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  • 2018/06/21

「2種類のウェアラブル」と製薬業界の事例から読み解く、次世代ヘルスケア市場の行方

時代は「臨床グレードウェアラブル」

医療関連の「ウェアラブル」と聞いて思い浮かぶのは、「フィットビット」のような健康管理用ウェアラブルデバイス(多くが医療当局からの規制対象外)だろう。一方、医療に特化し、臨床試験や診断支援のために使われる医療・臨床グレードのウェアラブルデバイスも注目を集めている。本稿では一般消費者にはあまり馴染みがないが、今後医薬品開発の領域で活用が期待されている医療・臨床グレードのウェアラブルデバイスについて紹介したい。

フロスト&サリバン ジャパン ン・ディオン

フロスト&サリバン ジャパン ン・ディオン

フロスト&サリバンジャパン コンサルティングアソシエイト。ヘルスケア、金融、ICT業界において幅広いコンサルティングプロジェクトの支援経験を持つ。シンガポール生まれ育ち。東京大学にて教養学士取得。

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ウェアラブルデバイスは、コンシューマーヘルスだけでなく臨床の世界でも存在感を増している

「ウェアラブル(着用可能)なスマートデバイス」の定義

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 近年、「携帯可能」から一歩先を進んだ「着用可能」なスマートデバイスが流行している。特に、ヘルスケア業界においてこの潮流は顕著だ。

 「ウェアラブル(着用可能)なスマートデバイス」の定義は、「無線接続機能を備えたスマート電子デバイスで、衣類、アクセサリー、インプラント、装着物として身に着けられるもの」である。

 フロスト&サリバンの調査では、2017年に約400億ドルであるIoMT(メディカル関連のモノのインターネット)市場において、ウェアラブルはその20%以上を占める。フロスト&サリバンは、IoMTウェアラブル市場が、今後も年平均成長率30.4%で拡大していくと予測している。

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ヘルスケア関連ウェアラブル全体の6割以上を占めているコンシューマーヘルスウェアラブルは、28.4%の年平均成長率(2016-2021年)で伸びると見込まれている
(出典:フロスト&サリバン)

 ウェアラブル市場は、約80億米ドルの市場規模を誇り、主に健康・医療関連ウェアラブルにより支えられている。健康・医療関連ウェアラブルには、データの記録、分析、通信などのさまざまな機能を果たすセンサー技術が組み込まれており、使用者の健康管理に効果的だと言われている。

ウェアラブルの種類:「コンシューマーヘルスウェアラブル」と「臨床グレードウェアラブル」

 ウェアラブルといえば、よく思い浮かぶのが、フィットビットやサムスン・ギアのような個人の健康管理に向けたコンシューマーヘルスウェアラブルだろう。しかし、現在注目を集めているは臨床試験や診断支援のために使われる臨床グレードウェアラブルだ。ここでは、この2種類のヘルスケア関連ウェアラブルを紹介する。

■コンシューマーヘルスウェアラブル

 コンシューマーヘルスウェアラブルは、保健、フィットネス、スポーツなどのパーソナルヘルスアプリケーションを備えた一般消費者向けのウェアラブルデバイスである。これらのウェアラブルは政府保健機関により規制されていないため、新製品の市場投入が比較的速い。また、新規ベンダーの市場参入への障壁も低く、一般健康管理の用途で幅広く使われている。

■臨床グレードウェアラブル

 臨床グレードウェアラブルとは、米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration, FDA)の承認・許可や欧州連合(EU)の商品基準適合CEマークなど、世界/地方の規制当局/保健当局により認定されたデバイスと、そのサポートプラットフォームを指す。
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リストバンド型のウェアラブルを持つ人も最近では珍しくない
(写真提供:フロスト&サリバン)



 臨床グレードウェアラブルは、医療専門家の助言または医師の処方箋に基づいて使用されているものだ。

 現在臨床グレードウェアラブルはヘルスケア関連ウェアラブル市場の50%を下回る状態だが、精確性やリアルタイム情報共有などの機能が備わっている。そのため、診療・診断サポートおよび医薬品開発・臨床試験にこれから大きく活用されると見込まれ、33.2%の年平均成長率(2016-2021)で急速な成長が期待されている。

 臨床グレードウェアラブルは、スマート衣類、ウェアラブルリストバンド、スマートパッチ、スマートグラスなど、さまざまな「物理的形態」がある。

 以下からは、これから導入率が著しく上昇すると考えられる「医薬品の研究開発において疾患進行度のトラッキングと臨床試験の実施・管理に使用可能な臨床グレードウェアラブル」について紹介する。

製薬業界のウェアラブル活用例:医薬品開発のための疾患進行モニタリング

 医薬品の開発において、対象疾患の進行段階ごとの病態を理解することは、重要なステップだ。多数の患者を監視することにより、人間の目で見えないような病状が発見されたり、患者が抱えている苦痛を可視化したりすることができる。

 たとえばイスラエルの製薬企業であるTeva Pharmaceutical Industries Ltd.は、2016年よりインテルと連携し、ハンチントン病の治療開発に向けたOpen Pride HD(フェーズ2にある臨床試験)の一環として、疾患進行監視用のスマートウォッチを開発した。

 ハンチントン病は、脳の神経細胞の脱落・変性により、患者に進行性の不随意運動や認知力低下などの症状を起こす遺伝病である。症状が異質であり疾患進行も遅いため、治療による症状の緩和効果が計りきれず、これまでの医薬品開発の成功率が非常に低い疾患だった。Open Pride HDは、その解決のための試みの1つとなる。

 Open Pride HDではスマートウォッチの導入により、患者の行動および身体の機能を継続的に監視することができ、これまで取得できなかった連続値データを手に入れられる。このデータは、医師・介護者の参考にもなり、ハンチントン病の治療開発・創薬プロセスにも役立つ。

 こうした取り組みはハンチントン病に限らず、パーキンソン病、多発性硬化症(Multiple Sclerosis, MS)のような難病にも展開できるだろう。病気の進行度を長期にわたって監視し、医薬品・治療の開発に新たな観点を加えることが、今後ウェアラブルに期待される。現在、医療への物理的なアクセスが困難である患者に使われている遠隔医療と同じく、患者の行動、位置およびバイタルサインなどの情報を定期的に収集することにより、疾患への対応方法をより俯瞰的に扱えるようになる。

【次ページ】あらゆるクラスタがウェアラブル市場に殺到?

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