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  • 2018/06/12

「AI研究のガイドとしての能力マップ」をなぜ作成するのか?--玉川大 大森隆司教授

第3回全脳アーキテクチャ・シンポジウム(3)

エンジニアが脳型アーキテクチャのモジュールを開発する際に、仕様書がないことが大きな課題となっている。これまでもAI開発のロードマップはあったが、エンジニアが利用するには粗すぎたという。こうした問題にWBAI代表の山川宏氏とともに取り組んでいるのが、玉川大学工学部 脳科学研究所 教授の大森隆司氏だ。大森氏は「AI研究のガイドとしての能力マップ」を開発。「能力=タスクと解決戦略(戦術)で定義される情報処理」と捉え、AIの基礎研究者や応用研究者に役立つ研究ガイドとしての能力マップの開発を急いでいる。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

AIの基礎研究者や応用研究者に役立つ、研究ガイドとしての能力マップの開発

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玉川大学工学部
脳科学研究所 教授
大森 隆司 氏
 エンジニアが脳型アーキテクチャのモジュールを開発する際に、仕様書がないことが課題の1つとなっている。ロードマップを作成し、ある程度の道筋をつけることは重要なことだ。

 そこで玉川大学工学部 脳科学研究所 教授の大森隆司氏は、山川氏らと「AI研究のガイドとしての能力マップ」の開発に取り組んでいる。従来のAI開発のロードマップは、エンジニアが利用するには粗すぎる。もっと幅広いフィールドと、現状の詳細な理解が必要だ。

 まず能力マップをつくる前に「能力とは何か?」という点から始める必要がある。同氏は「能力=タスクと解決戦略(戦術)で定義される情報処理」と説く。

 前提として何をさせたいのか、そのタスクは必要だが、それだけでなく戦術も重要。たとえば計算能力では、九九のように一桁の数表を覚えたり、テストに出ることがわかっている特定の数字の計算結果を丸覚えする記憶力もある。指折り数える場合は身体操作能力なども考えられる。

AIの基礎研究者や応用研究者に役立つ、研究ガイドとしての能力マップの開発

 同氏はナビゲーション領域を例に、能力マップについて説明した。ナビゲーションはタスクだが、能力を特定する戦術も同時に考える。

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ナビゲーション領域を例にした能力マップの例。機能要素を増やすと能力は高度化し、解けるタスク領域も増えていく。マップには参考文献や実装事例などの参照を示していく

 たとえば「地図なし」「強化学習」「推論」といった戦術に応じたタスクレベルが規定できる。そこで使われる機能モジュールを見ていくと「環境認識」「行動生成」「試行錯誤」などがある。

 それらを使うと地図なしナビゲーションができそうだ。各機能には「新皮質感覚系」「新皮質運動系」など脳のどこに対応するのか、判明しているものも多い。

 新しいモジュールが増えて、地図獲得の能力や時系列の学習の機能を身につけられれば、強化学習も戦術に加わる。さらに「仮想評価」「環境予測」「作業記憶」といった機能を付け加えると「推論」という戦術が可能になる。

 つまり、機能要素を増やすと能力は高度化し、解けるタスク領域も増えていく。それぞれの参考文献や実装事例などの参照をマップとして示せば、基礎研究者や応用研究者に役立つだろう。

「ただし、まだ試行錯誤などをしながら議論されている段階だ。そこで能力マップは“解決済”“先端”“未解決”という領域で色付けしながら、研究ガイドとして開発したい。今後、広げたいタスク領域は、物理領域ではナビゲーションのほか、物体操作、身体制御がある。認知領域としては“言語認識・理解”“対人インタラクション”などがあるだろう。基本的に調査研究となるので、多くのエキスパートの協力が必要だ。どの領域でマップをつくれるのか、また一つの能力でも多くの方法で実現できる可能性があるため、多重実装の可能性も考えられる。これらの課題を踏まえつつ検討していく」(大森氏)。

【次ページ】シンプルなゲーム課題によって脳の活動を計測

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