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  • 2018/05/30

ジャック・マーが語る「AI時代の起業とビジネス」、どんな未来を予測しているのか

4月、アリババグループの創業者であるジャック・マー会長を招いた講演会が早稲田大学で行われた。質問者として登壇したのは、EAGLYS今林弘樹氏、早稲田大学理工学術院准教授でH2L共同創業者の玉城絵美氏、早稲田大学の葦苅晟矢氏の3名だ。講演では、創業時から信頼を得るためのポイントや、大学での研究をビジネスにする際に注意すべき点、アントレプレナーへのメッセージなど、さまざまなトピックで賑わった。

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アリババグループ 創業者 ジャック・マー会長

起業家に必要なのは、IQ、EQ、LQ

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 最初に質問をしたのは今林氏だ。今林氏が創設した「EAGLYS」は「サイバースペースをつくる」ことをビジョンに、企業がAIデジタルサービスを安心して使える環境づくりを目指している。

 まず今林氏は、「(AIなど)長期的な問題解決に取り組むビジネスでは、周囲の理解をどう得るべきか」と尋ねた。

「アリババの初期では、インターネットそのものが知られていないことから、批判も受けたと思います。潜在的なニーズへの製品やサービスをビジネスにする時、批判にはどう対応すれば良いのでしょうか」(今林氏)

 これに対してマー氏は、起業家にはIQ、EQ(Emotional Intelligence Quotient)、LQ(Love Quotient)が必要だと語った。

 頭の良さであるIQが高ければ成功はたやすいかもしれない。また、苦難を乗り越えた上で人とうまく付き合うことができるEQがあれば、大きく成長する可能性がある。そして、愛すべき人となって尊敬されるためのLQも持つべきだということだ。

 起業家には「ビジョンが必要」だとマー氏。そのビジョンは人と異なるものでなくてはならない。人と違うからこそ勝てるというのがその理由だ。

 そして「情熱」も大切だとマー氏は語る。

「自分がやることに対して確たる信念を持っていなければなりません。ベンチャーキャピタリストが信じてくれるからでも、資金があるからでもなく、『自分にしかできないことを実現できる』と思えることが、自信のサインです。自信があれば『自分を信じてくれ』と人に伝える時の説得力も増します」(マー氏)

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質問者として登壇したのは、EAGLYS今林弘樹氏、早稲田大学理工学術院准教授でH2L共同創業者の玉城絵美氏、早稲田大学の葦苅晟矢氏の3名

 長期的な問題解決に取り組むビジネスでは、最初から世界を相手に説得するのではなく、まずは自分の周りにいるチームのメンバーを引っ張ることをマー氏は勧める。時間と努力がビジョンの正しさを証明してくれることは、成功するビジネスに共通する鉄則なのだという。「明日すぐに結果が出る」とは思わず、5~10年後を見越して、自分が心底コミットできることに注力すべきだと語った。

 続いて今林氏は、「チームを信頼するためにはどうすべきか」を質問した。マー氏は「人を信頼したい場合には、まず自分が信頼を得ることが必要」と回答。マー氏は、創業期にチームに加わった人に対して、「我々みんなが一緒に戦おうとしているものを愛して、信じて、賭けてくれ」と伝えたそうだ。

 その回答を受けて今林氏は、「創業期に、自分たちが正しい方向に向かっていることをメンバーにどう伝えたか」も尋ねた。

 マー氏は毎日のように、将来について創業メンバーと語り、同じ考えを持つようにしていたという。人をキープしようとしなくても、ミッションとビジョンを最初からしっかり共有することで、人がとどまったのだそう。「人間としてお互い信頼感を持ってやる。それがすべてではないですか」とマー氏。

「次の10~20年で“食糧”は大きな問題になる」

 続いて質問のバトンを受け取ったのは、葦苅氏だ。葦苅氏は化学の修士課程に在籍しながら、2017年、食糧技術の会社である「ECOLOGGIE」を立ち上げた。同社では、世界で食糧危機が起きた時のために、栄養価が高く入手しやすい食糧の生産に取り組んでおり、昆虫ファーミングの技術を開発している。

 葦苅氏は「世界の食糧危機は本当に大変なものです。食糧危機の今後をどう思いますか? 特に、昆虫をタンパク源にする考えをどう思いますか?」という質問を投げかけた。

 マー氏はまず、「世界が将来的に抱えている問題を解決しようとしている」ことを評価し、「食糧の安全保障」の問題として同意した。

「日本は特に長寿命国家ですが、30年後にはデータとテクノロジーの進展によって、人々が120歳まで生きるようになるかもしれないと言われています。120歳まで生きることを想像してください。世界の人口は現在70億人ですが、それが150億人くらいになるのです。しかし、世界にはそれだけの人を満たす食糧リソースも、水も環境もありません。そういう大きな問題を抱えているわけです。日本は食糧問題を抱えていないかもしれませんが、次の10年、20年で食糧のセキュリティ(安全保障)は大きな問題になるでしょう」(マー氏)

 続いて、葦苅氏は「大学の研究をビジネスにする時に大事なポイントは何か?」という質問を投げかけた。中国の大学で6年間教鞭を執ってきた経験のあるマー氏は「大学の先生方は(ビジネスではなく)教育にフォーカスすべき」と答え、「大学の研究室はなかなか(ビジネスが)うまくいっていない」と指摘した。

 大学の一部の研究者は頭のなかにあるアイデアをビジネスにしようとするが、企業はどこに投資をすべきか、どこに需要があるのかを分かっている。そのため、研究室は(アリババのような)企業を支援していくべきではないかと問いかけた。

【次ページ】マー氏が考えるAI時代の人の役割

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