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  • 2018/04/25 掲載

こんなにある!中国における事業停止リスク、デロイトが米中のグローバルリスクを解説

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グローバルビジネスを展開している日系企業をとりまくリスクは、日々変化している。しかしながら、事業の多角化、拠点数が増加するに伴い、経営陣がそれらすべてを把握することは難しいのが現状だ。では現在、どんなリスクが増えており、どのような対応が必要なのか。デロイト トーマツ 企業リスク研究所 主席研究員の茂木寿氏が、特に最近増えている中国・米国でのリスクの概要とその対策方法を解説した。

フリーライター 中村 仁美

フリーライター 中村 仁美

大阪府出身。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在は主にIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。ネコと歴史(古代~藤原時代、戦国時代)好き。

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デロイト トーマツ 企業リスク研究所 主席研究員の茂木寿氏

米国への鉄鋼・アルミの輸入制限で日系企業が受ける影響

 デロイトトーマツでは毎月、グローバル展開をしている日系企業が影響をうけるリスクを整理したマクロ・リスク・ヒートマップを作成している。3月27日に開催された勉強会では、「戦略リスクへのリアルタイムレスポンス(3月分)」から、次の4事象におけるリスクについて茂木氏より解説がなされた。

 第一は「米国への鉄鋼・アルミの輸入制限」によるリスク。3月1日、トランプ米大統領は鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして、鉄鋼は25%、アルミニウムは10%の追加課税を課し、輸入制限を発動する方針を表明し、3月8日に正式決定されたというもの。

 この事象によりどんな影響があるか。茂木氏は「米国へ鉄鋼、アルミニウムを輸出する日系企業は、関税上昇により販売コストが増加し、売上収益が低下する」と説明する。また米国以外の輸出に関しても、米国市場から閉め出された他国製品の流入により、販売価格の競争が激化し、売上収益が下がっているのだ。

 「特に中国は元々生産が過剰気味な上に、米国市場の締め出しにより行き場を失うことで、さらなる値崩れを起こす可能性がある」と茂木氏は警鐘をならす。

 また米国内に製造拠点を設けている日系企業の場合は、日本や他国から鉄鋼・アルミニウムの調達コストの増加と、輸入元企業が関税の上昇により米国市場から撤退することでサプライチェーンの見直しも迫られる可能性があるという。

 これらの影響を軽減するためのポイントの1つ目は、米国への輸出・販売を行う企業の場合、輸出品の関税が上がることをリスクとして考慮した事業計画となっていること。2つ目は今後の見通しなどについて適宜、経営陣に報告する仕組みとなっていること。3つ目として、関税上昇による事業計画への影響のモニタリング、計画の見直しをする仕組みを整備していることである。米国内に製造拠点を設けて、他国から輸入を行っている企業の場合は、これらに加えてサプライチェーンの変更を行った際の生産・財務への影響が評価できる仕組みが整備されることが大事だという。

「今年秋、米国では中間選挙が行われる。それを見越した恣意的な政権運営が行われる可能性が高い。米国に輸出している企業は、今後、さらなる注意が必要だ」(茂木氏)

中国のWebサイトに機密情報が掲載されるリスク

 第二は「Webサイトに日本企業の機密情報の流出」のリスクだ。「2017年6月から2018年2月の間に、200社近くの日本企業の内部文書が中国の文書共有サイトに掲載されていることが発覚した」と茂木氏は説明する。

 掲載された企業は幅広く、その内容も設計図や社内研修で使用された製品機能の説明資料、飲食店チェーンの接客マニュアルなど多岐にわたっていた。

 日本貿易振興機構が注意喚起を行い、対策を公表してはいるが、依然として流出は続いているという。

 その背景には、このようなサイトでは文書がダウンロードされると、投稿者に通販などで使えるポイントが付与されるからだという。つまり小遣い稼ぎを目的に行っているのである。

 このような機密情報の流出は、企業は売上の低下やレピュテーションの毀損につながる可能性がある。

 ではどうやってこのリスクを軽減すればよいのか。茂木氏は「まずは現地従業員に対して、機密情報の範囲を明示し、秘密保持契約の締結をすること。また退職時には資料の返還義務があることや秘密保持義務が継続することを定義しておくこと。そしてそれらの契約を違反した際には、損害賠償請求がなされる可能性があることを周知徹底しておくこと」と指摘する。

 また「常にこれらのサイトに情報が上がっていないか監視をし、問題があれば削除できる体制を構築しておくことも重要だ」と語る。

当局の調査への対応遅延によるリスク

 第三は「当局の調査への対応の遅延」によるリスク。オーストリアの四大銀行で相次いだ保険金不払いやファイナンシャルアドバイザーによる不正などの不祥事を調査するため、王立委員会が設置された。

 四大銀行のうち2行は、王立委員会から求められていた過去の不正に関する資料を期限までに提出することができなかった。そのため、当局から調査に非協力的と見なされ、かなりの金額の制裁金が科されたという。

 しかも、その情報がメディアに報道されると、レピュテーションの毀損にもつながる。「これはオーストラリアに限った話ではない」と茂木氏。米国や欧州でも当局の調査への対応が遅延すると高額な制裁金が科されるという。特に国際カルテルなどFCPA(Foreign Corrupt Practices Act、海外腐敗行為防止法)に関する調査に対する資料提供が遅れると、「かなり高額な制裁金となる」と茂木氏は説明する。

 このようなリスクを軽減するためのポイントとしては、第一に当局から調査を受けた際の対応手順や対応に必要な知見・リソースを検討し、その対応手順に関する仕組みを整備しておくこと。

 第二に自社で不正が発生した場合に、事実調査などが迅速に行えるよう取引データ保管などの規格を整備し、適切に運用できるかを確認する仕組みを整備しておくこと。

 第三に自社で不正やその疑いが発生した際に、国内子会社における影響や情報収集の範囲を特定できるような体制を築いておくことが挙げられる。

【次ページ】こんなにある!中国における事業停止リスク

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