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  • 2018/08/07

ライドシェア・カーシェアで「クルマの消費」という財源を失うと日本はどうなる?

連載:クルマの進化が変える社会

カーシェア、ライドシェアなど、シェアリングビジネスがクルマ業界に押し寄せている。しかし、シェアリングビジネスは経済を活性化するかと言われれば疑問が残る。そこで今回は、クルマにおけるシェアリングビジネスの可能性と、クルマという耐久消費財を失ったとき、日本は個人消費をどうやって稼いでいけるのか考えてみたい。

自動車ジャーナリスト 高根 英幸

自動車ジャーナリスト 高根 英幸

1965年、東京都生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。理論に加え実際のメカいじりによる経験から、クルマのメカニズムや運転テクニックを語れるフリーランスの自動車技術ジャーナリスト。最新エコカーから旧車まで幅広くメカニズムを中心に解説を行っている。WEBでは『日経テクノロジーonline』(http://techon.nikkeibp.co.jp/)や「MONOist」(http://monoist.atmarkit.co.jp/)、『Response』(http://response.jp/)などに寄稿。近著は『カラー図解エコカー技術の最前線』サイエンス・アイ新書)。『図解カーメカニズム パワートレーン編』(日経BP社刊)日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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ライドシェアのモデルケースの一つである、かしわ乗合ジャンボタクシー。コミュニティバスの縮小版で、均一料金で千葉県柏市の住宅地域を巡回している。コミュニティバスでも採算が取れない地域の最善策が、このジャンボタクシーということか。千葉県柏市では「カシワニクル」という予約型の乗り合いタクシーも運行している。近未来のモビリティを予想するモデルケースも言える地域だ

ライドシェアとカーシェアはまったく異なる性質のモビリティ

 前回解説したカーシェアリング(カーシェア)は、クルマ自体を時間単位で借りるレンタル型の商品だが、それに対しライドシェアはタクシーなどをシェアして利用する、またマイカーでも長距離移動の同乗者を募って、交通費を分担するという共同使用型のモビリティである。

 これまで日本では、タクシーやマイカーは極めてパーソナルな使われ方に特化した乗り物だった。マイカーはもちろんのこと、タクシーも貸し切りのモビリティという位置付けである。

 ここ数年、増えつつあるライドシェアの1形態が「乗り合いタクシー」だ。現在日本で運行している乗り合いタクシーの多くは空港行きの予約制である。コミュニティバスよりも小さいハイエースなどが使われることが多いが、利用人数の規模がさらに小さい場合は、通常のセダン型タクシーも用いられる。

 また住宅地では駅まで乗り合いタクシーが普及している地域もあるが、それは通勤時のバスの代わりであり、一定時間の特定の経路だけで機能するライドシェアだ。

 今後、政府が過疎地などの交通手段として普及を図ろうとしている乗り合いタクシーは、やはり予約制で病院や商店街など特定の場所を巡回するように利用するもので、すでにいくつかの自治体が導入し始めている。

なぜ日本でのライドシェア定着が難しいのか

 首都圏など都市部ではシェアサイクルが急速に普及の兆しを見せている。これは借り出した場所とは異なるステーションに返却できる自由度と、パーソナル性もあって利用者を増やしている。自転車の場合、ステーション以外でも駐輪可能な場所も豊富なため、雨天時以外は都市部の移動には非常に効率的なモビリティと言えるだろう。

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シェアサイクルは都市部の間で急速に普及している。スマホで借り出し、目的地近くのステーションで返却できる手軽さはカーシェアリングにはない魅力だ。カーシェアもそれくらい自由に使い返却できるようになれば、公共機関的な役割まで担えるようになる

 一方でライドシェアはまだシステムそのものが未成熟であるだけでなく、ここ日本では定着する可能性すら怪しい。それはカーシェアやシェアサイクルと、ライドシェアの間には決定的な違いがあるからだ。

 というのも、カーシェアやシェアサイクルは利用者が運転者(とその家族や知人など)だが、ライドシェアは移動空間を他人と共有することになる。いわゆるパーソナルスペース、心理的距離感が確保されているかが大きな違いなのである。日本人は特にこのパーソナルスペースに敏感であり、普通の乗用車のスペースを他人と共有することはかなりのストレスとなることが想像できる。

 それでもコミュニティバスをさらに小型化したような専用車両でなら、日本でもライドシェアは成立するだろう。トヨタが発表したe-paletteは、まさにそうしたモビリティに成り得る。ただしその場合タクシーよりも割安だが、ラストワンマイルの問題が残る可能性もある。

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トヨタが発表したモビリティサービス専用EVのコンセプトカーである「e-Palette Concept」。基本的な構造は同一としながら、内部の仕様を変更するだけで物流、移動販売車、ライドシェアなどさまざまな用途に対応する自動運転車。単なる交通機関ではなく、新しいビジネスモデルを生み出す媒体になり得る存在だ

カーシェアは自動車業界の破壊者になるのか

 カーシェアやレンタカーを利用するユーザーが増えるということは、レンタカーが自動車業界に対して担っていたもう一つの役割、新車登録台数への貢献も難しくなっていくことになる。

 レンタカーやカーシェアが増えるということは、個人でクルマを購入するユーザーが減ることを意味する。その分、新車の販売台数が減るだろうし、レンタカーやカーシェアの登録台数は一時的に増えるだろうが、使用済みのレンタカーの売却が急増すれば、現在のように毎年のようにレンタカーを入れ替えるようなやり方は、難しくなっていく可能性がある。

 仮に走行距離の少ない使用済み車を大量に中古車市場に供給することになれば、今度はそれが新車の販売を阻害する要因にすらなる。自動車メーカーにとってはジレンマと言える状況だろう。

 シェアリングによってクルマの稼働率は5倍になるという予測もある。それによって代替えが進む、という考えもあるようだが、筆者はそうは思えない。カーシェアリングの利用が増えるということ、1台のクルマが5倍も使われるということは、見方を変えればクルマの販売台数はそれだけ大幅に減り、タクシーの需要も減ることになる。

【次ページ】 週末以外眠っていた乗用車が日本の経済を回してきた?

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