• 会員限定
  • 2013/05/28 掲載

【IT×ブランド戦略(11)】プロ棋士達に明日はあるか

「どうして売れるルイ・ヴィトン」の著者が解説

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
近年人々の関心を惹きつけ、ニコニコ動画でも異例の集客に成功している「電王戦」。これはプロ棋士というブランドを貶める「大悪手」なのか、それともこの先に何らかの活路を見出だせるのか。ブランド戦略の視点で、(勝手ながら)その未来に目を凝らしてみたい。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

「にわか」に発言の権利はあるか

連載一覧
 応援する気持ちが純粋であろうがなかろうが、古参のファンからすると、急に注目を浴びた自分のスターについて、他人からああだこうだ口を出されるというのは嬉しい半面複雑な気持ちもあって、最近だと「にわか」といって、ともすると揶揄してしまうむきもある。

 「にわか」とは「にわかファン」という意味で、例えばワールドカップの開催時に気持ちがたかぶって、したり顔で飲みの席などで戦術解説を一席ぶったりすると、常日頃からヨーロッパサッカーの最新情報を追いかけている人や、地元のチームを熱く支援している人から総スカンを食らってしまったりする。

   日本の場合に特有なのかどうかはよくわからないが、コミュニティの中心部にいる人々は応援歴の長さやそこに払う自己犠牲の度合い、理解の深さなどによって目に見えない序列のようなものを形成しており、そこで「にわか」が大きな顔をすることを許さない。

 自分の愛する、憧れのスターを、不遇時代から支えてきたがゆえに、あんなことやこんなことも知っている、苦しい時にも未来を信じてともに悩み支えてきた、そういう過程を経た自分であるからこそ、現在の活躍を心から応援する権利があるのであって、ちょっとテレビで聞きかじっただけの薄っぺらい知識で何が分かるんだ、という「糟糠の妻」的な心理状況にあることも多い。

 彼らこそが、ブランドコミュニティにおける中心部の、最も核に存在する人々で、ブランドにとっての宝だと言えるだろう。

 とはいえ、誰だって興味を持ったその時は素人であって、そこからブランド世界に関する知識や思いを深めていくものである。そのときに小姑のように「理解が浅い」なんて「ご指導」をいただいたりなんかすると、もういいやという気分にもなるというものである。

 ということで、中核部にいる人々の熱い忠誠は、ブランドコミュニティの秩序維持にとってはなくてはならないものだが、拡大にとってはかえって障害となることもあるものだ。

 こうして考えると、アンパンマンというブランドコミュニティの秀逸さにあらためて気付かされるわけだが、この世界では「にわか」がまったく問題とされないのであった。

 子供や孫ができて、急にアンパンマン世界に入った人に対して「親歴が短いうちはメロンパンナちゃんの可愛さはまだまだわからないね」「知ったような顔してバイキンマンの哀愁を語らないでほしい」なんて言われることはありえない。非常に敷居がひくい。これは「大量生産・大量販売」を前提として商品を提供するサイドからしても、非常にありがたいことだと言える。

 前置きが長くなってしまった。何を隠そう、筆者が将棋に興味を持ったのは、昨年の電王戦が行われる半年ほど前のことだったので、これはもう割りと立派な「にわか」と言われても仕方がない。

 ふとしたきっかけで羽生善治氏の著作を読むことがあり、そこから興味を深めていったなかで前会長の「第一回電王戦 ボンクラーズ戦」という「事件」を目撃してからというもの、近年ますます思いは熱く、実際の対局の腕を磨くのはもちろん、テレビ視聴をし、関連書籍を読みあさり、ブログを巡回し・・・ということで、アクティブに時間を割いている。

 だがやはり時間の積み重ね、重みということからすると「半可通」といってしまえばそれまでで、正直なところ、このブランド論で将棋を取り上げてもいいものか、ちょっと考えるところではある。

 しかしこの「にわか」性というものが今回の論のある意味で核心を突く論点でもあり、ブランド論の書き手が自分のことを「にわか」と認識してひとつのテーマを突き詰めるということも、ある意味興味深い実験でもあり、ひとつご容赦いただけると幸いである。

【次ページ】プロ棋士 is dead?

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

アップデートに振り回されない 今やるべきSEO

今回は、累計約2,000社とのSEO取り組み実績のあるSpeeeが、アルゴリズムアップデートに強くなるためのSEOというテーマでセミナーを開催します。 24年3月に約4ヶ月ぶりとなるコアアルゴリズムアップデートが実施されました。 また同時に new spam policies の発表を行い、スパムアップデートも実施しています。 複数のシステムを調整しており通常のコアアップデートより複雑で、完了まで1ヶ月(通常は1?2週間)におよぶことが想定される、と公表されています。 アルゴリズムアップデートは、様々な業界やコンテンツの広範囲に影響を与えておりますが、Googleは上記以外にも大小様々なアップデートを実施しております。 Googleがアップデートを行う背景には、「より良い検索体験を提供する」という使命を実現する、というのがございます。 その使命の実現のため、時代の潮流を踏まえた新たな概念を取り入れたり、またAIなどの最新技術を用いたりしながら、日々バージョンアップを図っております。 今回のセミナーではまず、直近実施されたアルゴリズムアップデートを中心に、Googleが近年実施したアップデートの変化の傾向、及びGoogle自身やその関係者の発信内容を読み解きます。 それらを踏まえて、Googleがどのようなサイトを評価するのか、自社サイトでどのような方針のもとSEOを進めていくべきなのかを解説します。 ご参加いただいた方には、特典としてSEOヘルスチェックシートをご用意していますので、ぜひご参加ください。

オンライン

SEOはインハウス?外注? - 両方のやり方の比較やSEOのポイントを徹底解説

今回のセミナーは、昨年好評をいただいた『インハウスSEO』がテーマです。 「SEOに注力しており、より本格化するためにやり方や体制を見直したい」 「まずは内製でSEOには取り組みたいが、何からすればいいのかわからない」 「本当に内製でSEOの成果は出せるのか」 など様々な理由から、『SEOにインハウスで取り組むべきか』お悩みの方は多いかと思います。 今回のセミナーでは、インハウスSEOと外注のそれぞれやり方を比較し、そのメリット・デメリットなどを、詳しく解説します。 弊社においても、近年「インハウスSEOに取り組みたい」というご相談をいただくことが増えております。 ただし、SEOは中長期を見据えて取り組むことが前提となる施策であることから、短期的な視点で「自社でプロジェクトを回せるようになりたい」といった意向のみでなく、 コストや運用の負荷など様々な観点を比較し、売上やコンバージョンを最大化させるために、自社に見合う方法を合理的に決める必要がございます。 セミナー本編においては、まずSEOプロジェクトの基本的な進め方や実施する施策のイメージを皆様に持っていただきます。 その上で、インハウスSEOと外注での実施方法についてメリット・デメリットを比較し、それぞれどのような事業者様に向いているのか、わかりやすく説明します。 ご参加いただいた方には、特典としてコンテンツのユーザーインテントをチェックできる「サイトヘルスチェックシート」をご用意していますので、ぜひご参加ください。

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます