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  • 2017/09/25 掲載

Airbnb経済効果9,200億円の「伸びしろ」は“人のつながり”や“体験”にある

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既存の経済活動の枠組みにテクノロジーの利便性や合理性のエッセンスを加えることで、新たな経済効果を生みだすユニコーン企業が順調にその勢力を伸ばしている。現行法制では追い付かない側面を含むさまざまな課題を抱えながらも、実経済は確実に変化を遂げている。とどまることのないイノベーションの裏側には一体どのような思想や発想があるのか。さまざまな“体験型マーケティング”にフォーカスをあてたカンファレンスイベント「BACKSTAGE17」では、シェアリングエコノミーの代表サービスであるAirbnb日本法人代表取締役の田邉 泰之氏が登壇し、「体験」がもたらす経済効果についてプレゼンテーションを行った。

Miho Iizuka

Miho Iizuka

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Airbnb利用による訪日数は約370万人(前年度は約100万人)を超え、Airbnbコミュニティによる経済活動が創出した利益は4,061億円、経済効果は9,200億円にも及ぶという(2016年Airbnb調べ)

知らない人同士をマッチングさせて大丈夫?

 Airbnbは2008年創業、米・サンフランシスコに本社を置き、空き家や空き部屋の貸し手と借り手をネットを通じてマッチングするサービスとして認知を広げている。日本法人のAirbnb Japanは2014年5月に設立。東京オリンピック開催や急増する来日旅行客の宿泊需要を背景に注目を集め、新しい宿泊スタイルとして利用者の潜在ニーズを捉えた。

 急速なサービス成長に伴う利用者間のトラブルや、現行法制とのミスマッチなどの課題もさまざま取り上げられているが、それらのトピックスはイノベーションにおいては避けられない副産物だとも考えられる。

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191を超える国、56,000件を超える都市、およそ400万物件がAirbnbには掲載されている。先日はスウェーデンが国全体のスポットをAirbnbのリストに掲載する、というニュースも話題になった

 知らない人同士をマッチングさせて大丈夫なのか。この懸念の解消には、宿泊者とホストがお互いに信頼関係を結べる環境が必要になる。

「Airbnbにはレストランやホテルをレビューするように、宿泊者からだけではなくホストから宿泊者に対しても、対等な立場で評価し合う仕組みがあります。会話が面白かった、水回りがきれいだった、使い続けたいと思った、という宿泊者レビューに対し、また使ってほしい、綺麗に使ってくれた、というホストからのフィードバックができる」(田邉氏)

 本人確認済みのユーザーとサービス提供者が双方向でレビューを行い、第三者もそれを閲覧できる、という仕組みはこれまでにもあるが、加えてオンライン上での“信用”も利用審査の基準にする。

「パスポートや免許証などのID審査は面倒くさいと思われるかもしれないが、メールアドレス、電話番号、SNSアカウントなど、宿泊者・ホストそれぞれの利用履歴や“オンライン上での信用”をスコアリングする。この一段階を踏むことが大切」(田邉氏)

 空き家活用のマッチングシステムとして機能するだけでなく、トラブルを未然に防ぐ体制づくりには引き続き注力していくという。

「チェックインをして、事前の情報と違うと思ったら、弊社へお問い合わせをしていただける補償体制も整えています。ホストへの支払いは、チェックイン日の24時間後に送金されるため、宿泊者が満足ができていることが前提となる。懸念を取り除いて楽しんでいただくために、安心安全の提供を今後も進めていく」(田邉氏)

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Airbnb Japan 代表取締役 田邉 泰之氏。
ミズノ、マイクロソフトにてコンシューマ向けマーケティングに従事したのち、2014年5月Airbnb Japan設立時より代表取締役に就任。大阪府出身。関西弁を時折のぞかせる、個人的なエピソードやユーモアを挟みながらのプレゼンテーション。オープンな人柄が伝わってきた

「つながり」や「体験」に経済効果の伸びしろがある

 田邉氏がこの日のプレゼンテーションの中で最も繰り返していたのは「人」という言葉だ。Airbnbの魅力は“空いているスペースを探し、貸し借りができる”という枠組みだけではない。新しい人やコミュニティと交流することで、自分では見つけられないモノやコトに出会える。オンラインは手段でしかなく、リアルでの“つながり”や“体験”を生み出すことに経済効果の伸びしろがあると語る。

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「この街やこの人に会ってみたい」という宿泊地の選び方が、旅行のイメージを再開発していく。カルチャー誌とコラボした滞在プランの開発や、ホストファミリーの発掘・育成なども精力的に行っている

 グローバル展開のAirbnbには、400万を超える物件リストがあり、累計ゲストは2億を超える。日本の物件は全都道府県をカバーする約5.5万件の部屋が登録されている。アジア圏では最も大きい市場となった。観光ガイドには掲載されていないような、その土地の普段の生活圏にあるカフェやコンビニの利用や施設利用などを合わせると、経済効果は9,200億円にのぼるという試算をしている(2016年Airbnb調べ)。体験型の旅を支えるのは、地域それぞれの「人」であり、眠れる才能や雇用を掘り起こすことにつながる。

「Live There」キャンペーン動画

 今年6月には「Live There」キャンペーンを実施、初TVCMも放映。紙媒体、デジタル媒体、ソーシャルメディアなどさまざまなプラットフォームで告知展開を行った。実際、来日旅行客が日本で行きたい場所はどこなのか、何を体験してみたいのかをインタビューしてみると、どこでそんなことを調べたのかと驚くほどローカルなスポットや生活習慣に興味を持っていることがある。観光地やターミナルエリアでも、賑わうのは百貨店や土産店ではなくドラッグストアやコンビニ、というシーンも珍しくない。「その土地で暮らしてみる」というオリジナルな体験を叶えることも、今後の観光ソリューションには求められていくことになるのだろう。

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日本各地のそこにしかない体験、そこでしか出会えない人、ひとつひとつのリストを見ていくだけでも、向こう側にある「温もり」が印象的だ

【次ページ】 主人公は“人” 「この歳で盆栽にはまるとは思わなかった」

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