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  • 2018/03/27

日本政府のアグリテック戦略、ロボットやAIで挑む「農業のイノベーション」とは

連載:「東京五輪後」をどう生きるか

日本の農業は、深刻な高齢化が進み農業経営は一段と厳しい局面を迎えている。こうした社会課題の解決に向け、内閣府は「総合科学技術・イノベーション会議」を開催。官民一体で、スマート農業や農業データ連携基盤整備に向けた政策提言を行っている。そこで、政府の取り組みを中心に、AgriTech(アグリテック)が開く近未来の農業を紹介したい。

国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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テクノロジーによる農業の課題解決が求められている
(© zapp2photo – Fotolia)



生産性向上と流通に至るイノベーションが必要

 日本の農業は深刻な高齢化が進み、農業人口の減少で担い手が不足している。また、耕作放棄が増えるなど、日本の食料の生産基盤はかなり厳しい状況にある。2018年度からはコメの減反優遇が廃止になり、コメ農家への補助金が減額。コメ価格の下落による減収も予想されるなど、農家の経営は厳しさを増すばかりだ。

 これまで既得権益に守られていた部分の多い農業だが今後は、次世代の担い手を育てつつ、さまざまな業種が農業に参画する構造転換に対応する必要がある。農家・農業事業者が自らの創意工夫で経営を発展させていくことが求められるのだ。

 内閣府はこの2月28日、「総合科学技術・イノベーション会議」(政策討議)を開催した。省庁連携による農業での生産性向上やイノベーションのあり方、データ活用などについて、議論・検討を進めている。

 農林水産省は、新規就農者や企業参入の支援などによる担い手の育成や経営発展を促進している。法人化による農業経営者が自らの経営判断で経営していける「農業の産業としての自立」を促すことで、農業・食品産業や地域経済の発展をめざしている。

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産業としての農業の自立が急務だ
(出典:2018年2月28日「総合科学技術・イノベーション会議」政策討議)


 農業は、農業者の減少や高齢化が進むものの、法人経営体の数は1995年の4,986から2015年には1万8,857と大幅に増加し、法人経営体の販売金額のシェアも大きく増加している。新規就農者も近年増加し、40代以下の新規就農者が3年連続で2万人を超えるなど、政策のテコ入れが一定の成果をあげている状況だ。

 国内市場の縮小とグローバルな食市場が拡大する中、政府は、日本の農業が世界との競争に勝ち、産業として成長するために、生産性の飛躍的向上をめざす。さらに、ニーズにあわせた機動的な生産・流通が可能になるイノベーションの実現が必要だとしている。

スマート農業とデータ連携基盤の構想

 農業の生産性向上とイノベーション実現にあたっての大きな柱は、ロボットやAI、データなどを活用した精密農業である「スマート農業」の普及と、農業データの活用した「農業データ連携基盤」の構築だ。

 政府の戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) の次世代農林水産業創造技術では、府省、産学連携でスマート農業および農業データ連携基盤の構築を進め、一部で成果をあげている段階にある。

 スマート農業でめざす姿は、以下の3つのポイントが挙げられる。

●自動走行トラクターを開発し、2018年度の市販化の決定

●自動化技術・データサイエンスなどによる超省力・高生産で環境変化に強い新たな水田農業の実現により、2023年までに担い手のコメの生産コストを現状比4割削減

●施設園芸(トマト)の多収や高品質の鍵となる内在性因子を用いた栽培モデルを構築し、「新育苗システム」と連続生産期の「生育予測・栽培支援ツール」を開発などによる日本型施設園芸の実現

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農業のスマート化で省力化と競争力強化をめざす
(出典:内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム シンポジウム2017」)


 また、大学やICTベンダー、農業機械メーカー、研究機関、農業者・農業者団体が集結し、農業関連のデータプラットフォーム「農業データ連携基盤」を構築した。2017年12月からはプロトタイプの運用を開始し、2019年4月からはサービスの本格提供の開始を予定している。これにより、農業の担い手の誰もがデータを駆使して生産性の向上や経営改善に挑戦できる環境整備を進める。

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農業データ活用のプラットフォーム整備が求められる
(出典:2018年2月28日「総合科学技術・イノベーション会議」政策討議)


 農業データ連携基盤の活用により、背景地図(航空写真、地形図)、農地筆ポリゴン、土壌データ、生育予測システム、メッシュ気象データと連携、重ね合わせて表示できるようになる。これにより作業適期などの管理が可能という。地域全体での技術・経営力の底上げや、篤農家の技術を次世代に継承することなどへの活用が期待されている。

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プラットフォームにより農家はさまざまなデータを容易に活用できるようになる
(出典:2018年2月28日「総合科学技術・イノベーション会議」政策討議)


 政府は、農業データ連携基盤への参画機関の拡大を目的として、2017年8月に「農業データ連携基盤協議会(WAGRI)」を設立し、2018年1月末時点で111社が加入している。

 WAGRIとは、農業データプラットフォームが、さまざまなデータやサービスを連環させる「輪」となり、さまざまなコミュニティのさらなる調和を促す「和」となることで、農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた造語 (WA+AGRI)だ。

 WAGRIは、農業関係のデータ利活用の拡大に向けて、農業関連サービスの拡充、会員間の情報連携・共有や新たなサービスの創発に取り組んでいる。

【次ページ】宇宙ビッグデータ活用の実証実験も始まる

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