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  • 2018/05/16 掲載

IoTによるO&Mの高度化、「顧客以上に顧客を知る」価値をどう還元すべきか

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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IoTの進展に従い、社会インフラ設備や製造装置メーカーなどのB2Bビジネスにおいても、製品を顧客が使用する局面におけるO&M(Operation & Maintenance)の高度化が求められるようになってきました。B2Bビジネスでは、安定的に設備や装置を稼動させるため、従来より納入メーカーが保全・保守サービスを提供したり、事業者自身が点検・保全業務を行っています。IoTによって、O&Mのあり方はどのように変化し、ものづくり企業のビジネスのあり方はどう変わるのでしょうか。

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 担当部長
東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター 参事
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)正会員となり、教育普及委員会副委員長、エバンジェリストなどをつとめる。その他、複数の団体で委員などをつとめている。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』『デジタルファースト・ソサエティ』(いずれも共著)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。

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ただものを作ればいいという時代は終わった
(©chombosan - Fotolia)

IoT化がもたらす「系、システム」全体を最適化するO&M

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 まず、IoTによるO&Mの高度化に伴って、メーカーが納入した製品や設備の監視・保全・保守を行うだけでなく、顧客の運用視点での最適化を考慮したサービスの提供が求められるようになります。

 たとえば、複数の企業から納入された製品や設備を用いて生産活動を行っている製造業の場合(製造ラインに複数企業の製造設備を並べて製造している製造業などがこれにあたります)、顧客の運用視点では、複数の納入メーカーの製品や設備などをまたいだ製造ライン全体やプラント全体、サプライチェーン全体、すなわち「系、システム」全体の最適化を望むようになります。

 つまり、顧客にとっての製品の「使用価値」は、個々の製品を納入し安定稼動させるだけでなく、自社のビジネスを最適化するサービスを提供してもらいたいと求めるようになるわけです。

 その背景の1つとしては、IoTの進展によって、生産設備の正常稼働時間など、製品が顧客にどの程度のパフォーマンスを与えているかなどの情報が、製品を提供する側、受ける側、どちらにも見えるようになってきたことがあります。

 従来、モノの製造販売を生業とする企業のゴールは顧客に製品を販売することでした。その後、販売した製品を長く顧客に使ってもらうために、予防保守や定期保守などのサービスを付加販売するようになりました(保守パッケージ、メンテナンスパックなどと呼ばれているものがそれにあたります)。

 また、適切なタイミングで部品交換や消耗品販売の提案を行うようなビジネス形態も発展してきました。

 市場の成熟やグローバル競争など事業環境が厳しくなる中で、サービス比率を高め、モノからコトへのビジネスシフトを進めなければ生き残れない時代になってきたわけです。

サービス型のビジネスモデルへの変革

 これが、製品そのものではなくそれが提供する価値が取引対象となる、「as a Service」や「Subscription」と呼ばれるサービス型のビジネスモデルへの変革です。

 このビジネスは、メーカー側が顧客の製品使用状況を把握し、製品が価値を出し続けていることを確認し、その成果ベースの価値を取引対象とするものです。

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サービス型のビジネスモデルへの変革

 そして顧客が価値を獲得し続けるために、メーカーは顧客における製品の使われ方や使用環境をとらえ、顧客が使い始めた後でも遠隔でのソフトウェアの入れ替えや、設定変更などにより、個々の顧客の環境変化やニーズに対応していくことが求められるようになります。

 これを実現するためには、メーカー側は、提供する製品設計そのものを従来のハードウェア制御中心のつくりから、ソフトウェア制御中心のつくりに変更していく必要があります。これがいわゆるソフトウェア・デファインド化やスマートプロダクト化といわれるものです。

 これにより、製品や設備そのものは遠隔で統合管理可能な形態に進化します。

 たとえばB2Cの領域では、電気自動車開発を手掛ける米テスラ社が事故発生の実績をもとに自動運転モードの機能強化を行い、出荷済みの自動車に対して機能強化されたソフトウェアを遠隔で更新することで、走れば走るほど機能が微調整され、性能が向上するといった経験を顧客に与えています。

 これは自動車の制御の多くをソフトウェア制御に切り替えることで実現されたものです。

 B2B領域では、工作機械メーカーが単なる遠隔保守ではなく、遠隔監視によってメーカーが提案した内容に基づいてメーカーのサーバから顧客が各種データのダウンロードと適用を行い、顧客の設備の最適稼動を支援する取り組みを行っている事例も出てきています。

 一方、顧客の生産ライン全体や工場全体、サプライチェーン全体の最適化要求に応えるためには、他メーカーが導入した設備などを相互に監視できるようにする必要があり、通信プロトコルやデータフォーマットなどの標準化の動きもグローバルに活発化しつつあります。

 このようにメーカーがサービス型のビジネスモデルに転換していくためには、どのような要件が求められるのでしょうか。

【次ページ】ものづくり企業のビジネスはどう進化していくべきか?

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