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  • 2017/07/14 掲載

事業構想大 小塩篤史教授が指摘、地方創生のICT活用は2つの意味を持つ

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東京一極集中が進み、地方の人口は減少の一途をたどっている。こうした中でも地域の魅力を発掘し、ブランド化したうえで、その情報を発信するにはどうすればよいのか──地方創生を真剣に議論するパネルディスカッションが行われた。登壇者は、ジェイアール東日本企画 ソーシャルビジネス開発局 次長 田邉 敬詞氏、枻出版社 第三編集局 局長 Discover Japan プロデューサー 高橋 俊宏 氏、事業構想大学院大学 研究科長・教授 小塩 篤史 氏、経済産業省 中小企業庁 経営支援部創業・新事業促進課長 和栗 博 氏の4名だ。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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産官学それぞれの視点で、これからの地方創生の在り方について議論した

産官学の各立場から地方創生について熱く語り合う

 5月から6月にかけて行われた「Advertising Week Asia」では、産官学のそれぞれの立場の人物が登壇し、「地方創生のこれから」をテーマに、地域の魅力を発掘・ブランド化し、発信する方法について話し合あった。

 産業界の代表として登壇したのは、ジェイアール東日本企画 ソーシャルビジネス開発局 次長 田邉 敬詞 氏だ。同氏は「10年前から地方創生ビジネスに本格的に着手した。2016年度は経済産業省中小企業庁の補助金事業として“ふるさとグローバルプロデューサー等育成支援事業”を実施し、地方創生ビジネスを考えるうえでの経験を積んできた」という。

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ジェイアール東日本企画
ソーシャルビジネス開発局 次長
田邉 敬詞 氏

 次にメディア代表として枻出版社 第三編集局 局長 Discover Japan プロデューサーの高橋 俊宏 氏が登壇。日本の魅力を再発見する月刊誌「Discover Japan」のプロデューサーを務めている。この雑誌は、茶、酒、禅、武士など、日本人であれば誰でも知っている言葉を通じ、日本の素晴らしさを再発見してもらうコンセプトでつくられている。

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枻出版社
第三編集局 局長
Discover Japan プロデューサー
高橋 俊宏 氏

 メディア代表として登壇した高橋氏は「日本の再発見という観点から、メディアとして地方創生を発信しながら、雑誌のみならず、イベントなどの場づくりも手がけてきた」と語る。

 学術界の代表として登壇した、事業構想大学院大学の小塩 篤史 氏は、AIや機械学習などを研究している人物だ。データを使って未来をつくる仕事という関係から、これまで自治体の長期ビジョン策定を支援してきた。

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事業構想大学院大学
研究科長・教授
小塩 篤史 氏

 小塩氏は「人口減少社会のなかで、地方がどうやって生き残っていくのかということを考えている。我々の大学には地方創生を志す方がやってくる。これまでの事業構想は課題解決型であり、与えられた問いに答えていた。しかし、これからの事業構想は答えのない問題を解決しなければならない。そういう意味で非常にクリエイティブだ」と力説した。

 一方、官公庁の代表として登壇したのは、経済産業省 中小企業庁 経営支援部創業・新事業促進課長の和栗 博 氏だ。同氏の部局では、中小企業の創業、海外展開、地方創生などを幅広く支援している。

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経済産業省
中小企業庁
経営支援部創業・新事業促進課長
和栗 博 氏

 和栗氏は「もともと私は防衛省の出身ということもあり、ロジスティックなどで戦略戦術的にどうあるべきかを考えながら、地方創成を支援していこうと考えている」という。

育成した人材が地域の魅力を発信してくれる

 モデレーターを担った田邉氏は、地方創生を語るうえで欠かせない話題として、「人材」「情報発信」「ICT」「海外需要」という4つのキーワードを選び、同氏を含む4名の登壇者にお題を与えた。

 まず、ひとつ目のキーワードの「人材」について、田邉氏自身の取り組みを紹介。ジェイアール東日本企画では、前出の「ふるさとグローバルプロデューサー等育成支援事業」を2016年に実施したが、これはいわば「地域号」という船を漕ぐ地域活性化プロデューサーを育成するというプロジェクトだ。

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地域の魅力を発掘し、ブランド化して、世界に飛び込める人材を育てる

「地域の魅力を発掘し、それをブランド化して、世界に飛び込める人材を育てようとしている。多くの関係者を巻き込んだビジネス展開が可能なプロデューサーの育成を目指した。昨年1年間で約150名の研修生が、30社の企業でOJTの形で学んだ。事業構想大学とも連携して座学も実施し、人材の掘り起こしにも役立った」(田邉氏)

 また異なる角度から、経済産業省の委託事業として「地域じまんづくりプロジェクト」も推進中だ。これは全国20ヵ所の自治体をメインに“じまん”をつくって発信してもらい、地域を活性化する試みだ。

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全国20ヵ所の自治体をメインに“じまん”をつくって発信してもらい、地域を活性化する

「最終的には、観光の集客や、雇用の確保、新産業につながる事業をつくり出すことを目的にしている。この事業を通じて、地域の“自立・自走”を促し、“100年先も地域の皆さんが笑顔でいられる姿を目指す”という強い思いで推進している」(田邉氏)

 そのうえで同氏は、地域活動をサポートする「人づくり」「主体化」「事業化」「継続性」というポイントを掲げた。

 田邉氏は、人づくりという点で、地域に入り込み、本当の課題やニーズを見つけ出せるリーダーを発掘して育てている。また、プロジェクトを推進する際は、地域住民が“自分ごと化”する主体性が最も重要になる。そして具体的な事業へ落とし込み、さらに利益を得て、事業を継続できるところまで持っていきたい意向だ。

 田邉氏は「育成した人材が、地域の魅力を発信する立場になってくれることが、今後の地方創生には欠かせないポイントになると思う」と強調した。

【次ページ】地域を変化させる“起爆剤”となるICTの利活用

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