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  • 2015/04/20 掲載

新日本プロレスはなぜV字回復できたのか?顧客接点強化のマーケティング戦略

アニメ業界出身の手塚社長が奮闘

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ビジネスの世界で「勝つ」ことはとても難しい。それ以上に難しいのが衰退へと向かいつつあったビジネスを「再生」することだ。かつて日本中を熱狂させたプロレスブームが去って久しいが、当時ブームのけん引役だった新日本プロレスは再び新たなファンを獲得、見事なV字回復を見せつつある。新日本プロレスリングの社長として同社を率いる手塚要氏に「再生」を可能にした施策についてお聞きした。
(聞き手は編集部 松尾慎司)

photo
新日本プロレスリング
代表取締役社長
手塚 要 氏
(写真:伊藤孝一)

アニメからプロレスへ

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──まず手塚社長の経歴ですが、まったく異なる業界からの転身ですよね。

手塚氏:2013年4月に、アニメのカードゲームやトレーディングゲームを手がけるブシロードという企業から、出向という形で新日本プロレスに来まして、その後、社長に就任しました。

──プロレス業界にはご興味やご縁はあったのでしょうか。

手塚氏:ブシロードの社長で、新日本プロレスのオーナーでもある木谷高明はプロレスが大好きで、その縁で新日本プロレスの経営を引き受けることになったわけですが、私自身はそれまではアニメの業界にいて、アニメ商品の企画やイベントの企画、アメリカでアニメの売り込みなどをやっていました。

 年齢的には新日本プロレスと同じ今年43歳で、子どもの頃はテレビのプロレス中継を見たり、『週刊少年ジャンプ』の『キン肉マン』などを見ていましたが、その後はプロレスから離れていました。

──ブシロードが新日本プロレスを買収するということに対して驚かれたのではありませんか?

手塚氏:一つには社長の木谷がプロレス好きということもありますが、もう一つはエンタメ業界にかかわるビジネスパーソンとして「これは伸びる」という嗅覚が働いたのだと思います。よくブシロードの会議でも話していますが、ブシロードグループの中で一番メジャーなのは新日本プロレスだというのが木谷の持論です。

 ブシロードという会社は20代、30代前半の若い人間が多く、プロレスがどういうものかわからない人間も多いのですが、木谷はこのことを常に言っています。

──木谷社長の熱い思いはともかく、あまりプロレスに縁のなかった手塚社長にとって新日本プロレスへ行けという命令は驚かれたのではありませんか。

手塚氏:言われたのは2012年の秋です。当時、木谷は新日本プロレスの会長でしたが、ブシロードからは誰も行っていませんでした。しかし、グループとしてしっかりやっていくためには誰かが行かなければなりません。いろいろ考えましたが、もともとプロレスは好きですし、プロレスというコンテンツが持つ可能性を強く感じていました。

──当時の売上はいかがだったのでしょうか。

手塚氏:ブシロードに合わせて決算月が変わった関係で、単純比較はできないのですが、私が来た2013年7月決算の売上が約16億円で、その前期(2011年12月期)が約11億円でした。長い低迷を抜けてようやく良くなりつつある時期で、これからどう伸ばしていこうかということが考えられるタイミングだったと思います。

宣伝は細かくより大きく派手に、「流行っている」感の演出を

photo
(C) 新日本プロレス

山手線の車体広告
photo
(C) 新日本プロレス

駅に貼ったポスター
──ブシロード傘下になってから何が変わったのでしょうか。

手塚氏:これは私が就任する前から続いていることですが、とにかく宣伝をして、『流行っている』感をつくろう、と。新日本プロレスのポテンシャルは高くて、試合を見てもらえば面白いし、一回来てもらえば、ある程度リピーターになってくれるなという自信はありますが、問題は「それをどうやって知らしめるか」です。

 プロレスは一時期低迷したというネガティブなイメージがあり、「プロレスなんてダサい」という空気感もありました。ですから、それを払拭して、見に来てもらうためにはとにかく露出を増やそうと、テレビのスポットCMや山手線の車体広告、駅貼り広告などをやりました。

──広告費用もかかりますし、かなり思い切った戦略ですね。

手塚氏:細かい広告を出すよりも、大きなイベントに合わせて大胆な広告を打つことで、できるだけたくさんの人にプロレスが目に付くようにしました。そうやって「あれ、プロレスって最近また流行っているの?」という空気感をつくれば、30代後半とか40代以上の、かつてプロレスに触れていた人たちが再びプロレスに関心を持ってくれますし、メディアも取り上げてくれれば、お客さまが再び来てくれるようになるのではと考えていました。

【次ページ】アニメ業界の慣習をプロレスに持ち込む

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