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  • 2018/03/02 掲載

なぜ「米国で最も幸せな職場」では個人を評価しないのか

ピョートル・フェリークス・グジバチ氏×リチャード・シェリダン氏対談

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医療・健康関連の企業向けソフトウェアの受託開発をする米メンロー・イノベーションズは、「米国で最も幸せな職場」と呼ばれている。「全社員が仕事に喜びを感じられる環境づくり」に取り組み、日本企業では想像もつかないユニークなアプローチで「幸せな職場」を実現してきた。本稿ではメンロー・イノベーションズのメンロー・イノベーションズのCEO兼チーフ・ストーリー・テラーであるリチャード・シェリダン氏と、プロノイア 代表取締役 モティファイ 取締役 チーフHRサイエンティストのピョートル・フェリークス・グジバチ氏が考える「社員が幸せになる企業文化醸成の在り方」を紹介する。

執筆:フリーライター 井上 猛雄、聞き手:編集部 佐藤友理

執筆:フリーライター 井上 猛雄、聞き手:編集部 佐藤友理

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プロノイア 代表取締役 モティファイ 取締役 チーフHRサイエンティストピョートル・フェリークス・グジバチ氏(左)とメンロー・イノベーションズのCEO兼チーフ・ストーリー・テラーのリチャード・シェリダン氏(右)

残業なし、給料オープン、退勤後メール禁止の社風

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 「米国で最も幸せな職場」といわれるメンロー・イノベーションズは、「技術が生み出す苦痛」から社員を解放し、「働く喜びを追求すること」を経営の大きなミッションに掲げている。その理由についてシェリダン氏は、以下のように強調する。

「テクノロジーから生じる苦痛は多い。まず莫大なソフトウェア開発投資に対し、プロジェクトが失敗し、何も生み出せない苦しみがあります。次に複雑化するツールにより、開発が難しくなってしまう苦しみ。そしてテクノロジーの進化によって開発者が1日中働かされるようになる苦しみです。我々は、こういった苦しみから社員を解放し、幸せになることを目指しています」(シェリダン氏)

 そのために同社は以下のような、非常にユニークな施策を打ってきた。

・勤務は9-18時まで週40時間
・バケーション中の仕事は絶対禁止
・退勤後のメール禁止
・上司が存在しないフラットな階層づくり
・常にペアで仕事をしてコンピュータも共有
・毎朝10時全員参加の民主的会議
・仕事内容から進行、給料までオープンにして信頼性を確保


 日本では考えられない大胆な施策が並ぶが、実はこれらは米国でも珍しい。実際、同社のノウハウを学びたい経営者が、毎日のように世界中から同社に押し寄せているという。これまでに4万人がメンロー・イノベーションズの視察ツアーに訪れているそうだ。

子連れ出勤したら思わぬメリットを発見

 シェリダン氏は「我々には何も隠すことはありません。とにかく『どんなことでも実験しよう』 という企業文化・風土があります。たとえば、ある女性社員に赤ちゃんが生まれたのですが、彼女は保育園やベビーシッターを確保することができませんでした。でも彼女は継続して働くことを希望しました。そこで『赤ちゃんをオフィスに連れてきて、一緒に自分のデスクで働けばよい』ということになりました」と語る。

 よくある企業であれば、就業中に赤ちゃんが泣けば、周りの迷惑になってしまうと躊躇するだろう。しかし実際にトライしてみるとさまざまな発見があったという。

 まず思ったより赤ちゃんは泣かないということ。泣いたとしてもチームメンバーの対応が温かく、メンバーが赤ちゃんの面倒を見るケースも出てきた。

 また、顧客とのミーティングの場にまた赤ちゃんがいることで笑顔が増え、雰囲気が良くなったという効果もあった。こういったことは実際に実行してみなければわからないことだろう。

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赤ちゃんも犬もオフィスにいられるメンロー・イノベーションズのオフィス
(写真:メンロー・イノベーションズ)


「要するに、我々が最も大切にしていることは、誰もが心地よく働けるように、いろいろな実験ができる環境を作ることなのです。過去10年の間に20名のメンロー・ベビーがやってきました。社員がオフィスに新生児を連れてくるのも珍しくなくなりました」(シェリダン氏)

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メンロー・イノベーションズのオフィスの様子。間仕切りのないオフィスは、いつも会話であふれている
(画像:メンロー・イノベーションズ)


 とはいえ、メンロー・イノベーションズのような思い切った施策が、果たして日本企業でも打てるのか。多くの人は自社に照らし合わせてみて疑問符がつくのではないだろうか?

 この点について、ピョートル氏は以下のように説明する。

「メンロー・イノベーションズでは、トップのシェリダン氏の方針のもと、社員とのコミュニケーションが円滑に取れているからこういった施策が打てるのだと思います。日本でもサイボウズのように、CEOの青野氏が子育てに理解があり、自らオフィスに子どもを連れて一緒に働ける企業もあります。それは企業文化であり、国籍の問題ではありません。もちろん職種にも寄りますが、オフィスで働くような環境であれば、実現できないことではありません」(ピョートル氏)

【次ページ】二人一組でコードを書いたらどうなるか

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