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  • 2018/10/24

ボトムアップなデジタル化実装手法「IVIM」とは? IVI 西岡教授が解説

IVI公開シンポジウム2018レポート

設立4年目を迎えた、一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)は2018年10月11日にIVI公開シンポジウム2018 -Autumn-を開催しました。本シンポジウムにおいては、業務シナリオワーキングの中間報告、先進研究分科会の中間報告、産業データ共有促進事業費補助金「製造プラットフォームオープン連携事業」のプロジェクト中間報告などのほか、IVI 西岡 靖之理事長(法政大学 教授)より、新たにIVIが開発し提唱するボトムアップなデジタル化の実装手法である「IVIM 」(Industrial Value Chain Implementation Method)」の発表が行われました。今回はこのシンポジウムのいくつかのトピックスについて報告します。

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ インダストリアルソリューション事業部 担当部長
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げに貢献。現在は東芝デジタルソリューションズにてインダストリアルIoTの事業・ビジネスの企画を担う。一般社団法人 インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ エバンジェリスト。一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 執行委員。ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)WG1 IoT による製造ビジネス変革メンバーなどをつとめる。

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IVI公開シンポジウム2018-Autumn-会場の様子
(写真:筆者撮影)

IVI公開シンポジウムについて

 第4次産業革命における日本の取り組みを加速させることを目的に2015年6月に設立されたIVIは、設立以降毎年2回ずつ、秋(10月)と春(3月)にシンポジウムを行っています。

 2016年度までは秋、春ともシンポジウムを東京で開催していましたが、2017年度より秋のシンポジウムは地方都市で行っており、2017年秋は名古屋で行われました。今回のIVIシンポジウムは、初めて関西地区の大阪(ナレッジシアター)にて開催されました。

 秋のシンポジウムでは例年「業務シナリオワーキング(WG)活動」の中間報告が行なわれます。2018年度は19のWGの中間報告が「クラウド技術による新世界」「高効率こそ製造業の生きる道」「リアルなデジタルで全体最適」「大量なデータで活路を見出せ!」の4テーマに分けて行われ、それを支えるIVIプラットフォームの募集も行なわれました。

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IVIの2018年度業務シナリオ一覧
(出典:IVI)


 また、今年度より新しい技術やソリューションに関する研究を行う(実際の機能検証や適用先の検討はこれから、というものが対象)目的で15の先進研究分科会が立ち上げられ、その中から代表して2つの分科会が取り組みの紹介を行いました。

基調講演:「京都試作ネット」の取り組み

 シンポジウムの冒頭では、経済産業省 近畿経済産業局 森 清局長からの挨拶に続き、京都試作ネット代表理事である最上インクス代表取締役社長(CEO)の鈴木 滋朗氏が基調講演を行いました。

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京都試作ネット 代表理事/
最上インクス 代表取締役社長(CEO)  
鈴木 滋朗氏

 「京都試作ネット」は、「試作」を事業とし「顧客の創造」をその目的と位置付けて活動する京都の中小企業の連携組織です。

 京都の製造業の成長を支えてきた中小企業の経営者が下請け形態からの脱却を目指して、経営者の集団勉強会を発足させ、インターネットによる営業活動を柱とする団体である「京都試作ネット」を立ち上げました。

 既存商品を持たない中小企業がピーター・F・ドラッカーの学びを通して、イノベーション、マーケティングを実践するための共同組織を実現し、経済産業省 新連携事業 第一号モデルに認定されました。

 当初10社からスタートした勉強会で「それぞれの企業の強み」を再発見しつつ事業計画を策定し、「試作」業務に特化し京都を試作の集積地にするためのビジネスモデルを立案しました。

 「京都試作ネット」は参加企業の自主自立を原則としており、マーケティング・イノベーション・学びの機会創出と実践を行う「学習する連携組織」を目指しています。勉強会に終始する企業連携組織は、次第に参加者が減少していきます。ビジネスにつながる取り組みでなければ企業連携団体の価値はなく、継続することは難しいでしょう。

 「京都試作ネット」では、新しいメンバーの入会時は、共通言語(ピーター・F・ドラッカーのマネジメントに関する知識)に関する講座を受講しつつ、半年程度の試用期間を設け面接も行いながら加入の可否を決めます。組織の根幹は設立当初から一貫してピーター・F・ドラッカーのマネジメントであり、以下の「5つの質問」に基づいて事業活動を行うことです。

  1. 我々の使命は何か?
  2. 我々の顧客は誰か?
  3. 顧客は何を価値あるものと考えるか?
  4. 我々の成果は何か?
  5. 我々の計画は何か?

