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  • 2015/06/24 掲載

求人業界のGoogleに――ビズリーチ社長 南 壮一郎 氏に聞く「スタンバイ」の志

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日本の採用活動を変えてゆく――それを、まさしく有言実行している人物がいる。ビズリーチ社長、南 壮一郎 氏だ。創業から6年間で従業員数500人超という急成長を続ける同社は5月26日、完全無料のクラウド型採用サービス「スタンバイ」の提供を開始した。なぜ有料のサービスを手がける同社が、無料サービスを展開するのか。世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズ2014」にも選ばれている同氏に、話をうかがった。
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ビズリーチ 代表取締役社長
南 壮一郎 氏

自身の転職経験をきっかけに創業

――まずは、これまでのご経歴を教えて下さい。

南氏:アメリカのタフツ大学を卒業し、モルガン・スタンレー証券に入りM&Aアドバイザリー業務に携わりました。2004年には楽天イーグルスの創業メンバーとして、球団の立ち上げを手掛けました。ビズリーチ創業は6年前のことです。企業の中核を担う人材採用に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」、20代を中心とした若手ポテンシャル人材向け転職サイト「キャリアトレック」などを作って来ました。

 インターネットの力を使って「街」を作りたいというイメージがあり、これまでさまざま試してきた中でようやく、「働く」「雇用」に注力してやっていこうというテーマが決まりました。まだまだスタート地点で、これから腰を据えて「街」づくりをしていきます。

――起業したいという動機がいつも、あるのですね。

南氏:そうでもありません。経営者、起業家を志すのはすばらしいことと思いますが、私に関する限り、そういった願望はありません。ビズリーチも、私自身が転職活動をして不便を感じたゆえに始めたことで、結果的に経営者になっているだけと思っています。

 ただ、新しいことを世の中に放つ面白さは、楽天イーグルス時代に強烈に味わいました。球団創設の当初、三木谷社長は、野球を通じて多くの人に夢と感動を与える、と壮大なビジョンを語りました。金融業界出身の当時の私は、そういう発想にあまり触れたことがなく、最初は理解できていなかったのですが、今や楽天イーグルスは三木谷社長のビジョン通りに、堂々たる存在です。それで、大きな志というものの意義も納得するようになりました。大きな志とは、社会的課題を解決しようとする意識に裏打ちされたものだと思います。

――社会的課題といえば、ご自身の転職活動において不便を感じられたとのことでした。

南氏:当時、転職活動のやり方がよく分からず周りに聞いてみると、人材紹介会社を使うのがいいと聞き、1ヶ月間に27社、回ってみました。すると、27社とも違う求人案件を紹介して来たのです。ならば50社を回れば50の選択肢が出て来るでしょう。人生の大切な決断に当たり、全ての選択肢を見るためには何社回ればいいのだろう、と感じました。

 業界について調べてみたところ、人を採用したい企業と仕事を探したい個人との間に情報の壁があるのだ、ということがわかり、これは直したほうがいいと考え始めました。個人と企業のコミュニケーションが、より可視化され、より自由になり、より公平中立になれば世の中は良くなる、という思いが我々の理念、働き方×ITというものの起点です。

日本の採用、海外の採用

――今の求人業界の動向はいかがですか。海外に比べて日本は遅れている、といったようなことは思われますか?

南氏:ある世界的大手の人材会社による調査で、世界中の約4万社を調べ、国ごとの「採用の難しさ」を出したデータがあります。日本が圧倒的1位でした。日本は世界一採用が難しい国だというのです。また最近、中小企業庁から出された中小企業白書によると、4割近い中小企業が「必要な人材を採用できていない」と回答しています。そして、採用できていないと答えたうちの56%が、「採用できないのは採用コストが高いから」と答えています。

 採用コストが高いとは何のことかと言えば、まず求人広告です。日本の求人サイトの広告掲載費は、正社員採用の場合、1掲載当たり数十万円、時には百万円ほどになります。ところが海外では、数万円です。その良し悪しを申したいのではなく、端的に事実として、日本の求人広告は高いのです。

――その差はどんな理由から来るのでしょう?

南氏:それは、企業努力の賜物です。紙媒体で強かった企業がネットでも非常に努力して成功したゆえに、昔からの値段が維持されたのです。しかし海外では、ネットになったら値段が8割も9割も下がりました。求人情報の内容を企業自身が作り、アップロードすれば済んでしまうからです。その内容を媒体にも出したければ数万円の掲載料を払うだけのことです。インターネットの特性とは、簡単に、素早く、自分で何事もできる、ということで、その特性を活かしています。

 対して日本では、全てを人材会社にお任せ、というのが基本的な姿勢で、毎回発注して、立派な広告を作り込んでゆくという考えの企業が多いようです。コストのかけ方における姿勢の差ですね。

【次ページ】 主体性を持てば、採用は変わる

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