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  • 2018/09/21

北京が世界2位のユニコーン都市になった、ホントの理由

連載:中国への架け橋 from BillionBeats

2012年からの6年間に誕生したテック系ユニコーン企業の数は、世界に150社。そのうち、ベンチャーの本家本元、シリコンバレー生まれが57社。一方、北京生まれは29社。続くニューヨークが13社である。シリコンバレーに比べ、数こそ半数だが、北京はいまや世界第2のユニコーン企業輩出都市となった。その核は、中国全土から理系の秀才が集まる清華大学だ。清華大学MBAで学んだ筆者が北京のエコシステムと清華大学の果たしている役割を考察し、さらに同大学経済管理学院副教授スティーブン・ホワイト氏にインタビューを行った。

佐野史明+BillionBeats

佐野史明+BillionBeats

BillionBeats(http://billion-beats.com)は、ニュースにならない中国人のストーリーを集積するソーシャルプロジェクト。 ブロガーの佐野史明は1984年生まれ、08年東京大学農学部卒業。双日勤務を経て中国のスタートアップ北京国能環科環保科技有限公司に参画。17年清華大学MBA取得。東京大学と清華大学とのアントレプレナーシップ交流プロジェクトをコーディネート。18年8月より清華大学傘下のインキュベーション施設・Tus Starの日本顧問

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中国全土から理系の秀才が集まる、清華大学
(写真:Imaginechina/アフロ)

ユニコーンを多数輩出、北京の清華大学

 フードデリバリー最大手・美団点評、300億米ドル。ショートムービー編集アプリ・快手、30億米ドル。顔認証技術ベンチャー・Megvii、25億米ドル。いずれも直近の企業価値だ。

 美団点評は2018年9月に香港でのIPOを計画していて、国内外の投資家の注目が集まる(編集部注:2018年9月20日上場)。創業者の王興は79年生まれ。清華大学の電子工学を卒業後、シリアルアントレプレナーとして何度も起業を経験したのち、2010年に清華大学の向かいにある「華清嘉園」というアパートで美団を創業した。

 現在、中国の都市生活に欠かせないインフラとなったフードデリバリーは、大手3社がシェアを競っているが、2017年、シェアの半数を美団点評が占め最大手となった。

 ショートムービー編集アプリ・快手の創業者・宿華は82年生まれだ。清華大学のソフトウェアエンジニアリングの博士課程を中退後、2011年に起業し、2013年に華清嘉園の一室を他の2社とシェアする形で入居した。同社のサービスの人気は、日本でも知られているTikTokと肩を並べるほどである。

 顔認証技術ベンチャー・Megvii 創業者の印奇は88年生まれだ。清華大学のAI特別クラスを卒業し、2011年に同級生と起業した。2015年にドイツで開かれたIT博覧会で、アリババのジャック・マーがメルケル首相に顔認証による決済を披露したが、その技術はMegviiの技術に基づいている。2016年、フォーブス「アジアを代表する30歳未満の30人」に選出。2017年にはAI企業を代表して李克強総理との座談会に参加した。

 わずか数年でユニコーン企業へと駆け上がっていった3社の創業者は全員30代。彼らはみな、「清華大学」の卒業生だ。

清華大学出身者のユニコーン企業例
企業名 創業者 事業概要 300億米ドル
美団点評 王興
79年生まれ、清華大学電子工学卒、デラウェア大学博士課程中退
フードデリバリーおよび飲食店口コミサイト 300億米ドル
快手 宿華
82年生まれ、清華大学ソフトウェアエンジニアリング学院卒、博士課程中退
ショートムービー編集およびライブストリームアプリ 30億米ドル
Megvii 印奇
88年生まれ、清華大学姚期智実験班卒、コロンビア大学博士課程中退
顔認証技術及びサービス 25億米ドル


コンピューターサイエンスでは世界2位、人工知能でも上位に迫る

 清華大学は、北京市海淀区に位置する1911年創立の大学で、北京大学と双璧をなす、中国の最高学府のひとつだ。

 コンピューターサイエンスの世界大学ランキング(CS Ranking 2016年から2018年9月のデータに基づく)では米国・カーネギーメロン大学に次ぐ2位にランクインした。

 米国で最も影響力がある大学ランキングを発表するU.S. Newsによれば、清華大学はコンピューターサイエンスとエンジニアリング学部では米国MITを抑えて世界1位(2017年10月24日発表)となった。もはや世界一のテック頭脳が結集していると言ってよい。

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人工知能領域トップ20大学
 また、テンセントが発表した人工知能に関する人材白書(2017年12月1日発表)によると、人工知能領域の世界トップ20大学のうち13校が米国の大学だが、米国に続き中国から3校が入り、そのうちの2校が清華大学と北京大学となっている。

 だが、清華大学の特徴は、こうした優れた頭脳を集めていることだけではない。彼らの優れた頭脳に対する投資をはじめ、ベンチャーとしてビジネスモデルを確立させるためのサポートに官学をあげて力を入れている戦略こそ、清華大学がユニコーン輩出都市・北京の核である最大の理由である。

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主な都市別のベンチャー投資額(億円)(2016年)

(出典:「2016年中国大衆創業万衆創新発展報告」をもとに作成)
 この清華大学をはじめ中国の名門大学が集まる北京の中関村エリアは数年前まで「北京の秋葉原」と呼ばれる電気街だったが、この数年で様変わりしている。

 北京市政府が主導して、イノベーションエリアへと改造し、投資とインキュベーションの集積地へと変貌を遂げた。中関村の55万㎡(東京ドーム12個分)がイノベーションエリアに改造されたとされる。特に大学の研究成果の実用化を推進するために、政府主導で清華大学、北京大学、中国科学院などにファンドを設立、その数は約40本、140億元(2,296億円)以上とされ、イノベーションを推進する源となっている。

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テクノロジー関連のユニコーン企業数

出典:CB Insights_Global Tech Hubs Report)


 このように政府主導の強力な起業支援と世界一のテック頭脳が集結した結果、中国国内のVC投資のおよそ3割を北京(7,524億円)が占めるまでになった(上海3,725億円の2倍)。なお、北京生まれのユニコーンは29社。中国を代表する経済都市・上海生まれは11社である。北京はユニコーン企業数世界2位の都市である。

【次ページ】担当教員に聞く、清華大学のアントレプレナー教育の実態

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