 競争の激しい製造ビジネス領域ではなく、試作段階のビジネスに特化することで高付加価値ビジネスを狙い、顧客からの相談や問合せに対し2時間以内にレスポンスすることを徹底し、これをセールスポイントにしています。

 このようなレスポンスは、対応者を会員企業の挙手(自薦)、受付による振り分け、または幹事企業による選定などの方法で割り振ることで遵守されます。さまざまな分野の技術を必要とする試作品の製作においても、それぞれ専門分野の加工業者の連合体として一括で引き受けています。そのため、顧客は内容によって別々に発注する必要もなく、手間や時間も省くことができます。こういったベネフィットを顧客に与える取り組みも「京都試作ネット」の特長といえます。

 こういった企業連携活動について、鈴木氏は“バケツの水は放っておくと腐るが、まわし続ければ腐らない。”という言葉を用いて表現されていました。また、「京都試作ネット」による売上が参加企業の売上の5%であったとしても、新しい風が入ることで「企業の活性化」につながります。「京都試作ネット」から見ると、「活性化のネタ」が重要であり、「離陸していく仲間の企業を間近で見る(滑走路横で並んで見る)躍動感」が与える気付きや価値が重要です。

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離陸する企業を間近で見る
(出典:京都試作ネット)

 あらゆるものの進化においては「変化のフロントに立つ」ことが重要です。連続変化の先には未来が無く、それを打破するためには「ものづくりの枠組みを変える」ことが必要です。「京都試作ネット」の今後の目的の1つは、欧米からの受注を得ていくために海外展示会などへの積極的な展開を行い、これを通じて「Shisaku」を世界の共通語にすることです。

 また、VCファンドの運営を行う「Makers Boot Camp」と連携し、スタートアップと連携した新ビジネスを進めています。

 この目的はハードウェアスタートアップの「試作」と「量産化」の間にある「死の谷」(量産化の壁)を超える量産設計/量産試作を支援することにあります。

 「京都試作ネット」のこれまでの取引相手は大企業が多く、事業への取り組みの決定の速さや、決めたことをその場で実行に移していく速さなどスタートアップの仕事のスピード感や進め方に戸惑いがありました。スタートアップ企業は量産化の経験がほとんどなく、「死の谷」を超えるためのアドバイスやサポートが欲しいとの思いがあり、これに「京都試作ネット」がどう応えるかがビジネスのキーファクターになります。

 スタートアップと「京都試作ネット」の間に入ってプロジェクトマネージメントを行なう動きを「Makers Boot Camp」が担うことで、両社の強みがマッチングされ、大企業の出資なども受けながら、スタートアップのプロダクトデザインに基づく量産試作のサポートなどの取り組みを進めています。

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ハードウェアスタートアップの「死の谷」
(出典:京都試作ネット)

ゆるやかな標準を用いた製造プラットフォーム連携の取り組み

 IVI理事・幹事である堀水 修氏(日立製作所)からは、“ゆるやかな標準を用いたプラットフォーム連携によるオープン&クローズ戦略 ~IVIが提案するコネクテットインダストリーズのための中核技術~”と題した講演が行なわれ、経済産業省 平成29年度補正予算 産業データ共有促進事業費補助金「製造プラットフォームオープン連携事業」への取り組みなどが報告されました。

 従来の製造プラットフォーム間の連携は企業間の固定的な取引関係に対応し「階層型(トップダウン型)」で行なわれていました。今後この連携は、必要なときに必要な相手とつながることを可能とする「自律分散型」に変わっていきます。こういった対応を異なる拠点、異なるプラットフォームの間で実現していくことがこの事業の目的です。

 日本の製造業の生産現場に存在するさまざまな価値あるデータを活用するためには、製造プラットフォームが重要な役割を持ちます。この事業は、3つの製造プラットフォーム(ADAMOS、FIELD system、Edgecross)をオープンで共通的な枠組みによってつなぐことを目的とし、企業を超えた連携のための「共通辞書」のしくみを構築するためのものです。それぞれの製造プラットフォームにはそれぞれ個別の辞書が定義されているため、「共通辞書」の内容をIVIが提唱する“ゆるやかな標準”として定義し、状況に応じて変化・成長するしくみの構築を目指しています。

【次ページ】IVIが新たに提唱するボトムアップ方法論「IVIM」

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