• 会員限定
  • 2012/11/01 掲載

CIO対談:日産自動車 能丸 実氏「ビジネス側に価値を提供する」

CIO・システム部長に聞く、情報システム部門の自己改革

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第19回は、日産自動車のグローバル情報システム本部 IS企画統括部 部長、能丸 実氏に話をうかがった。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載

 日産自動車の情報システム部門は、現在自己改革の真最中だ。2005年からスタートしたIS/IT中期戦略「BEST」では、コストダウン、納期達成プロジェクト比率、エグゼクティブとユーザーの満足度、ROIなど、すべてのKPIで目標を達成した。しかしBESTは、スタートに過ぎない。

情報システム部門の基盤強化からスタートする

 そもそもBESTは、情報システム部門の危機感からスタートした。BESTを策定した当時、日産のビジネス部門は「リバイバルプラン」を終え、新中計‐「日産バリューアップ」により成長路線に舵を切っていた。これに対して情報システム部門では、このビジネスの動きに、自分達がどのように貢献できるか明確化できないでいた。経営は、情報システム部門に、ITコスト削減を求めた。また、情報システムの取り組みがわかりにくい、ROIが明確でないといった不満があった。一方で情報システム部門は、単にコスト削減のみならず、ビジネスに貢献してこそ存在価値があると考えていた。そこで、まず自分たちを棚卸し、力の確認を行い、情報システム部門の基盤を強化するためにBESTをスタートさせた。

 BESTでは、情報システム部門のビジョン、ミッション、プリンシパルを、グローバルにディスカッションを重ね、CIOの方針を得て明確化した。また、ガバナンスの一環として、COOや各領域のオーナー(役員)と定期的に、方針、計画、実績や提案を議論するコミッティ(Global-IS Steering Committee)を作り上げた。本コミッティでは、経営者に価値ある提案や報告をしなければならない。これが、情報システム部門自身をしっかりとさせる原動力になった。本コミッティの下には、CIO、部長レベルの下部組織を作り、方針展開や実績集約を行っている。この中で、先に示したビジョン、ミッション、プリンシパルの徹底をフォローしていく。情報システム部員からすると、経営トップに対して価値ある情報を示すために、先のビジョン、ミッション、プリンシパルは、必ず実行しなければならないものになっている。

 BESTでは、システム別の投資・コストの明確化も行った。今では、ビジネス側が求める切り口で、システム別のコストを明確化できる。そこで、コストとビジネスに対する貢献度合いから、このまま保守を続けるのか、それとも捨てるのか、判断が可能となり、コスト削減につなげることもできるようになった。現在は、経営層にITコストの構造を提示し、単なるコスト削減のみならず、将来のための投資の必要性も議論できるようになっている。

 こうして実績を上げたBESTは、情報システム部門に、新たなケイパビリティーをもたらした。それは、ゴーン氏流のプランニングと実現の力だ。つまり、中期計画に名前を付け、実現方法を明確化し、目標、KPIを定め、実現していく力だ。(BESTは、プランの名前であると共に、Business Alignment, Enterprise Architecture, Selective Sourcing, Technology Simplification という、重要な実現方法を示している)

ビジネスへの貢献を実現させる

 情報システム部では、BESTでの基盤確立を終え、いよいよビジネスに貢献するための活動を開始した。それがVITESSE(ビテッセ、Value Innovation, Technology Simplification, Service Excellence)だ。VITESSEでは、情報システム部門の強みである、クロスビジネスで見れるというポジションを活かし、従来の機能別の横のシステム化から、機能を超えた縦のシステム化を提案し、ビジネスに貢献しようとしている。これはたとえば、車のモデル別利益情報の迅速で正確な提供とか、顧客視点のディーラー・マネジメント・システムなどだ。

 VITESSEは、企画部門やユーザー部門と連携し、ビジネス側中計である「日産パワー88」と連動したプランニングを行った。今回、VITESSEは、ビジネス中計である日産パワー88の中に、1つの施策として明確に位置づけられた。これは、BESTの努力、そこで得た経験に基づくVITESSEが、経営に認められた結果だと考えられる。

 日産の情報システム部門は、VITESSEによって、自部門の存在価値である「ビジネス側に価値を提供する」ことを、いよいよ実現させていく。

 では、次ページより、能丸氏との対談インタビューの全体を紹介しよう。

【次ページ】BESTは情報システム部門の「意地」

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

仮想化戦国時代再び

 パブリッククラウドやプライベートクラウド、仮想基盤、コンテナ基盤など、様々なサービスやツールが提供され利用可能となっている現在、それらをどのように組み合わせて利用するか、そして、その環境を如何に効率的に運用管理していくのか、IT管理者にとっての大きな課題です。  慎重に検討し最適と考えた環境を導入したが、パブリッククラウドのコスト高騰やベンダーの突然のポリシー変更によるプライベートクラウド環境の再検討など、外的要因も含め色々な問題が発生し、都度、対応が求められている。そんなお客様も多くいらっしゃるかと思います。このような様々な問題への対応が必要な今こそ、個々の問題への対策にとどまらず、新たなITの姿を考える良いチャンスではないでしょうか。  変化による影響を受けやすい現在のIT環境から脱却し、ITインフラに依存しない柔軟な運用環境を実現する。ITインフラを意識する事なくマネージメントできるニュートラルな運用環境へシフトする。サービスやツールの導入・変更にもスムーズに対応でき、求められるユーザーサービスをタイムリーに、そして安定的に提供できる、そのような変化に強く、かつ進化に対応する次世代運用プラットフォームの実現が、今、求められていると考えます。  本セミナーでは、次世代運用プラットフォームを実現する2つのキーソリューションをご紹介します。1つ目はMorpheus Cloud Management Platform。セルフポータルサービスに代表されるように、シンプルでありながらパワフルかつ柔軟な統合運用環境を実現します。もう1つはOpsRamp。AIOpsやオブザーバビリティなど個々の機能にとどまらず、多様な要素で構成され様々な要件が求められるハイブリッドクラウド環境にニュートラルに対応する。真にエンタープライズレベルの統合監視環境を実現するソリューションです。 HPEの考える次世代の運用環境をぜひご体験ください。

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます