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  • 2018/01/18 掲載

地域仮想通貨が続々発行、地方の救世主となるか?

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2017年を代表するパワーワードといえば、年初から対ドルレートが10倍超にもなった「ビットコイン」をはじめとする「仮想通貨」だろう。ビットコインは2018年に入って大きく値を崩しているが、それでも2017年初比ではおよそ10倍の水準は維持している。こうした中、2018年は地域活性化策として話題だったローカルマネー「地域通貨」について、仮想通貨版の「地域仮想通貨」が続々と発行されそうだ。果たしてそれは「地方創生」につながるのか。現状をまとめた。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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岐阜県高山市・飛騨市・白川村では2017年12月、地域仮想通貨「さるぼぼコイン」がスタートした
(出典:アイリッジ報道発表)

2018年は「地域仮想通貨」ブームが来る?

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 2017年は「仮想通貨元年」だった。世界の仮想通貨の時価総額は、前年2016年1年間では約200%(約2倍)増えていたが、2017年は約4000%(約40倍)と、まさに破竹の勢いの急拡大を遂げた。年末には日本円換算で約70兆円に達している(coinmarketcap調べ)。

 その4割を超える約30兆円を「ビットコイン」だけで占め、仮想通貨の世界は「ビットコイン1強」とも言える状況だったが、2017年末から「リップル」や「イーサリアム」など、ビットコイン以外の「アルトコイン」と呼ばれる仮想通貨の取引も徐々に活発になり、その時価総額を伸ばしてきている。

 2017年の全世界の仮想通貨取引高は日本円換算で約5兆円に達するが、「コインチェック」「ビットフライヤー」「ザイフ」のような日本国内の仮想通貨取引所のシェアはその約4%(約2,000億円)にすぎない。日本円が取引額の過半を占めたものの、その意味で日本は市場としての成長余力があると言えそうだ。

ブームが去って失速した「地域通貨」

 一方、仮想通貨と字こそ似ているが、市町村単位など狭い地域で独自に発行される「地域通貨」は、すでに忘れ去られたような言葉になってしまった。

 かつての「地域通貨ブーム」のきっかけは19年前の「地域振興券」だった。金融危機翌年の1999年4月、小渕恵三内閣が景気浮揚策として6,194億円を予算化し、全国の市区町村に全額国費補助で発行させた商品券で、9月末まで半年間有効だった。15歳以下の子どもがいる世帯主や65歳以上の高齢者などに、1人あたり2万円分(1,000円券20枚)が配布された。

 この政策には賛否両論あったが、後で地方自治体や商工団体などで、そのアイデアを借用して地域独自の「プレミアム商品券」や「地域通貨」を発行しようという動きが出てきた。通貨と言っても法律的には「地域限定の商品券」で、地元の金融機関や商店などの協力を得て発行され、5%、10%、20%などプレミア分をつけて消費を喚起し、地域の活性化、地方創生を図ろうとするものである。

 ここぷろがWebサイトで公表する「地域通貨全リスト」によると、国内の地域通貨は全部で677件(2017年4月19日現在)。関東地方の132件、近畿地方の111件が多いが、人口比では中・四国の95件、北陸・甲信越の78件、北海道の49件が健闘している。

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国内の地域通貨の数

 統計を取り始めた2003年2月22日は260件で、それが2003年末は382件、2004年末は508件と伸びたが、「地域通貨ブーム」は2005年頃で下火になる。2006年末の614件以後はずっと600台のまま。廃止される地域通貨もあるので、2010年末から2016年末までの6年間で13件しか増えていない。

 地域通貨ブームと同じ頃、「地方創生」を目的に全国で「ふるさと納税」や「ゆるキャラ」や「B級グルメ」やロケ誘致の「フィルムコミッション」などが次々と名乗りをあげて、その人気は今も衰えていないが、地域通貨はすでに忘れられたような感がある。

 「狭い地域でしか使えない」「使えない店がある」「交通機関や医療機関で使えない」「おもちゃのお金のようで〃ニセ札〃が出てきそうだ」「受け取っても後で円に交換するのが面倒だ」など、地域住民の間での評判は決してよいとは言えないものもある。また、発行者側も、偽造されにくくする印刷や安全な保管方法、発行・管理に予想外のコストがかかっていたという。

 ブームが失速して久しい地域通貨だが、いま、仮想通貨の急成長に刺激され復活しそうな気配がある。発行・管理のコストが紙の地域通貨や電子マネーなどより安く済む「ブロックチェーン」を利用した地域限定の「地域仮想通貨」が2018年に、続々と旗揚げしそうなのだ。

金融機関、大学、企業、自治体が発行を計画

 2017年5月、岐阜県の飛騨信用組合が「さるぼぼコイン」の実証実験を始め、12月4日に一般市民向けに正式運用を開始した。高山市、飛騨市、白川村限定の地域仮想通貨で、同組合とスマホ向けアプリ開発のアイリッジが共同開発し、仮想通貨の基本技術「ブロックチェーン」を利用。小売店や飲食店で使え、スマホアプリで決済できる。

 飛騨信用組合の窓口や専用アプリで、あらかじめ「1円=1コイン」のレートでさるぼぼコインをチャージすると、店舗のレジにあるQRコードを読み取って専用アプリで金額を入力し、確定ボタンを押せば支払いができる。それは「ビットコインが使える店」の支払い方法とほぼ同じで、シンプル。さるぼぼコインは飛騨地方を訪れる外国人観光客の利用も見込んでおり、それは従来の地域通貨にはなかった用途と言えるだろう。

 地域仮想通貨の実証実験は島根県、鳥取県基盤の山陰合同銀行も行っている。それとは別に地銀各行はみずほフィナンシャルグループなどと組んで仮想通貨「Jコイン」を計画中だ。地方の金融機関にとっては法人顧客を開拓できるという狙いもある。

 福島県会津若松市にある会津大学は、コンピュータ理工学部1学部を設置する公立の単科大学。2017年3月に学内仮想通貨「白虎コイン」を立ち上げ、会津地方の地域仮想通貨に発展させようとイベント会場などで実証実験を行っている。会津若松市と協力して、雪おろしなどのボランティア参加の見返りに支給する考えもある。この白虎コインもブロックチェーンを利用しており、スマホに専用アプリをインストールして店のQRコードで支払いを行うというタイプである。

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会津大学内での白虎コインの利用イメージ
(出典:会津大学報道発表)

【次ページ】地域仮想通貨の運営コストを誰が負担する?

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