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  • 2018/09/10

中国 製造業のデジタル戦略(前編):独インダストリー4.0型発展を目指す「中国製造2025」

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

中国は「中国製造2025」と「互聯網+(インターネットプラス)」という2つの国家政策で第4次産業革命の動きを加速しています。このうち、中国製造2025はドイツのインダストリー4.0型、インターネットプラスはGAFA (Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表される米国のシリコンバレー型の発展を目指したものと考えられ、この2つを同時に実践しようとしていることが特徴といえます。そこで、2回に分けて中国のこの国家政策の動きを解説します。前偏ではドイツのインダストリー4.0型発展を目指す「中国製造2025」を取り上げます。

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ インダストリアルソリューション事業部 担当部長
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げに貢献。現在は東芝デジタルソリューションズにてインダストリアルIoTの事業・ビジネスの企画を担う。一般社団法人 インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ エバンジェリスト。一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 執行委員。ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)WG1 IoT による製造ビジネス変革メンバーなどをつとめる。

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中国製造2025はどう進展してきたのか?

イノベーション推進による経済成長モデルの構造転換

 中国の政策においてイノベーションが掲げられたのは、1999年に国務院が発表した「技術革新の強化、ハイテクの発展、産業化の実現に関する決定」にまでさかのぼります。

 当時は、イノベーションは技術革新により実現されるという捉え方が世界的にも一般的でした。

 この前提は、科学技術力を高めれば、その技術を応用した製品の付加価値も高まるというものであり、科学技術向上のためのインプットを増加すればイノベーションという価値が増加するということが想定されていました。

 中国では、その後も数多くの科学技術発展政策が打ち出され、研究開発費のGDP比率、特許数や論文数など一国の「イノベーション力」を比較する指標で急速に世界のトップクラスに追いついてきました。

 しかし、リーマンショック後の2010年頃から欧米諸国が製造業の国内回帰を進めたことで、中国においては国外企業の投資による技術獲得の機会が減少することになり、また、中国国内が豊かになるにつれ、国際貿易で比較優位が保てなくなってきました。

 こういった背景の中、従来の経済成長モデルがまだ機能しているうちに構造転換を進めることを目的に立案されたのが「中国製造2025」なのです。

中国製造2025と切り離せない一帯一路

 中国製造2025は、労働集約的な製造業(製造大国)から、情報技術(IT)などを活用した付加価値の高い製造業(製造強国)へ移行するための国家政策です。2015年3月に開催された全国人民代表大会(全人代)で新たな方針として示され、2015年5月にロードマップが公表されました。

 中国では2013年に習国家主席が提唱した経済・外交圏構想である「一帯一路」(OBOR:One Belt, One Road)により、中国西部・中央アジア・欧州を結ぶ「新シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国沿岸部・東南アジア・インド・アフリカ・中東・欧州と連なる「21世紀海上シルクロード」(一路)との間の新たな経済圏の確立や関係各国間の相互理解の増進などを目的に、インフラ整備や通商拠点の整備が進められています。

 中国製造2025により製造業を強化する戦略もこれらと密接に絡んでおり、輸出品目の高付加価値化に向けたスピードアップを図ることで、輸出強化へつなげる狙いがあるとみられています。

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「一帯一路」地図
(出典:平成29年版 通商白書(経済産業省),2017年6月)
 中国製造2025は「5つの基本方針」と「4つの基本原則」を掲げ、「3段階戦略」により、製造強国に向けた戦略目標の実現を図っています。

 まず、5つの基本方針とは、「イノベーション駆動」、「品質優先」、「グリーン(環境保全型)発展」、「構造の最適化」、「人材本位」のことであり、4つの基本原則とは、「市場主導・政府誘導」、「現実立脚・長期視野」、「全体推進・重点突破」、「自主発展・協力開放」のことです。

 3段階戦略では、第1段階では2025年までに製造強国の仲間入りをし、第2段階では2035年までに製造強国の中堅水準(平均で)に達し、第3段階では新中国成立100周年(2049年)に総合力で世界の製造強国のトップになることを目指しています。(以下の表に具体的な主要指標を記載)

2020年・2025年製造業主要指標
類別指標2013年2015年2020年2025年
イノベーション能力一定規模以上製造業企業(国有企業または売上500万元以上の企業)の研究開発経費内部支出の主要業務収入に占める割合(%)0.880.951.261.68
一定規模以上製造業企業の業務収入1億元当たりの有効発明特許数(※1)(件) 0.360.440.71.1
品質・効率製造業品質競争力指数(※2)83.183.584.585.5
製造業付加価値率の上昇--2015年比2パーセント増2015年比4パーセント増
製造業労働生産性の上昇率(%)--7.5%前後(「十三五」(第13次5カ年計画、2016―2020)の平均成長率)6.5%前後(「十四五」(2021―2015)の平均成長率)
産業化・情報化融合ブロードバンド普及率(※3)(%)37507082
デジタル化研究開発設計ツール普及率(※4)(%)52587284
カギとなる工程のデジタル制御化率(※5)(%)27335064
グリーン発展一定規模以上の単位工業付加価値当たりのエネルギー消費の減少幅--2015年比18%減2015年比34%減
単位工業付加価値当たりの二酸化炭素の排出量の減少幅--2015年比22%減2015年比40%減
単位工業付加価値当たりの水消費量の減少幅--2015年比23%減2015年比41%減
工業固体廃棄物総合利用率(%)62657379
※1 一定規模以上製造企業の主要業務収入1億元当たりの有効発明特許数=一定規模以上製造企業の有効発明特許数/一定規模以上製造企業主要業務収入.
※2 製造業の品質競争力指数は,中国の製造業の品質の総体レベルを反映する経済技術総合指標であり,品質レベルと発展能力の2つの方面の12項目の具体的な指標から得られたものである.
※3 ブロードバンド普及率は,固定ブロードバンド世帯普及率を採用した.固定ブロードバンド世帯普及率=固定ブロードバンドユーザー世帯数/世帯数.
※4 デジタル化研究開発設計ツール普及率=デジタル化された研究開発設計ツールを応用した一定規模以上企業数/一定規模以上企業総数(関連データはサンプル企業3万社をもとにしている,以下同様).
※5 カギとなる工程のデジタル制御率は,一定規模以上工業企業のカギとなる工程のデジタル制御化率の平均値を指す.
(出典:「中国製造2025」の公布に関する国務院への通知の全訳、国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究開発センター 海外動向ユニット、2015年7月25日)


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