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  • 2013/09/24 掲載

【IT×ブランド戦略(15)】ブランドは、人々の隠れた欲求を露わにする

「どうして売れるルイ・ヴィトン」の著者が解説

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ブランド世界の中核にあるコンセプトやイメージに普遍性・展開性があれば、時代や社会情勢が変化しても、ブランドとしての可能性が閉ざされず、環境にあわせて成長をしていくことができる。今回は、本連載の発端である、LOUIS VUITTONやAppleの事例に立ち戻って、ブランドという種がいかに環境の変化に適応して成長していくのかを探りたい。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

変化する環境にへこたれないためのブランドコンセプトとは

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   LOUIS VUITTONがそのブランドのコンセプトとして掲げているものが何か、ご存知だろうか。

 実は、それは「旅」である。

 知らない人にとっては、ちょっとピンと来ないかもしれない。

 そもそもこのブランドの発祥に、話は遡る。その昔、職人であった創業者が、上流階級の人々向けの旅行用カバンを製造しており、その品質が認められ、一世風靡をした。当時の上流階級の旅行とは、衣服はもちろんのこと、食器やなんかも含めた「生活環境」をまるごと馬車に乗せて、使用人を含めて大移動をしていたそうだ。創業者のルイ・ヴィトン氏は、当時のそのような文化における、必須の担い手としてコミュニティの重要な役割を果たしていた存在だった。

 あまりに人気があったため何度も偽造品が出回り、当時からその対策に悩まされていたという。そこでLとVの文字が組み合わされたモノグラムが発明されたのは、知る人ぞ知るエピソードだ。

 ちなみにHERMESの発祥は馬具屋である。馬具だの鞄だのといったアイテムが、上流階級のなかで象徴的なポジションをとっていた時代なのだろう、と思わせる。現代でもメルセデス・ベンツやFerrariがお金持ちの象徴であるのに似ているといえば、似ている。

 もちろん、交通手段の変化や経済環境の変化によって、昔のような旅行はなくなったので、いまやそんな風に旅行をする人はいない。ビジネス環境が大きく変化するなか(それも、主要な顧客としての持っていた文化そのものが消失するという大変化だ)、そもそものあり方として、単なる「品質の良い鞄屋さん」というだけに留まっていたらきっとあっという間に時代の彼方へ葬り去られたことだろう。

 しかしLOUIS VUITTONは上流階級的な、高機能かつデザイン性、ファッション性の高さをイメージさせる領域を外さずに、時代の変化に応じて「旅」というテーマに再解釈を行うことで、これまで生き残ってきたのだった。「前人未到の地を追求する冒険の旅」「科学技術の進歩によって可能となった、宇宙への旅」といったように、そのブランド世界の展開はあくまで「旅」というコンセプトを軸として通し、時代に応じた商品開発を行ってきたのである。

 このように、ブランド世界の中核にあるコンセプトやイメージの普遍性・展開性があれば、時代や社会情勢が変化しても、ブランドとしての成長可能性が閉ざされず、環境にあわせて成長をしていくことができるのであった。

 LOUIS VUITTONにおいては、もし歴代の経営者が単に機能的な面だけでブランド世界を捉えていたら、きっと今日「ルイ・ヴィトン」と聞いてイメージするようなものとは全く違うものになっていただろう。もしかしたら、Samsoniteっぽい感じになっていたかもしれない。もちろんSamsoniteが悪いということでは全くないし、 SamsoniteとLOUIS VUITTONを比較してどちらがどうという話ではないが、やはり、本業であった「移動する際の支援ツールの提供」という立ち位置から「ファッション業界におけるアイコン的存在」に転身できたのは、「旅」という、意味深長な、洗練された、文化的な世界観を持っていたからだろう。

 こう考えると、石油で動くエンジンの時代が終わった時に、メルセデス・ベンツやFerrariが、同じようにブランド世界を展開できるのか、気になるところではある。

【次ページ】ブランドコンセプトとアイコン

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