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  • 2012/02/14 掲載

震災後2週間で操業再開、富士通のグローバル戦略を支えるサーバ生産工場を訪ねる

中堅・中小企業市場の解体新書

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これまで、日本HPNEC日立製作所のサーバ生産現場を訪ねてきた本シリーズも4回目となる。今回は富士通のPCサーバの生産を支える、福島県伊達市にある富士通アイソテックを取り上げる。2011年の3月には通産100万台のサーバの生産を記念する式典が開催されて筆者も参列したが、その10日後に東日本大震災が発生し、同工場も大きな被害を受けた。しかし、そこから約2週間後には生産を再開するなど、スピード復興を遂げている。その原動力は何だったのか?業界の注目を集める同工場の実態について述べたい。

ノークリサーチ 伊嶋謙二

ノークリサーチ 伊嶋謙二

ノークリサーチ 代表取締役社長
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。

通産100万台を超えるPCサーバ生産を達成

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福島県にある富士通アイソテックの本社工場
住所:福島県伊達市保原町東野崎135番地
敷地面積:約8万平方メートル
従業員数:約813名(2011年4月現在)
 富士通アイソテックは、福島県伊達市の阿武隈急行線保原駅から徒歩5分程度のところにある。遠く奥羽山脈を背景とする広大な平野に位置し、駅前の周辺地域に大きく展開している。周りはほとんど高い建物もなく、伊達市の田園地帯に極めて目立つ存在として居を構えている。阿武隈急行というローカル線の保原駅のホームからは同工場の全容が見渡せる。ここからすべてのPCサーバ製品が全国の富士通の物流センターに送られる。

 まず簡単に富士通アイソテックの沿革を紹介しよう。同社は1957年に、富士通(当時は富士通信機製造)と中堅SIerのクロサワ(当時は黒沢商店)との共同出資により「黒沢通信工業」として創業、富士通のグループ企業として電算機端末事業からスタートした。1975年から開始したプリンタ事業は、今でもシリアルドットプリンタおよびサーマルプリンタの開発、製造、販売、保守まで行っている。1985年には現在の「富士通アイソテック」に社名を変更した。

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富士通アイソテックの業態変遷
 ちなみに「アイソテック」の名称の由来は、「アイソトープ(Isotope 同位体)とテクノロジー(Technology 技術)」の2つの言葉を融合させた造語であり「人と技術の調和」を目指す思いを表現したものだ。1995年からは個人向けデスクトップPC、1999年に企業向けデスクトップPCの製造を開始している。

 そして2001年からはPCサーバおよびワークステーションの製造をユーザック電子工業(現PFU)から移管し、「Made in Japan」として製造を開始している。また、2002年からは富士通東日本テクノセンターとして個人向けPC(デスクトップ、ノートブック)の修理業務、2003年からは富士通東日本リサイクルセンターとして不要となったIT機器のマテリアルリサイクル事業を展開している。

 同リサイクルセンターは品質、コスト、デリバリー、グリーンの4つのテーマで、使用済みのIT機器のリサイクル事業を営み、資源の再資源率90%以上という業界最高水準を達成している。そこで分別された部品はプラスチックの原料、燃料、金属原料、貴金属回収、ガラス原料としてリサイクルされている。

富士通グループ全体のPC修理を担う

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富士通アイソテックの本社工場の見取り図。E棟の1FでPCサーバを、2Fでデスクトップパソコンを製造する
 製造の考え方は、これまで取り上げたNECや日立製作所と同様に、トヨタ生産方式と自律的に改善できる人づくりを基本としており、それに基づいたQCD活動(Quality:品質 Cost:コスト Delivery:納期)を推進している。

 同工場の主な製造機器であるプリンタとデスクトップパソコン、PCサーバのうち、プリンタについてはもともと創業当初から生産していたこともあり、現在でもドットインパクトプリンタとサーマルプリンタは製品企画から販売まで行っている。富士通ブランドはもちろん富士通アイソテックブランドやOEM販売も手がけている。

 しかしながら今回は、主にパソコンとPCサーバの製造ラインを中心に取材した。デスクトップパソコンとPCサーバは正面建屋のすぐ隣の最も大きなE棟と呼ばれる場所で製造されており、1FがPCサーバ、2Fがデスクトップパソコンの製造ラインとなっていた。

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PCサーバの組立ライン
 デスクトップパソコンの製造ラインは、本体とディスプレイ分離型のものが3ライン、一体型のものが2ライン、どちらの製造も行える汎用ラインが3ラインという構成だ。この全8ラインで、年間100万台、月間8万台のデスクトップパソコンの製造が可能である。1階の物流建屋の出入口には、部品の受入れや25分ごとの大物部品の配送や商品出荷のための随時トラックがつけている状態だ。

 1FのPCサーバ製造フロアは、ブレードサーバが1ライン、タワー/ラックサーバが4ラインの全5ラインで製造を行っている。専任の担当者がキッティング情報をもとに、ハンディターミナルを使用して部品を集め、ラインに供給し、ラインを流しながら数名で組み立てる体制である。

 組立後に凹凸のある床を台車で通過させる振動試験を経て、基礎試験、高負荷ランニング試験、OS、ソフトウェアのインストールの工程で、約5時間程度で完成となる。それを終えた後に外観検査を行う。PCサーバの品質保証検査としては、組み立てた後に試験を行った後、梱包終了後の3箇所から抜き取り検査を行う。毎日数台実施しているという。

 また同工場は、富士通グループ全体のパソコンリペア(修理)サービスの担い手であることも特徴のひとつだ。富士通グループでパソコンリペアセンターは日本に2拠点あり、同敷地内にある東日本テクノセンターがそのうちのひとつだ。西は富士通明石工場、東は富士通アイソテックで、関東甲信越以北はすべて富士通アイソテックに集めて修理される。パソコン修理は、引き取り、修理、配送で5日以内を目標にしているという。

【次ページ】3.11で被災した同社が2週間で工場を再開した原動力

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