• 2011/02/10 掲載

【福島麻衣子氏・いしたにまさき氏インタビュー】アキバ・聖地巡礼・クラスター――多面的に日本の若者と文化を考える(2/2)

『日本の若者は不幸じゃない』著者 福島麻衣子氏・いしたにまさき氏インタビュー

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変遷を遂げた街・秋葉原

――帯では田原総一朗さんと東浩紀さんがコメントを寄せています。お2人と本書の関わりをお教えください。

福嶋氏■
田原さんとは『BRUTUS』の企画で対談させて頂いたんです。ディアステージについて聞かれたので分かりやすく説明しようと思い、「ここは村で、アイドルのライブは村のお祭りです」と説明したら、それまで村というと「ムラ社会」とか、悪いものとしてイメージされることが多いけど、実際の盛り上がりを見て「村の機能が秋葉原で再考されているのか!」と興味を持っていただいたようです。それが『朝まで生テレビ』に呼んで頂いたのもそれがきっかけでした。その翌日の生放送だったんですけど(笑)。東さんは最近では『思想地図β』で活躍されてもいますし、昔からお世話になっていたので、コメントを頂くならこのお二人にお願いしたい!と思ったわけです。

いしたに氏■実はこの本の構成は、東さんにヒントを頂いたところもあるんですよ。氏がツイッターで「ぼくは秋葉原には属していないけど、ぼくの精神のどこかかが秋葉原に絶対的に属していて、それから逃れることはできない」と書いているのを読んで、ピンとくるものがあった。つまり、なぜ変わったのかを秋葉原の中に求めていてはいけないんだな、ということに気がついたんです。あとになって考えると、東さんのツイートは多分『思想地図β』の特集でラゾーナ川崎に行った日につぶやいたものだったんですよ。

――「ショッピングモーライゼーション」(ショッピングモールの在り方から、消費社会と都市の関わりを探った論考)ですよね。

いしたに氏■
東さんがやろうとしたのは「現代社会を考える上でネットの力は計り知れないが、最後は土地や場所の力に縛られる、その影響はこれからも残る」ということだった。僕がこの本を書いている時にはもちろんその特集のことを知らなかったけど、期せずして似たアプローチになったところもあると思います。僕は「場所が持つ力と、そこになにかを投下することで人が動き出すという現象はあるんだ」という話にしたかったので。その具体例として挙げているのが、クラスターが集まることで聖地巡礼のように経済に関与する規模の活動が起こるようになった、ということです。

photo
あおい書店町田店では若者論に関するフェアが開催
――「秋葉原の急激な変化を読み解きたかった」とおっしゃっていますが、具体的にはどのように変わったのでしょうか?

いしたに氏■
僕が初めて秋葉原に来たのは小学校4年生頃で、当時はオーディオの街でした。それからだんだんパソコンの街に変わり、ある日気付くとアニメの店が増え、いつの間にか「萌え」の街になっていたという変遷があります。でも最近がいちばん劇的に変わってるんですよ。というのも、それまで秋葉原はハードウェアの街だったのに、「萌え」はソフト。変化の仕方が今までとはまったく違うことが興味深かったんです。

――この10年間でここまで変わった街は珍しいのでは? と本を読んでみて感じました。

いしたに氏■
いや、単純に変化した街という意味ではあまり珍しくはないんですよ。10年前の渋谷・六本木を振り返っても、今とはかなり違っていると思うので。ただ、六本木も渋谷も建物先行なんです。ミッドタウンやヒルズが出来たことで人の導線が変わり、やって来る人も変わるというパターン。でも秋葉原の場合、パソコンを買う客層がいることは分かっていたけど、もうハードウェアを売るのは時代的に難しくなっていた。だから彼らが喜ぶ別のものを提供することにしたんです。それが結果として「萌え」になった。そういう変遷を遂げた街はかなり珍しいと思います。

――福嶋さんは「10年後20年後の不安を取り除くこと」は難しいという点についても書かれてますよね。実際に将来の不安は全く感じないですか?

福嶋氏■
不安はないというか、本当に10年後の自分が分からないんです。今こうなってるなんて10年前は全然考えてなかったのと同じことで、そこに想いを馳せても意味がない。だから来年はこうしよう、再来年はこうしようという道筋さえ見ていれば、10年後に今より急激に悪くなっていることはないだろうって。

いしたに氏■僕もおじさんになってきて冷静に考えられるようになってきたんですが、考えても意味がないというのはまったくもって同感です。結局将来というのは自分がやっていることの延長でしかないので、実はそんなに新しいことは起きないんですよ。だからそこを考えてる暇があるなら行動しろ、ってこと。終ったことに対しては評価したほうがいいけど、振り返るのは終ってからでいい。

 だからもふくちゃんに現在に至るまでの過程もこの本で書いてもらったのは、なにかの渦中にいる人に「自分も今のまま続けていていいんだ」って思ってもらいたかったからなんです。過程にいる間は分からないけど、それが必要なプロセスだったといつか気付ける日がくると知ってもらいたいんですよね。

(取材・構成:田島太陽

●福嶋麻衣子(ふくしま・まいこ)
株式会社モエ・ジャパン代表取締役。秋葉原にてアイドルが働くライブ&バー「ディアステージ」とアニソンDJバー「MOGRA」を経営。通り名は「もふくちゃん」。
DearStageRecords.というレーベル・プロダクションの運営もしている。
秋葉原ディアステージ
MOGRA

●いしたにまさき
ブロガー&ライター。Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ「みたいもん!」運営。2002年メディア芸術祭特別賞、第5回WebクリエーションアウォードWeb人ユニット賞受賞。著書に『ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である』(技術評論社)、共著に『ツイッター 140文字が世界を変える』(マイコミ新書)、『クチコミの技術』(日経BP社)、『マキコミの技術』(インプレスジャパン)など多数。
ブログ:みたいもん!

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