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  • 2017/07/24 掲載

ワイヤレス充電市場は13倍に爆増、村田製作所・ローム以外の世界プレイヤーとは?

フロスト&サリバン連載

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ウェアラブルやIoTが広まるにつれ、多くのデバイスが日常的に携行され、それらの電池切れはライフラインの断絶と考えられるほど、重要な意味を持つようになってきた。一方で、モバイルデバイスの充電機器の技術的成長は、モバイルデバイス本体の進化に追随できていないように思われる。今回は、フロスト&サリバン ジャパン 副社長 兼 コンサルティング部長の長竹 宏氏が、ワイヤレス充電の現在と課題に触れ、今後の展望について解説する。なお、技術用語としてはワイヤレス「給電」が正しいが、ここではより消費者に身近な言葉として、ワイヤレス「充電」と表記することにしたい。

フロスト&サリバン ジャパン副社長兼コンサルティング部長 長竹 宏

フロスト&サリバン ジャパン副社長兼コンサルティング部長 長竹 宏

フロスト&サリバン ジャパン副社長兼コンサルティング部長。アジア・北米などを中心に日系企業の海外進出に関するコンサルティングを海外現地で手がけた経験を豊富に有する。現在は日本に在住し、M&Aや海外進出戦略など、日系企業の成長に力点を置いた経営の舵取りに関するアドバイスを継続的に手がけている。

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IoTの要「ワイヤレス充電機器」はApple、サムスン、IKEA、スタバから市場開拓できるか
(© Daniel Jędzura – Fotolia)



IoTでコネクテッドデバイスが急増、Qi規格などワイヤレス充電需要が拡大

 以前、「リチウムイオン電池」の記事でもご紹介したように、二次電池の性能は、モバイルデバイスの購買意思決定にも大きく影響するようになってきている。また、近年注目を集めるIoTの恩恵に預かり、モバイルデバイスの数量の増加はとどまるところを知らない。

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IoTが2020年までにもたらすインパクト
(出典:フロスト&サリバン)


 2010年に国際標準規格としてWireless Power Consortiumが策定した「Qi(チー)規格」が正式に登場し、その後日本でもNTTドコモが「おくだけ充電」の商標でモバイルデバイス用の充電機器を発売し、注目を集めた。

 「ワイヤレス充電」は「非接触充電」とも訳されるが、主流派であるQi規格が提供する充電機能は、非接触というよりは、Suicaに見られるような「ケーブル・コネクタレスの接触充電」と言った方が、イメージに近い。

 一方でQi規格から7年の時が経とうとしており、身の回りの電子機器のモバイル・ウェアラブル化が進んでも、充電だけは相変わらずケーブル・コネクタを使った充電が主流だ。一体現場では何が起こっているのだろうか。

まだケーブル・コネクタ充電が主流なのは3つの課題があるから

 2010年に国際標準規格として市場を賑わせたQi規格は、技術的には電磁誘導という科学の世界ではおなじみの現象を利用している。読者の中にも、ファラデーの電磁誘導やフレミングの法則など、磁界の変化によって電流を発生させるという実験を学生時代にやった覚えがある方も多くいらっしゃるであろう。

 一方で現時点のQi規格の充電方式には、多くの課題があるが、特に目立つのは下記の3つだ。

1. 充電速度
 モバイルデバイスの高機能化・高性能化に伴い、使用される充電池の容量も数千mAh(ミリアンペアアワー、1時間あたりに流すことのできる電流を表す)が当たり前の時代になっており、ワイヤレス充電にも従来のコネクタ・ケーブルを使った充電方式と同様の充電速度が求められている。

2. 小型化・軽量化
 現在のワイヤレス充電に対応するためには、充電器側だけでなく、モバイルデバイス側にも相応の厚みと重みを持ったデバイスを内臓する必要があり、小型・軽量化が命であるモバイル端末の利点を損ねないような対応が必要である。

3.価格
 現在のワイヤレス充電機器の価格帯は、50~90米ドルが一般的とされているが、その利便性と消費者の購買意欲を分析すると、これが広く普及するためには20~30米ドル程度に価格を抑えることが必要であると考えられている。

 これらの弱点克服のため、Qi規格の電磁誘導方式だけではなく、その他標準団体や業界団体では「電磁誘導方式の改良版」や、実質的な非接触(数メートル程度)に対応した「磁界共鳴方式」、さらには日本の村田製作所が独自に開発した自由度の高い「直流共鳴方式」など、複数の検討を行っている。

13倍に成長するワイヤレス充電機器市

 フロスト&サリバン調べによれば、ワイヤレス充電機器の市場は、年間50%以上の成長を続け、2020年には3250百万米ドルになると予想されている。台数ベースでは81%の成長、金額ベースでは55%の成長が予想されているが、台数と金額にギャップがあるのは、前述のように価格圧力により、現在の機器の単価が大きく引き下げられると考えれることが原因である。

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ワイヤレス充電機器の売上高予測
(出典:フロスト&サリバン)


 歯ブラシの充電器から始まったワイヤレス充電機器であるが、現在の主流はスマートフォンを含むモバイルデバイスの充電器であり、これらの充電機器メーカーはスマホメーカー(アップル、サムスンなど)、家具メーカー(IKEAなど)、コーヒーショップ(スターバックスなど)を通じて更なる市場の開拓を図っている。

【次ページ】海外の主要なワイヤレス充電機器メーカーとは?

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