  • 2010/08/12 掲載

【対談インタビュー】CIOに聞く情報システム部門の自己改革<第1回>資生堂 提箸眞賜氏

CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第1回は、資生堂 情報企画部長 提箸眞賜氏に話をうかがった。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載

頼られるシステム部門を実現する


 資生堂の情報企画部は、その名のとおり、IT戦略策定、業務革新推進、ITガバナンス確立維持、運用保守管理などを行っており、開発・運用・保守は外部パートナーに委託している。

 資生堂の情報システム部門である情報企画部がユニークなのは、彼らがユーザー部門から頼りにされていることである。こう言うと、意外に思われる方がいるかもしれない。しかし、大企業の中にも、経営者やユーザー部門から頼りにされていないシステム部門は決して少なくないのだ。この背景には、システム部門が、技術(IT)の修得を中心に人材を育成し、事業や業務の知識・ノウハウが不十分で、ユーザーに言われたことしかやらないという実体がある。

 資生堂の場合、ユーザーは、システム化検討の早い段階で、情報企画部に相談を持ちかける。それは情報企画部に、IT投資に見合う以上のリターンを実現する、業務改革方法のレビューやアドバイスをする能力があるからだ。

 この能力は、主に、資生堂の人事政策によって実現されていると言える。資生堂では、スタッフ部門には現場経験者を配属するという基本方針がある。情報企画部の場合、マーケティングや販売、生産、経営企画などの現場で、5年~10年のキャリアを積んだ人間が、配属される。IT関連の学部を出た新人を、最初から情報企画部に配属することはないのである。

長期の目線で人材を育成する

 現場経験者は、たしかに業務は良くわかっている。だからといって、すぐに情報企画部の仕事ができるわけではない。ITについて学ばなければならない。業務改革能力も獲得しなければならない。そこで情報企画部では、人材育成に時間をかける。

 まず、人材獲得の段階から、情報企画部にとって必要な人材要件を明確化し、人事部門に獲得の依頼、交渉を行う。獲得した人材は、3年から5年の計画で育成する。そのため、一旦情報企画部に配属した人材は、この育成期間は他部門に異動しないように、人事部門と方針を共有している。育成の推進は、新任管理職を中心に育成担当を決めて行っている。具体的な育成方法は、メンターのアサインや、スキルモニタリングによる計画的育成である。たとえばスキルモニタリングは、定期的にUISS(情報システムユーザースキル標準)を基準に育成状況をモニタリングし、育成目標、方法を確定していく。この場合、本人の自己評価と上長評価の両方を行い、両者の差異を中心に議論を重ね、今後の育成方法を固めていく。また、まず半年でITパスポート取得など、マイルストーンを明確化して育成を進めている。

 そして最後に目指すのは、[1]業務全体を見通せる、[2]業務改革によるリターンを追求できる、そして[3]適正なITコストを明確化できる能力である。ユーザーが情報企画部を頼りにするのは、これら3つの能力があるからだ。ユーザー部門は、自部門の業務は当然理解しているが、全社、全グループの業務的な関連を理解するのは難しい。また、問題や要望の解決に議論が終始し、IT投資に見合う効果が得られるまで、業務革新方法を突き詰めていないことが多い。さらに、妥当なITコストもわからない。そこで、情報企画部のメンバーには、これら3つの能力を修得させていくのである。

 なお、良い人材を獲得するためには、良い人材を育成し、他部門へ供給しなければならない。上記3つの能力を持った人材への、他部門からのニーズは強い。良い人材を育成することが、良い人材獲得、新たな良い人材の育成と好循環を生み出している。

 また提箸部長は、経営企画部門と共同で、IT投資をレビュー・フォローする仕組みを作った。この仕組みは、情報企画部員が、上記能力を発揮する場とも理解できる。人材を育成するだけでなく、能力発揮の仕組みを作り上げているのだ。ちなみに、このような仕組みが作られた背景には、提箸部長自身が経営企画部に在籍していた点がある。現場経験者を情報企画部にアサインする仕組みが、こんなところでも効果を発揮している。

 以上の仕組みは、提箸部長を含め、歴代の情報システム部門トップが作り上げてきた。今でも提箸部長は、自分の時間の多くを、新たな人材の獲得、育成フォローといったことに割いている。実際、配属された人材の中には、情報企画部に不向きな者もいる。そのような人材を早めに把握し、別の部門の新しい機会を与えることも、部門長として重要な仕事である。また、他部門へ異動する部員が、そこで十分に活躍できる仕事を得、キャリアをさらに拡充できるようにすることも、部長の重要な仕事である。

実現にはトップダウン展開が必要

 ユーザー部門と情報システム部門の、人材ローテーションの重要性は、すでに語り尽くされている。しかし、十分にこれが機能している企業は、数えるほどしかないだろう。もし、資生堂のような人材ローテーション、育成、能力発揮の仕組みを作るとしたら、どうすればよいのだろうか。提箸部長は、以下のアドバイスをしてくれた。

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