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  • 2018/05/21 掲載

山縣真矢氏と杉山文野氏、「LGBTという言葉がない社会」を目指す

東京レインボープライド イベントレポート&主催者インタビュー

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4月28日から5月6日までの9日間はゴールデンウィークであり「プライドウィーク」でもあった。これは5月5日と6日に開催された日本で最大級のLGBT関連のイベント「東京レインボープライド2018」に先立つイベントの集合体のことだ。プライドウィーク中は約70のイベントが渋谷区代々木公園とその周辺施設で行われた。締めくくりとなる6日のパレードには7000人が参加。主催者(東京レインボープライド事務局)の発表によると、プライドウィークの参加人数はのべ15万2000人で、過去最高を記録したという。今年の東京レインボープライドはどのような様子だったのか。主催者の山縣真矢氏、杉山文野氏のインタビューとともにお届けしたい。

ITジャーナリスト 鈴木 恭子

ITジャーナリスト 鈴木 恭子

ITジャーナリスト。明治学院大学国際学部卒業後、週刊誌記者などを経て、2001年よりIT専門出版社に入社。「Windows Server World」「Computerworld」編集部にてエンタープライズITに関する取材/執筆に携わる。2013年6月に独立し、ITジャーナリストとして始動。専門分野はセキュリティとビッグデータ。

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「東京レインボープライド」の共同代表を務める山縣真矢氏(左)と杉山文野氏(右)

稲田朋美氏、枝野幸男氏、細野豪志氏らもパレードに参加

 「東京レインボープライド」は、性的少数者への差別や偏見のない「当たり前の社会」と、すべての人が「自分らしく前向きに生きられる社会」を目指すことを目的にスタートした。

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会場となった代々木公園イベント広場

 同イベントの前身である「プライドパレード」が開催されたのは1994年で、2012年に「東京レインボープライド」と名称変更された。「すべての愛に平等を(LOVE & EQUALITY)」をテーマに掲げた今回は、213の協賛団体/企業が出展している。

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野外ステージではさまざまな催し物が見られた。5月6日は現代舞踊と日舞をコラボさせたライブユニット「en Design」のパフォーマンスが披露された。
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2017年7月に発足した「LGBT自治体議員連盟」もパレードに参加した

 5月6日に開催されたパレードには、過去最大の37グループが参加した。国会議員では自民党の稲田朋美・元政調会長、公明党の谷合正明・農水副大臣、立憲民主党の枝野幸男代表、希望の党の細野豪志・元環境相、共産党の小池晃書記局長、社民党の福島瑞穂副党首らが参加した。

山縣氏、杉山氏から見る「企業の中のLGBT」

 「初めてイベントが開催された1994年の参加者は、1100人だった。それから約四半世紀で150倍の規模に成長した。それは素直にうれしい」

 こう語るのは「東京レインボープライド」共同代表を務める山縣真矢氏である。同じく共同代表の杉山文野氏も、「これまでセクシャルマイノリティは、水商売やバラエティ・ショーを生業とする『異質な人』という印象を持たれていた。しかし近年は、少しずつではあるが、そうした印象は薄らいでいる」と語る。

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東京レインボープライドは1994年から約四半世紀で150倍の規模に成長した。山縣氏(左)も杉山氏(右)もこの成長を喜んでいる。

 杉山氏は「(社会で)LGBTを理解しようという機運が高まったのは、2017年5月に経団連が公表した提言『ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて』の影響が大きい」と指摘する。同提言には、「LGBTを身近な存在として理解し、多様な存在として受容し得る『LGBTフレンドリー』な社会を目指すことが重要」であると明記されている。

 こうした流れを受け、企業でもLGBT(性的マイノリティ)に対する適切な理解と知識の共有が必要であると認識が広まり始めているという。杉山氏は「企業は社員研修をしたり、先進的なLGBT対応をしている企業の事例などを勉強したりして、知識を得る必要がある」としたうえで、以下のように指摘する。

「多くの企業にとって、LGBTに対する認識や受容に向けた取り組みは初めてのことだ。だから、最初は配慮ない言葉使いなどで当事者を傷つけてしまったり、コミュニケーションミスによる誤解が生じたりという失敗もあるだろう。しかし、新しいことに失敗はつきものだ。むしろ失敗を1つの経験として学びの糧とし、『そうならないためにどうするか』を考えてほしい」(杉山氏)

ギャップ、マルイ、資生堂らLGBT当事者に自社サービスをアピール

 今回東京レインボープライドでは、ギャップジャパン、リーバイ・ストラウス ジャパン、丸井グループ、日本航空、資生堂、日本たばこ産業、パナソニック(PRIDE SALON×LGBT総合研究所)などが大型ブースを構えた。こうした企業は、LGBTの支援と理解をアピールすると同時に、自社製品/サービスを参加者にアピールする狙いもある。

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日本航空は「LGBT-Allyプロジェクトの1社」として出展。性別を問わずCAの制服を着られる(ついでに写真も撮れる)イベントを行っていた

 電通ダイバーシティ・ラボが2015年に全国6万9989人(20~59歳)を対象に実施した調査によると、日本でLGBTに該当する人は7.6%で、LGBT当事者の市場(以下、レインボー市場)規模は5兆9,000億円に上る。この金額は、2017年における全国の百貨店の売上高(5兆9500億円)と同等であり、決して“マイノリティの市場”ではない。ちなみに、レインボー市場規模は、米国で約77兆円、イギリスで約7兆円に達している。

 パナソニックのブースで男性用グルーミング(毛ぞり)製品を紹介していた説明員は、「日本のグルーミング市場の男女比は2:8程度で女性のほうが圧倒的だが、男性向け製品の売り上げは増加している」と語る。

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パナソニックの男性用グルーミング製品ラインアップ。左のボディトリマー「ER-GK70」は「V・I・Oゾーンにも対応」とのことだ。

 同ブースで展示された製品は「ゲイの男性向け」という位置づけではない。ただし、ボディケアに気を遣う男性にアピールしたいと考えた場合、「東京レインボープライドはよい機会」(説明員)だという。「男性向けグルーミング製品はアピールする場所や機会が限られている。まずは、(ゲイの男性に限らず)製品を知ってもらうことに意味がある」と説明員は語る。

 一方、「LGBT向け」を前面に押し出した展示をしたのが、ホテルや旅行会社、不動産会社などだ。たとえば、2006年よりLGBTのツーリズムをサポートする団体「IGLTA (国際ゲイ&レズビアン旅行協会)」に加盟しているホテルグランヴィア京都は、LGBTのための仏前結婚式パッケージツアー商品を展開。ブースでは同性婚に関する相談も受け付けていた。

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ホテルグランヴィア京都のブース前ではモデルが来場者の関心を引こうと努力をしていた。

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 また、LGBTを対象にマンション購入支援を行っている不動産会社の「プリンセススクゥエアー」は、積極的に案内資料を配布していた。同社は、婚姻関係のない同性同士で不動産を購入する際の手続きや、金融機関への申し込みなどの相談に、自身もトランスジェンダーの専門社員が対応しているという。

【次ページ】山縣氏と杉山氏、「LGBT」という言葉がない社会を語る

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