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  • 2017/12/11

取締役会の役割とは何か、今後はリスクとリターンの整合性が重要に

KPMG 林拓矢氏が解説

企業を適正に経営するための「コーポレートガバナンス」。その実効性を高め、企業の“稼ぐ力”をつけるため、日本で「コーポレートガバナンス・コード」が導入されてから2年以上が経過した。上場企業のコーポレートガバナンス・コード導入は、形の上では進んでいるが、中身の運用については「道半ば」。日本企業の稼ぐ力も、十分にはついていないのが実情のようだ。とりわけ、コーポレートガバナンスのカギを握っている取締役会に着目し、コーポレートガバナンス・コードによる改革がどこまで伸展しているのか、どんな課題があるのか。KPMGコンサルティング パートナーの林拓矢氏が解説した。

野澤 正毅

野澤 正毅

1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

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KPMGコンサルティング パートナー 林 拓矢 氏

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社外取締役の数拡大では一定の成果

 コーポレートガバナンスの実効性を高めるのに大きな役割を果たしているのが「コーポレートガバナンス・コード」だ。これはコーポレートガバナンスの原則を示した、言わばガイドラインのようなもの。

 コーポレートガバナンス・コードは近年、企業の行動規範としてグローバルレベルで重視されるようになり、企業経営の“国際標準”ともなっている。

 そのため、日本でも、金融庁と東京証券取引所が中心となって「日本版コーポレートガバナンス・コード」を策定、2015年6月に公表した。

 上場企業は、この日本版コーポレートガバナンス・コードを順守することが求められている。日本企業の活動を国際標準に適合させることで、日本企業の国際競争力を高め、日本に投資を呼び込むことが狙いだ。

 KPMGコンサルティングが東証のデータなどを元に調査したところ、2017年8月現在、上場企業の約4分の1が「監査等委員会等設置会社」「指名委員会等設置会社」に移行。また、法の定めによらない任意の「指名諮問委員会」「報酬諮問委員会」を設置した上場企業も、約4分の1に達していた。

 2017年7月現在、東証一部企業の99.5%は社外取締役を選任しており、88.0%は2名以上の「独立社外取締役」(社内の取締役とは一線を画し、独立した立場から経営判断をする取締役)を選任していた。

 さらに、東証一部・二部企業のうち、2017年7月現在でコーポレートガバナンス・コードの原則(全部で73原則)をすべて実施しているのは26%にとどまった。

 「議決権電子行使・招集通知英訳」「英語での情報開示・提供の推進」といった国際対応の未実施率は高いものの、上場企業向けの同社アンケート調査によれば、「取締役会運営の充実」「ガバナンス体制の強化」(社外取締役の増員など)については、積極的に取り組んでいる企業が多かった。

 しかし、同社パートナーの林拓矢氏は、「確かに、コーポレートガバナンス・コードの導入は形式的には進捗しつつあるが、肝心の中身の運用についてはこれからが本番」と、冷静な見方だ。

日本企業は無形資産への投資が少なすぎる

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 では、そもそもの目的であった日本企業の国際競争力の強化については、コーポレートガバナンス・コード導入の効果が見えているのだろうか?

 東証上場企業(金融を除く)の主な財務指標を2015年度と2016年度で比べてみると、売上高営業利益率は6.24%→6.40%、ROE(株主資本利益率)は7.54%→8.53%、DOE(純資産配当率▲)は2.45%→2.61%と、いずれも改善している(自己資本比率は30.99%とほぼ横ばい)。

 業績回復基調は一見鮮明であり、コーポレートガバナンス・コード導入による経営改革も一定の貢献をしていると言えるかもしれない。だが、林氏はこう釘を刺す。

「利益剰余金、いわゆる内部留保は、2015年度の378兆円が2016年度は406兆円まで増えたが、問題はその中身だ。現預金残高が200兆円から211兆円と11兆円も増えているので、積極的な投資にほとんど回っていないとみられる。とりわけ、労働分配率は横ばい(67.5%→67・5%)で、利益が“人への投資”に振り向けられていない。また、『伊藤レポート2.0』でも述べられている通り、日本企業の知的財産などの無形資産への投資が、欧米企業に比べ伸びが鈍化している。もっとリスクを取って、研究開発や人材といったソフトに投資しないと、日本企業は持続的な“稼ぐ力”が付かず、国際競争力もアップしないでしょう。コーポレートガバナンス・コード導入による経営改革は道半ばだろう」

 稼ぐ力について、林氏は、「正当な売上げや利益を上げることで、すべてのステークホルダーに継続的に価値を分配できるように、中長期的な企業価値を向上させる能力」と定義。「ROEを引き上げる力だけではない」とも明言する。ステークホルダーには、株主だけではなく、顧客、取引先、従業員、金融機関、社会なども含まれるという。

取締役会で重要なのは「中期的な変化」を予測すること

 企業価値の向上において、重大な使命を与えられているのが「取締役会」だ。

 取締役会は、企業が中長期的に目指すべき方向性を定め、それを実現するための経営戦略の質を高め、経営戦略の実現状況を評価する。そして、執行部門の起案を綿密に議論し、その活動をモニタリング・監督する責任を負う。

 「中長期的に目指すべき方向性を定める」とは、中長期的な事業環境の変化を予測し、経営のビジョンや基本方針、事業のドメインやポートフォリオを更新していくこと。

 企業の中長期的な方向性を示す具体的な事例として、ある流通大手企業の統合報告書に掲載されたトップメッセージを挙げる。

 この中では、「過去の延長ではない非連続な成長を目指し、グループのビジョンを新しく設定し、事業ドメインを拡大する。経営と執行の分離を図り、経営の意思決定のスピードを上げていくことで、変化の激しい時代に勝ち残る」といった趣旨が掲載されている。

【次ページ】経営戦略で重要なのはリスクとリターンの整合性

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