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  • 2018/10/04

岩下直行氏の2030年予測:人口減には「キャッシュレス」で備えよ

連載:2030年への挑戦

初代日銀FinTechセンター長を務め、現在は京都大学公共政策大学院でFinTechの研究と後進の育成を行っている岩下直行氏は、社会課題が山積する未来に向けてどんなビジョンを持っているのか。ビットコインの取引に伴うエネルギー消費量に注目しているという岩下氏に、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)が目標にしている2030年をどう見ているかを聞いた。

聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 山田竜司

聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 山田竜司

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京都大学公共政策大学院 教授 岩下 直行氏
初代日銀FinTechセンター長を務め、現在は後進の育成に注力している

ローマクラブの提言は外れていた

――SDGsで提示されているような持続可能社会を2030年までに実現するのは、現時点から見ると困難な印象があります。岩下さんは食糧難や人口増などの社会問題を、どうご覧になっていますか?

岩下氏:1972年にスイスのシンクタンクであるローマクラブが「資源と地球の有限性」について、マサチューセッツ工科大学とともに「成長の限界」というレポートを発表したことがありました。あの提言はほぼすべて外れました。提言があったから世の中が良くなったという言い方もできますが、その後の事実と照らし合わせると、誤った結論が出ていたと思います。

 たとえば、ローマクラブのレポートでは、「汚染」が一つの変数としてずっと増えていくことになっていましたが、それが何の汚染かはあまり考えられていませんでした。

 化学物質が入った排水であれば、日本の高度成長期やその後の中国など世界中で見られ、批判が高まり、改善されていきましたよね。排気ガスであれば、規制が強まり、電気自動車など改善をしたものが現れました。でも、ローマクラブの提言の時点では、将来がそこまで見えていなかったのです。

 現在、世界的な潮流として、SDGsのために石炭火力の全廃を目指したり、ガソリン車から電気自動車に切り替えたりする動きが出ることは、イノベーションを生み出すもとになるので悪いことではありません。

 けれども、気候変動の原則は実は分からないのです。今よりも二酸化炭素が多かった時代は過去にあったはずで、それでも地球が滅んでいないところを見ると、二酸化炭素が減少するメカニズムが存在しているという見方もできる。

 ただ、人類の活動が過去にないような勢いで変化を生じさせ、急激なショックを地球に与えているかもしれないということは、大いに考えるべきことなのかもしれません。

ビットコインによるエネルギー消費

――岩下さんが特に注目されているトピックはありますか?

岩下氏:私がこういう話をするときに思い出すのは、ビットコインの環境問題です。調査レポートによると、2017年の年末以降、ビットコインのマイニングに伴うエネルギー消費量がすごい勢いで増えている。今夏は60~70テラワットアワー/年くらいになっていて、スイスやチェコくらいの国1つ分の年間電力消費量に、ほぼ匹敵すると言われています。

 ビットコインの値段が下がればエネルギー消費量も減るかと思っていましたが、変わりませんでした。仮想通貨全体の規模は、この1月~3月くらいに90兆円から30兆円まで落ち、今は30兆円くらいになっています。ピーク時の3分の1ほどです。

 それでもマイニング用のASICという半導体チップに投資してしまった以上、機械を稼働させ続けることが経済合理的なのですよね。放っておいたら初期投資が無駄になってしまうわけです。今のビットコインの価格で電力代をまかなえるなら、マイニングを続けるしかありません。その結果、マイニングの難易度は下がらず、電力消費も増え続けているのです。

 ビットコインの値段が一定金額以下になったら、マイニング報酬よりも電気代の方が高くなるので、世の中のマイニングファームは業務を停止するでしょう。それは地球環境にとってはベターな改善ですが、ビットコインにある程度ポジティブな値段がついている限りは、電力消費は高い水準で横ばいになります。

 これはビットコイン以外でも言えることです。一度資本を投下したものを停止させるのは経済合理的ではないので、ずっとその消費を続けることになります。

 たとえばデータセンターの場合、一度作られてそこでデータ消費が始まったら止められません。AWSのワークステーションはほぼずっと動き続けています。

 なぜかというと、AWSのクラウドマシンを止めると、マシンがアイドル化してAmazonには無駄だからです。値段を下げてでも使わせるインセンティブがあるということです。

 我々が直面している問題は、現在あるものへのエネルギー消費が良くないというコンセンサスができたとしたら、それをどうするかという話です。

 これまでは、科学メカニズムに基づいて上手にコントロールすれば、消費量は徐々に減少すると思われていましたが、IT関連ではそれは通用しません。もう少し直接的に止める必要があるのかもしれません。

【次ページ】地球温暖化は本当に深刻な問題なのか

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