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  • 2018/07/10

農業ロボットはどう役立つ?現状と課題、最新事例を整理する

連載:世界のロボット新製品

少子高齢化が進み、深刻な労働力不足に直面する場面は多い。そんな中、もっとも深刻な業界の一つと言えるのが農業分野だ。海外需要の高まりもあるものの、国内の農業総産出額は停滞したままだ。そこで期待されるのが、ロボット、IoTなどを駆使した「スマート農業」だ。本稿では農業ロボットの現状と課題について整理する。

アスラテック 事業開発部 部長 羽田卓生

アスラテック 事業開発部 部長 羽田卓生

1998年にソフトバンク入社後、出版事業部に従事。2004年に、テレビ東京系番組「テレビチャンピオン」にて、初代ケータイ王になる。2006年より、ソフトバンクモバイルを経て、2013年のアスラテックの立ち上げ時より同社に参画。現在は、事業開発部門の責任者を務める。任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパンの代表幹事。WEB媒体での執筆や多数の講演・セミナーの講師など幅広く活動。直近ではSoftBank World 2017の特別講演に登壇。

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必要な時に必要な量だけ噴霧する、Automous Weeding Robot。ロボットの力で「超精密農業」を実現する
(出典:ecoRobotix

農業向けロボットとは?

 今回は、「農業」向けロボットをテーマにその最新状況を把握と分析を行う。まずは、この分野の定義を確認してみたい。筆者のロボットの分類に関しては、NEDOのロボット産業関連のレポートにある分類項目を基本としている。(参考:NEDO ニュースリリース

 その中で、サービス分野の「農業」の定義は、以下の通り。

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「農業」向けロボットの定義

 政府の分類では、農業、林業、水産というのが大分類になり、さらに農業の中には、酪農や畜産も含まれる。今回は、その「農業」にフォーカスを置いている。

 小分類の「土地利用型農業」は土地利用型農業(米、麦等)における作業を自動化・軽労化する遠隔操縦型や自律作業型のロボットを指す。「露地・施設栽培」は各種センサやアクチュエータの分散配置により、データモニタリング、環境制御、品質評価、仕分けなどの作業を自動化・軽労化するロボットを指す。「酪農・畜産」は授乳ロボット、農業物流は選果・選別ロボットだ。

 この「農業」分野は、同じくNEDOの市場予測では、2035年には、約2,600億円にもなるとされている。足元の市場規模の約400億円から、20年の間で6倍の成長を遂げることになる。

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農業用ロボットの将来市場予測

「農業」分野でロボットが期待される理由

 なぜこのように「農業」分野は期待されているのだろうか? いくつか理由があり、(1)高齢化が進行、深刻な労働力不足に直面、(2)海外需要が高まり農業総産出額9兆円超、(3)スマート農業による超省力・高品質 生産を実現への期待、などが挙げられる。

(1)高齢化が進行、深刻な労働力不足に直面

 日本の農業分野における高齢化と労働力不足は深刻だ。国の統計によると、基幹的農業従事者は、174万人。なんと、従事者の平均年齢は、66.5歳となっている。

 日本国の平均年齢は46歳で、その平均より20歳も年齢が高い。50歳未満での従事者は約10%に留まり、このままだと、深刻な労働力不足が起きることは避けられない状況だ。

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高齢化が進行する農業従事者

  (2)海外需要も高まり農業総産出額9兆円超

 農林水産省の資料によると、長期的に農業生産額は減少を続けていたものの、この数年は一転上昇に転じている。2016年度は、16年ぶりに9兆円台の回復を遂げた。

 人口減、高齢化に伴い内需は減少方向の予想となっているが、世界を見ると人口は増え続ける見込みだ。国内需要から世界需要へシフトすることが、農業の成長のひとつのカギを言える。

 以下の4つのグラフは「平成29年度⾷料・農業・農村⽩書の概要」より抜粋。
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(3)スマート農業による超省力・高品質 生産を実現への期待

 ここまで、農業を取り巻く環境を解説してきたが、労働力不足に対する生産性向上が最大の問題だ。当然、政府・農業団体などはこの問題に対して各種施策を行っている。その中でロボットを主軸に置いた課題対策が、「スマート農業」だ。

 このスマート農業は、農林水産省が、2013年に立ち上げた、「スマート農業の実現に向けた研究会」が、その検討の主体となっている

 「スマート農業の実現に向けた研究会」は、ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業(スマート農業)を実現するため、ロボット技術利用で先行する企業やIT企業等の協力のもと、検討を行われている。

 「スマート農業の実現に向けた研究会」検討結果の中間とりまとめが、2014年に発表されており、その中で、ロボット技術の利用に関するイメージが描かれている。

1超省力・大規模生産を実現トラクター等の農業機械の自動走行の実現により、規模限界を打破
2作物の能力を最大限に発揮センシング技術や過去のデータを活用したきめ細やかな栽培(精密農業)により、従来にない多収・高品質生産を実現
3きつい作業、危険な作業から解放収穫物の積み下ろし等、重労働をアシストスーツにより軽労化、負担の大きな畦畔等の除草作業を自動化
4誰もが取り組みやすい農業を実現農機の運転アシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等により、経験の少ない労働力でも対処可能な環境を実現
5消費者・実需者に安心と信頼を提供生産情報のクラウドシステムによる提供等により、産地と消費者・実需者を直結

(出典:農林水産省 スマート農業に向けた研究会)


 その中でも、(1)超省力・大規模生産を実現と、(3)きつい作業、危険な作業から解放が、ダイレクトにロボット技術に期待される項目をなっている。これらの施策におけるゴールイメージは、下記の通りだ。

1農業構造の改革を技術でサポート先端技術を活用し、超省力化によりこれまでにない大規模経営が実現
2やる気のある若者、女性などが農業に続々とチャレンジ農作業の技術習得が容易となり、やる気のある若者、女性など農業の新たな担い手・労働力を確保
3担い手のビジネスチャンスを拡大経営者が販路拡大や新商品開発に取り組める環境を構築することにより、経営が多角化・発展
4品質と信頼で世界で勝負する農産物を生産高品質で信頼される農産物を安定的に生産することで、世界に冠たるジャパンブランドを世界に発信・グローバル・スタンダード化
5新たなビジネスの創出・展開ノウハウのデータ化・知財化により農業を知識産業化させ、我が国農業のノウハウの輸出のほか、農機・資材等の農業周辺産業をソリューションビジネス化

(出典:農林水産省 平成26年3月28日「スマート農業の実現に向けた研究会」検討結果の中間とりまとめ)


 このようにスマート農業を軸に、農業の生産性、規模を向上し、世界に対して、その日本の農産物の品質で勝負しようとする姿が表れている。

「農業」向けロボットの現状

 ここからは実際のロボットの状況を説明する。

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「農業」向けロボットのカテゴリ別数

 上記のグラフを見るとわかるが、用途カテゴリ別の比率は、その土地利用型農業と、露地・施設栽培向けで、90%を超える。畜産向けロボットなどは、3機種しかまだ発表されていないのが実情だ。

 では、次ページから具体的なロボット製品を見ていきたい。今回は、4機種をピックアップした。

【次ページ】超精密農業を実現する農薬散布ロボット

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