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  • 2012/05/25 掲載

中堅・中小企業にもMDM(モバイルデバイス管理)は必要か?

中堅・中小企業市場の解体新書

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スマートフォンやタブレット(以下、スマートデバイス)は一般消費者向け市場で急速に普及しつつある。それを受けて、中堅・中小企業においても「スマートデバイスを自社の業務に活かせるのではないか?」という期待が高まってきている。しかし、スマートデバイスはiOSやAndroidといった「OS」を備え、その上で動作するアプリケーションを自由にインストールすることができる。その点では携帯電話というよりもむしろPCに近い。さらにスマートデバイスは手軽に持ち運ぶことができる。逆に言えば盗難/紛失のリスクはノートPCなどに比べて高いといえるだろう。そのため、企業が利用する場合には端末管理やセキュリティ対策においてスマートデバイスならではの配慮が必要となる。今回はこの点について考えていくことにする。

ノークリサーチ 岩上由高

ノークリサーチ 岩上由高

ノークリサーチ シニアアナリスト 博士(工学)
早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業などでIT製品及びビジネスの企画/開発/マネジメントに携わる。ノークリサーチでは多方面で培った経験を生かし、リサーチ/コンサル/執筆・講演など幅広い分野を担当。著書は「AdobeAIRの基本と実践」「クラウド大全(共著)」(日経BP刊)など。

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スマートデバイスに求められる端末管理/セキュリティ対策の特徴

 昨今、スマートデバイスの端末管理やセキュリティ対策を実現するさまざまなソリューションが登場してきている。まずはスマートデバイスの端末管理やセキュリティ対策としてどのようなものが必要かを俯瞰しておこう。大まかに整理すると以下のようなポイントが挙げられる。

  1. 設定情報/デバイス/アプリケーションの管理
  2. マルウェア対策/フィルタリング
  3. 盗難/紛失対策

 1.は端末を利用する際のパスワード設定を強制する、カメラなど特定のデバイス機能の利用を制限/禁止する、特定のアプリケーションのインストールや起動を禁止するといった機能だ。クオリティの「QND Plus/QAW」やエムオーテックスの「LANScope Cat」といった、PC向け運用管理/資産管理ソフトウェアが実現する機能に近い。

 2.には不正プログラムの侵入防止や、悪意のあるWebサイトへのアクセス禁止などが該当する。これもトレンドマイクロの「ウイルスバスタービジネスセキュリティ」やシマンテックの「Endpoint Protection」などが提供する機能に近いといえる。

 上記2つまでは、このようにPC向けの端末管理やセキュリティ対策からの類推で理解できた。だが、3.の盗難/紛失対策はスマートデバイスだからこそ求められる機能といえる。代表的な機能は以下の通りだ。

・リモートロック機能
スマートデバイスを紛失したことが分かった時、ネットワーク回線を通じて端末の操作を行えなくする機能である。多くの場合、ブラウザでアクセス可能な管理画面が用意されており、そこから端末の操作をできなくする(ロックする)ようになっている。

・リモートワイプ機能
スマートデバイスを紛失したことが分かった時、ネットワーク回線を通じて端末のデータを消去するなどして情報が漏えいしないようにする機能である。指示の手段はリモートワイプと同様にブラウザによる管理画面が提供されているケースが多い。

・ロケートデバイス機能
スマートデバイスを紛失したことが分かった時、端末から発せされるGPS情報を元に端末がどこにあるかを把握できる機能である。位置情報の確認はブラウザでアクセス可能な管理画面で行うのが一般的だ。さらに遠隔でカメラ撮影を行い、近辺の様子をメールで送ることのできるソリューションもある(位置情報と周辺の風景写真の両方を用いれば、より確実に端末を発見できる)。

 「スマートデバイスが元々持っているパスワードによる保護機能を使えば良いのでは?」という意見もあるかも知れない。確かに大半のスマートデバイスには待機状態から復帰をする際にパスワード入力を求めるようにする機能が備わっている。

 だが、そこで入力するパスワードに複雑なものを指定しているユーザーは多くないだろう。盗難/紛失の場合には、悪意のある者がパスワードを総当たりで試すのに十分な時間がある。そのため、遠隔でも利用を禁止することのできるリモートロックのような機能が必要になってくるわけだ。

 しかし、ロックをかけるだけでは十分でない場合もある。スマートデバイスの中にはメモリカードを増設できるものも少なくなく、リモートロックをかけていても、メモリカードを物理的に抜かれてしまう恐れがあるからだ。

 そうしたことが起きる前に先にデータを消去するため、リモートワイプのような機能は必要となる。このようにデータ漏えいの危険を最小限に抑えつつ、ロケートデバイス機能によって端末を早急に探し当てるというのがスマートデバイスの盗難/紛失対策の基本的な考え方だ。

 ただし、残念ながらこれでも万能ではない。上記の機能ではいずれも端末がネットワークにつながっている必要がある。もちろん、一時的に電源オフやネットワーク遮断の状態になっても、次にネットワーク回線が利用できるようになった時点で各種機能が働くようにはなっている。

 しかし、紛失/盗難の直後に電源オフの状態にされ、そのままメモリカードを抜かれてしまった場合には対処が難しい。これを防ぐためにはメモリカードに保存するデータを暗号化するなど、また別の対処が必要となってくる。

 バランスよくリスクを減らすためには、さまざまなソリューションを組み合さなければならないという点はPC向けのソリューションと同様なのである。

画像
スマートデバイスの盗難/紛失対策

 このようにスマートデバイスの端末管理やセキュリティ対策を実現する仕組みは「MDM(Mobile Device Management):モバイルデバイス管理」と呼ばれる。ただし、MDMといった場合、先に述べた3つのうち、1.と3.のみを満たしたソリューションを指すことが多い。名前からすると、2.も含めてスマートデバイスを利用する際の不安要素を全て解消してくれるソリューションのようにも思えるが、2.が含まれなかったり、1.と3.の一方しか満たしていなかったりすることもあるので注意が必要だ。

【次ページ】中堅・中小企業にもMDMは必要か?

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