• 会員限定
  • 2018/04/16 掲載

IoT時代のものづくり、強みの「匠」や「三現主義」をどう生かすべきか?

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
IoTへの注目が高まる一方、いざ進めようとするとさまざまな課題に直面しているのも事実です。データを集めても、活用されないままで死蔵している、あるいはセキュリティへの担保が進まないといった問題もあるでしょう。今回はIoTへの取り組み課題を洗い出すとともに、日本の強みである「三現主義」をどう進化させていくべきなのかを考えていきましょう。

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 担当部長
東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター 参事
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)正会員となり、教育普及委員会副委員長、エバンジェリストなどをつとめる。その他、複数の団体で委員などをつとめている。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』『デジタルファースト・ソサエティ』(いずれも共著)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。

photo
日本のものづくりは現場・現物・現実という「三現主義」、あるいはそれに原理・原則を加えた5ゲン主義で成り立ってきた
(©hiroshiteshigawara - Fotolia)

IoTを阻むさまざまなハードル

関連記事
 ドイツの「Industrie4.0」や米国の「Industrial Internet Consortium(IIC)」など、IoTによるモノづくりの高度化が進んでいます。その中で、モノづくりの工程からも大量のデータが取得できるようになって来ました。

 日本でも政府の「Connected Industries」などの成長戦略の後押しもあり、IoTを活用したデジタルトランスフォーメーションによって産業や社会のイノベーションを進めようとする動きが始まっています。

 しかし、その実現にはさまざまなハードルがあります。社会インフラ、産業機器、あるいは工場の製造装置などをIoTで“つなぐ”といっても、現場には古い機械や単体で動いている設備、機器などが数多く存在し、ネットワーク環境さえ整っていない現場も多く存在するからです。

 機器や製造装置などのどの部分から、どのようなデータをどのくらい集めるべきなのかといった検討には製造業のドメイン知識が欠かせません。

 また、機器からデータを集めても、活用されないまま膨大に死蔵されているケースも散見されます。どのようなデータを集め、関連付け、利活用していくのか、分析や現場へのフィードバックはどのように行えばよいのでしょうか。

 そのほかにもセキュリティをどう担保していくのかなど、IoTを企業活動に生かしていくためには多くの課題が存在しており、データモデリングや企業を超えた標準化の取り組みなどが重要となってきます。

 このような課題はあるものの、工場やプラント内の情報を収集し、装置ごとの稼働率や工程ごとの所要時間、仕掛残の推移などを見える化し、生産効率の向上などに役立てる取り組みは確実に進んできています。

“匠(たくみ)”の技能を伝承・進化させるIoTデータ活用

 一方、見える化されたデータを解釈し、最終的な判断を行っているのは熟練技能者などのヒトであるケースがいまだに多いというのも実情です。それゆえに、その判断にかかる時間はなかなか短縮されません。

 日本の製造業では、加工や製造作業に際して、素材の状態などに合わせて工具の角度や力加減を微妙に変化させることなどにより、モノづくりの品質を維持してきた“匠(たくみ)”と呼ばれる熟練技能者の技能、およびその伝承と進化が、製造技術の維持・向上を支えてきました。

画像
IoTやAIで匠のノウハウを数値化・形式知化する

 このようなヒトの技能は、機械などによる加工技術を向上させるうえで実は非常に重要な要素であり、それを製造工程に取り入れるためのIoTが求められるようになってきています。私はこれを「匠+(プラス)」と呼んでいます。

 人間の目視や経験によるデータ解析には限界があります。今後、人口の高齢化、労働人口の減少が加速化する国内においては、熟練技能者の技能(暗黙知)を早急に形式知化するとともに、ヒトが把握しきれなかった部分を補完し、データを効率よく分析・活用するための施策が必要となるでしょう。

【次ページ】現場とデジタル世界が共存する新たなモノづくりの仕組み

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます