• 会員限定
  • 2017/10/12 掲載

タオカフェ登場で加熱する「無人店舗」競争、中国勢がアマゾンを脅かす

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
中国でECを展開するアリババは、その主催する展示会において“レジのない”店舗「淘カフェ」(Tao Cafe:タオカフェ)をオープンさせた。入店時にアプリで認証すれば、商品を手にとって外に出るだけで決済まで完了する。アリババが持つアプリや決済サービスを融合したビジネスモデルは、先行して発表された無人店舗「Amazon Go」を超えるほど洗練された仕組みになっている。タオカフェやAmazon Goに触発された無人店舗が多数開発され、中国での無人店舗の出店競争が激化しつつある。

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うとともに、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」を運営。

photo
有人レジは過去の遺物となってしまうのだろうか
(出典:アリババグループ プレスリリース)


財布を出さずに退店すると決済完了

関連記事
 レジは20世紀の遺物として消えてなくなってしまうのだろうか。2017年7月8日から12日の間中国で試験的に開設されたタオカフェは、小売業界の話題をさらった。200平方メートルほどの店内には雑貨や土産物が並び、コーヒーなどを注文できる飲食スペースもある。入店時にスマートフォンアプリで認証を行った後は、財布を開く必要も決済を行う必要もない。商品を受け取って、店を出るだけだ。

 タオカフェを運営するのは中国でECを中心に一大商圏を築いたアリババグループである。ECサービス「淘宝(タオバオ)」、電子マネー決済を行う「Alipay(アリペイ)」といったオンラインサービスを運営している。これらの仕組みを活用し、さらに、人工知能技術や生体認証技術を組み合わせて、タオカフェを実現した。



 利用者がタオカフェの入店時にアプリ認証及び顔写真の撮影を行うのは、タオバオのアカウント情報と、入店した人の顔を紐づけるためだ。カフェスペースで注文を行った際には、顔写真を照合して、誰が何を注文したかを記録する。そして、商品が用意されれば、顔写真によって、誰の注文かを判別し、商品が渡される。

画像
タオカフェの仕組み

 また、飲食スペース以外の商品を購入する場合は、商品を手にとって、出口から退出すれば購入は完了する。商品ごとにRFIDと呼ばれる電子タグがついているので、レジを通す必要がない。誰が何を持ち帰ったかを自動的に判別し、タオバオのアカウントから代金を徴収する。このタオバオのアカウントには、電子マネー決済を行うアリペイが紐づいているので、別途、決済手続きを行う必要がない。アリババグループの技術を結集して実現したビジネスモデルと言えよう。

最強の万引防止技術を備える中国の無人コンビニ

 タオカフェのコンセプトに影響を及ぼしたと思われるのがAmazon Goだ。2016年の終わりに発表されたAmazonの無人コンビニは世界を驚かせた。RFIDタグを用いるタオカフェとは異なり、Amazon Goでは店内に設置された無数のカメラやセンサーによって、誰が何の商品をとったかを把握するのを目ざしている。

 試験的に展開され始めたタオカフェやAmazon Goに加え、中国では多くの無人店舗が開発されている。広東省を中心に10店もの無人コンビニを展開しているのは「BingoBox」だ。食料品やお菓子が並べられた、15平方メートルほどの小さな店舗では、アプリ認証を入口で行い、購入する商品をスキャンして退店する。支払いは、決済機能を持ったメッセンジャーアプリ「WeChat」(ウィーチャット)と連携して行う。

 BingoBoxでは、お菓子や日用品は従来のコンビニに比べ5セントほど安く提供され、消費者にとっても利用する価値は大きい。また、従来のコンビニと比べて、4分の1程度のコストで設置可能で、運転資金は8分の1ほどに留まるという。コスト的に優位なビジネスモデルを生かして、1400万ドルの資金調達を行い、200店以上の出店を目ざすとBingoBoxのCEOは語っている。

 BingoBoxのほかにも、F5 future、wheelys、Wahahaといった競合がおり、中国での無人店舗開発競争が激化している。シリコンバレーの投資家から資金調達を行い、いずれも急拡大を目ざしている。日本企業もこの流れに乗り、中国での無人店舗開設に乗り出してきた。たとえば、ローソンは上海に2店舗の無人コンビニを設置し、スキャンした商品をアリペイやWeChatで決済する仕組みを構築した。

 無人の店舗と聞くと、万引きが増えるのではないかと不安に感じるだろう。アプリで認証しているといっても、他人のスマートフォンを使う成りすましの懸念もある。しかし、中国の例では、不正が驚くほど少ないとされる。

 前述のBingoBoxの場合、決済を行うWeChatと連携し、不正を行った利用者は警察へ通報するなどの厳しい対応を取っている。電子マネー決済の割合が多い中国では信用情報を毀損するリスクは大きいため、万引きに対する抑止力が働いているのだ。また、無人店舗にはカメラが多数設置されているため、不審な行動を取ったり、他人のアプリで認証したりした場合は、すぐに検知される仕組みだ。セキュリティの仕組みが整っていない有人店舗より、遥かに強固な体制といえる。

【次ページ】コンビニ、自動販売機、ECを統合した購買体験を創出

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます