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  • 2018/11/07

国内小売業はこのままアマゾンに駆逐されるのか、イオン、セブン&アイの行く末は?

GMS再編に急務のデジタル化

イオン、セブン&アイHDなど「総合小売業」の2018年3~8月期中間決算が出そろった。イトーヨーカ堂が4期ぶりの営業黒字に転じ、イオンもGMS部門の営業赤字を半減させるなどGMS(大型量販店)の業績が回復しているが、それは「復活」を意味するのか? また、総合小売2強はレガシーのGMSを立て直しながら、デジタル化で「アマゾン・エフェクト」に対抗する防衛体制を増強している。総合小売業界の、生き残りをかけたレースが激化している。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。


小売業大手の中間決算、「お荷物」は?

 10月12日、小売業大手の中間決算(2018年3~8月期)が出そろった。

 イオン、セブン&アイHD、ユニー・ファミリーマートHD、ローソン、食品スーパーのユナイテッド・スーパーマーケットHD(USMH)の5社は全て増収で、ローソン以外の4社は最終増益だった。

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小売業大手5社の2018年3~8月期中間決算

 2019年2月期の通期業績見通しは「総合小売業」に挙げられるイオン、セブン&アイHD、ユニー・ファミリーマートHDとも最終2ケタ増益を見込む。業績数字では視界良好と言える。

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2019年2月期通期決算見通し

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 日本の小売業では業界再編を繰り返した結果、GMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)と呼ばれる大型量販店(「イオン」「イトーヨーカドー」「アピタ」など)の売上の9割以上はイオン、セブン&アイHD、ユニー・ファミリーマートHDのいずれかの傘下にあり、コンビニエンスストアも売上の9割以上がこの3社にローソンを加えた4社の傘下におさまっている(業務提携先を含む)。

 GMSより小規模な「食品スーパー」も2015年3月にイオン系大手3社がUSMHに統合して売上高首位に立ったほか、2018年10月には傘下の食品スーパー再編を発表したイオンが四国を地盤とするフジと提携するなど、業務提携や資本提携のニュースが相次いでいる。

 そんな小売業大手の業績の足を引っ張る「お荷物」がGMSだった。食品スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストア、「ユニクロ」のような専門店チェーン、ネット通販などの異業態に侵食され続け、大量閉店計画など暗いニュースばかり報じられた。それが今、少しだけ明るさを取り戻している。

進むGMS改革、だがまだ“道半ば”

 イオン、セブン&アイHD全体の中間期の営業利益は右肩上がりだが、イオンは全体では営業最高益を更新しても、イオンリテールをはじめとするGMS部門は5期連続の営業赤字。M&Aを繰り返して膨脹した店舗数は1898で、前年同期末から10店舗しか減っていない。それでも値下げしたPB(プライベートブランド)「トップバリュ」の好調などで、2016年中間期に183億円もあった営業赤字は58億円まで縮まっている。

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イオンの全体営業利益、GMS部門利益、GMS店舗数の推移

 セブン&アイHDのGMS、イトーヨーカドーも90億円の営業赤字を計上した2015年から3期連続で中間期は営業赤字だったが、2018年では4期ぶりに営業黒字に浮上した。事業構造改革で食品部門強化を打ち出した効果が出ている。その間、181店舗から164店舗まで17店舗、9.4%減らしている。

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セブン&アイHDの全体営業利益、GMS部門利益、GMS店舗数の推移

 ユニー・ファミリーマートHDでGMSを抱えるユニーの中間期単体業績は過去5年間営業黒字を維持してきたが、コンビニのサークルKサンクスと比べれば収益力は低かった。2016年9月のファミリーマートとの経営統合前からユニーの店舗数削減は始まっており、2015年中間期の231店舗から192店舗まで、3年で39店舗、16.9%減らした。

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ユニー・ファミリーマートHDの全体営業利益、GMS部門利益、GMS店舗数の推移

 そのリストラ効果などでユニーの営業利益は2016年中間期の18億円から2年間で93億円(日本基準)へ増えたが、それでも「環境は相当厳しくなっている」(高柳浩二社長)とユニーの自力復活をあきらめ、全株を282億円でドンキホーテHDに引き渡す。長崎屋を再建した実績があるとはいえ、相手は「驚安」が旗印のディスカウントストア業態だ。

 イオンが「全セグメント中最大の損益改善」と胸を張るなど、決算数字の上では「GMS復活」と思わせるかもしれないが、それには店舗数削減のリストラ効果も反映しており、個社ベースでは苦戦が続いている。

 2018年中間期の「既存店売上高」「売上総利益率(粗利率)」を見ると、イオンGMSの主力イオンリテールの既存店売上高はマイナス0.9%で、粗利率は26.2%で改善はプラス0.2ポイントにとどまった。そのため営業赤字から脱することができなかった。

 営業赤字を脱したセブン&アイHDのイトーヨーカ堂は、既存店売上高は前年同期のマイナス1.7%からプラス0.1%に改善し、粗利率は29.6%で0.2ポイント改善した。セブン&アイならではの高収益体質でイオンより粗利率が3.4ポイント高い分、営業黒字に転換できたと言える。

 しかし既存店売上高を詳細に見ると「テナント収入」つまり店内の場所貸し収入のプラス1.4%が大きく、「商品」つまり売場のレジでの売上はマイナス0.5%で、客数の1.3%減がもろに影響している。

 ユニー・ファミリーマートHDのユニー単体の既存店売上高は前年同期のマイナス1.7%からプラス1.1%へ大きく改善し、粗利率は23.3%で横ばいだった。客数はプラス0.2%、客単価はプラス1.0%で、店舗をリストラされながらも現場はよく健闘していた。それでも「コンビニ専業でいく」という会社の方針で切り離されるのは、皮肉ではある。

 総じて言えばGMSは「復活した」と言うよりも「復活の道半ば」。希望は持てるが、油断はできない。しかも方向性が見定めやすいどん底の時と比べると、経営のかじ取りが難しい局面にさしかかっている。イオンの岡田元也社長が中間決算の記者会見で「GMS改革はスピードが命」と述べたように、タイミングを見誤るとたちまち暗転しかねない。

【次ページ】イオン、セブン&アイら大手は「アマゾンの脅威」に駆り立てられている

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