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  • 2018/04/27 掲載

ソニーが「指数関数的」に考える訓練を積む理由、デザイン思考で不十分な点とは

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現在の企業には、急激に進化するテクノロジーを取り込み、イノベーションを起こして、ビジネスを変革することが求められている。「エクスポネンシャル思考」は、間違いなく、そのための強力なツールになるだろう。特に企業のトップには、ぜひ学び、実践してほしい。前回に引き続き、早稲田大学の池上重輔 教授とエクスポネンシャル・ジャパンの齋藤和紀氏のお二人を交えて、デザイン思考との違いや企業がエクスポネンシャル思考を実践するために必要なことは何かを語り合った。

電通/電通ライブ 日塔 史

電通/電通ライブ 日塔 史

(株)電通 BD&A局 主任研究員、(株)電通ライブ 第1クリエーティブルーム チーフ・プランナー、日本マーケティング協会 客員研究員。現在、「ヒアラブル」「エクスポネンシャル思考」をテーマにソリューションを開発中。日本広告業協会懸賞論文「論文の部」金賞連続受賞(2014年度、2015年度)。電通報ほか寄稿・講演多数。

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早稲田大学 池上重輔教授(左) エクスポネンシャル・ジャパンの齋藤和紀氏(中)電通/電通ライブ 日塔史氏(右)

「デザイン思考」との違いは?

日塔氏:エクスポネンシャル思考を実践したいが、その入り口としていきなり「AIをやれ」と言われても、大学院に行って勉強するのはハードルが高いのでは。そうした場合に、たとえば「デザイン思考」で「ワークショップやって新規事業考えるぞ」というのは経験したことがある方は多いと思います。

 エクスポネンシャル思考も同じようにできれば、専門家でなくても誰でも身に付けられるのではないでしょうか。デザイン思考との共通点や違いは何か感じられましたか?

池上氏:デザイン思考は、とても良いツールです。しかしプロトタイプはできるのですが、その先がなかなかつながらない。アイデアやプロトタイプ創出のためのものなので、ビジネスモデルを構築できる人と一緒にやらないと「で、どうするの?」となるのが現状です。

日塔氏:プラス、私のイメージですが、デザイン思考はゼロからイチを作るときのアイデア自体は自分で考えなければいけなくて、結局は「すごいアイデア持っている人が必要」みたいなところがありますよね。

池上氏:あるある。

日塔氏:ですが、斎藤さんのワークショップを見ると「エクスポネンシャル思考」は未来の世界に強制的に放り込んでしまう。ある意味、その乱暴さがすごくいいですよね。

池上氏:ネタを提供するわけですね、トリガーを。

日塔氏:「メガトレンドを2つ(たとえばVRとドローン)組み合わせると、何かできちゃいました」みたいな感じで。しかも、それを複数回繰り返せる。「ゼロイチ」をたくさん生み出す強制力に可能性を感じました。

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ワークショップのアイデア出しの例
(ワークショップ内容から筆者作成)


大企業のエグゼクティブも積極的に活用を検討

日塔氏:エクスポネンシャル思考の成功事例はありますか?

斎藤氏:これと似た考え方でやっているのが、シンギュラリティ大学のプログラムであり、エクスポネンシャル・オーガナイゼーションです。彼らはエスタブリッシュされた大企業に向けてイノベーション創出のコンサルティングをやっていて、その中でさまざまな企業がターンオーバー(新陳代謝)していくことがあります。具体的に個社名もありますが……。

日塔氏:公表している会社名があったら出したいのですが。

斎藤氏:それは――あまりないと思います(笑)。ただ、間違いなくシンギュラリティ大学と関係を築いているという意味では、ソニーが日本ではすごく今、変わり始めているのではないでしょうか。

 ソニーは、日本でまだ誰も注目していなかったころからシンギュラリティ大学の日本におけるコンテストをスポンサーしています。我々エクスポネンシャル・ジャパンの活動をサポートしていただいています。

 非常に先見の明があるリーダーがいるというか、シンギュラリティ大学と密な関係を築き、折に触れてそのエクスポネンシャル思考に関する教育プログラムをマネジメント層に対して実行しているとも聞きます。

 最近、長らく経営をリードしてきた平井一夫 氏が退任し、後任として財務畑の吉田憲一郎 氏が社長となる人事が行われました。技術を標榜して成功してきた会社ほど非技術系のリーダーが登場したときの抗体反応が強いだろうと思うのですが、今回はエクスポネンシャル思考を利用して周到に抗体反応を弱めるためのアクションを取っているといえるでしょう。

 だから今後、面白いイノベーションが起きるのではないでしょうか。最近のソニーからは、犬型ロボットのaiboを始めとして面白い製品がたくさん出ていますので、ぜひ今後に期待したいですね。

日塔氏:面白いですね。私のイメージですけど、シンギュラリティ大学は夏のメインプログラムでは世界中の優秀な若者たちを選抜してチームにし、短期間で起業させてしまう。そこでいくつかベンチャー企業が出ていますね。メイド・イン・スペースとか。

斎藤氏:ドローン輸送のマターネットとか。

日塔氏:それらのベンチャー系とは別に、もう大企業のCクラス(=CEOやCOOなどの経営トップ層)の方々も、大企業を変えるツールとしてエクスポネンシャル思考を活用したいと考えているのですね。

池上氏:大企業が一番必要な気がしますけどね。

日塔氏:大企業のエグゼクティブは必要だと分かってはいるけれど、やり方が分かっていなかったところに対して、シンギュラリティ大学は具体的なツールを提供している。それは研修でありトレーニングであり、この思考を身に付けさせることです。

 組織をターンオーバー(新陳代謝)させたいときに組織が新しい方向を向く可能性が高いということと、さらにイノベーションを起こしたいときには、そのやり方もあるということになります。グーグルがそれに近いと思いますが、イノベーションを起こしやすい組織形態に変えていくことが、実際に行われているかと思います。

【次ページ】 大企業が「エクスポネンシャル思考」をワークさせるには

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