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  • 2017/11/01 掲載

国連が「企業向けLGBT行動基準」を発表、イケア、ドイツ銀行、ギャップら15社が支持

ダイバーシティ経営におけるLGBT対応

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国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が9月、LGBT差別解消に取り組む企業に向けた行動基準を発表したが、日本ではまだその存在はほとんど知られていない。LGBT対応が大企業を中心に広がりつつある中、国際的な要請や枠組みを踏まえておくのは、取り組みを社内外で進めていくためにも必要だ。この行動基準の内容と歴史的な背景、そして関連する海外事例を紹介する。

LGBTコンサルタント 増原 裕子

LGBTコンサルタント 増原 裕子

LGBTコンサルタント/株式会社トロワ・クルール代表取締役。慶應大学大学院修士課程、慶應大学文学部卒業。ジュネーブ公館、会計事務所、IT会社勤務を経て起業。2013年、東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ国内外で話題に。2015年渋谷区同性パートナーシップ証明書交付第1号。ダイバーシティ経営の一環としてのLGBT施策推進支援を手がける。経営層、管理職、人事担当者、営業職、労働組合員等を対象としたLGBT研修の実績多数。著書に『同性婚のリアル』など4冊がある。

画像
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が
世界中の企業にLGBTの権利推進を要請した
(出典:The UN Free & Equal


国連の「企業向けLGBT行動基準」とは

 9月、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、企業のLGBTI(注)に対する差別解消の取り組みを支援するための、グローバルな行動基準「Standards of Conduct for Business」を公表した。

注:LGBTIは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックスの略。国連のLGBT人権推進プロジェクトでは、性的マイノリティの総称として「LGBTI」を使用し、インターセックス(性分化疾患:染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態)を含んでいる。

 この行動基準は、2011年に国連人権理事会が全会一致で承認した「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに、OHCHRが中心となって、世界各地の企業との協議を経て作成されたものだ。

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 21世紀に入り、国際的な潮流としてLGBTを取り巻く人権状況は改善に向かいつつあるものの、まだまだ国や地域によるばらつきは大きい。LGBTの人権保障をさらに前に進め、ダイバーシティ&インクルージョン社会を実現していくための重要な取り組み主体として、企業の積極的な関わりが期待されている。

 OHCHRは世界中の企業に対して、「Standards of Conduct for Business」に定める5つの行動基準に沿って、LGBTへの差別をなくしていく取り組みを進めるよう呼びかけている。

 すでにアクセンチュア、コカ・コーラ、ドイツ銀行、EY、Gap、イケア、マイクロソフトなど15の企業がこの行動基準を採用し、支持を表明している。

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ゼイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官
(写真は2016年9月13日のもの)
(出典:UN Photo by Jean-Marc Ferré)

 ゼイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官は「Standards of Conduct for Business」を発表するスピーチの中で、「LGBTIの人々の平等な権利のために立ち上がることは、それが正しいというだけでなく、企業にとっての商業的な関心事でもあるというたくさんの証拠が揃ってきている」と語っている。

 さらに、「いかなるグループであれ、特定の人たちを排除することは、私たちの前進のスピードを落とすことにつながる。差別の撤廃は能力を引き出し、生産性を最大化するためのキーなのだ」と述べている。

 「Standards of Conduct for Business」の中身は以下の通りだ。
「Standards of Conduct for Business」
(LGBTI差別解消に取り組む企業のための5つの行動基準、筆者翻訳)


いかなる時も
1. 人権を尊重すること
 企業はLGBTIの権利尊重を保証するため、方針策定やデュー・ディリジェンスの実施、ネガティブなインパクトの軽減を行うことが必要です。また、人権基準のコンプライアンスをモニタリングし、伝えていく仕組みを整備することが求められます。

職場において
2. 差別をなくすこと
 企業は採用、雇用、労働環境、福利厚生、プライバシーの尊重、そしてハラスメント対策において、一切の差別がないことを保証する必要があります。

3. 支援を提供すること
 企業はLGBTIの従業員が尊厳をもって、スティグマ(筆者注:負の烙印)から解放されて働けるように、前向きで肯定的な職場環境を提供することが求められます。

市場において
4. 人権侵害を防止すること
 企業はLGBTIのサプライヤー、流通業者、顧客を差別しないこと、そしてLGBTIに対する取引先による差別やそうした力の乱用を防止するために、影響力を行使することが必要です。

地域社会において
5. 公共の場で行動すること
 企業が事業を営む国において、人権侵害をなくすよう貢献することが推奨されています。その際、企業は現地のコミュニティと協議し、自社が取り組むべきことを特定していく必要がある。こうした取り組みには、公的なアドボカシー(筆者注:権利擁護)、(筆者注:他の企業や団体との)共同アクション、社会的な対話、LGBTI団体の支援、権力を乱用する政府の取り組みに対抗することなどが含まれます。

画像
5つの行動基準の要点
(画像:筆者作成)


 少々時間をさかのぼるが、2015年12月、国連はLGBTの人権尊重と差別撤廃に取り組む理由を「LGBTの人々を社会から排除するとどんな損失が生まれるか?」という観点でまとめた動画を発表している。

 上記の 「Standards of Conduct for Business」を見て、ピンとこない人はこちらも参考にすると理解が進むだろう。



【次ページ】企業向けLGBT行動基準の策定にいたった歴史的な背景

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