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  • 2018/06/06 掲載

汎用人工知能(AGI)の研究は今、どこまで進んでいるのか?--WBAI 山川宏氏

第3回全脳アーキテクチャ・シンポジウム(1)

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「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ」(WBAI:Whole Brain Architechure initiative)の主催により、「第3回全脳アーキテクチャ・シンポジウム」が開催された。WBAIは「脳全体のアーキテクチャに学び、人間のような汎用人工知能を創ること」を目指している団体だ。従来の特化型AIと、汎用型人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)の違いとは何か。そしてWBAIは、どんなアプローチでAGIを開発しようとしているのか。その際に求められる技術とは何か。同イベントの詳細を複数回にわたって紹介したい。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。


WBAIが目指すオープン・プラットフォーム戦略

 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(以下、WBAI)は、2030年を目途に人間のような汎用人工知能の構築を目指している団体だ。

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WBAI代表の山川宏氏
 では「汎用人工知能」(以下、AGI)とは、どのようなものなのか。これは現在の特化型人工知能と比べると理解しやすい。

 WBAI代表の山川宏氏は「特化型人工知能は、実用的な個別領域で知的に振る舞うものだった。一方のAGIは、幅広い問題に対する解決能力を学習によって獲得できるものと考えられている。特化型人工知能との最も大きな違いは、知のフロンティアを自ら開拓していけること。現在データがたくさんあるところの知識を獲得するのではなく、未知の状況について推論できる“汎用性”と、さらに知識を獲得をしようとする“自律性”が組み合わさり、外界情報を得て自ら知識を増やしていくものになるだろう」と語る。

 このAGIの定義に対し、WBAIの開発方針は「脳全体のアーキテクチャに学び、人間のようなAGIを創ること」。最近は神経科学の進展が著しく、脳への理解も急速に進んでいる。そこでWBAIは、脳器官の機能を機械学習モジュールに置き換え、それらを結合して認知アーキテクチャを構築するアプローチでAGIを創り出そうとしている。

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WBAIは、汎用AI(AGI)を最速で開発していくために「脳全体のアーキテクチャに学び、人間のようなAGIを創ること」を工学的な方針としている

「基本方針は“オープン・プラットフォーム戦略”。我々は、AGIの開発を促進するプラットフォーマーの役割を果たしたいと思う。AGI開発の多くは、AIや機械学習の技術者や研究者が担うことになる。彼らの力を結集し、協力できる場所を作ろうとしている」(山川氏)

AIを数多く並べても汎用人工知能とはいえない

 このオープン・プラットフォーム戦略では、神経科学のデータを取り込んで仮想環境で実証する。たとえばネズミが迷路を走り回るようなシミュレーションだ。一方で、この3年間、アーキテクチャのプロトタイプ・モジュールも開発してきた。

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WBAIはオープン・プラットフォーム戦略により、AIや機械学習の技術者や研究者の力を総合的に結集させ、脳型アーキテクチャのプロトタイプ・モジュールなどを開発してきた

 ただし、これだけでは足りなかったという。

「まずAGI開発について、どこに力点を置けばよいのかを考える必要があった。既存のAI技術をたくさん並べると、見た目では何でもできそうだが、AGIは何かのタスクに応じて、いろいろな組み合わせで動くもの。データが足りなくても、既存知識を柔軟に組み合わせて推論できる仕組み(技術X)が重要となる」(山川氏)

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AGIは、単純に従来の特化型AIを並べてスイッチさせただけでは実現できない。既存知識を柔軟に組み合わせて推論できる仕組みがキーテクノロジーの「技術X」になる

【次ページ】AGIに求められる「技術X」開発のアプローチ

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