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  • 2018/11/02 掲載

ロサンゼルスがスマートシティ化に必死、背景には五輪とインフラ老朽化

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2028年に五輪を招聘するロサンゼルス市がスマートシティ化に向けて大きく動き始めた。通信会社AT&Tを始め官民協力体制の下、世界一のスマートシティが誕生するという。同市がスマートシティ化を進めるのには理由がある。その理由と、同市が打ち始めた施策、さらに、スマートシティ化への課題をお伝えする。

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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ロサンゼルス空港では、スマートシティの文脈で無人モノレールの開業を目指している
(出典:Los Angeles World Airports)


米国で熱を帯びるスマートシティ化

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 米国のスマートシティ計画というとパナソニックと提携するコロラド州デンバーがよく例に挙げられる。小規模のものではビル・ゲイツ財団がアリゾナ州フェニックス郊外に電力自給自足型のスマートシティ建設を計画している

 スマートシティ化を目指す都市は多く、2025年までにニューヨーク、シカゴ、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスの5つの都市がスマートシティ化宣言を行なっている。さらにボストン、カンザスシティ、オースティン、ポートランド、サンノゼもスマートシティ計画を進行中だ。

インフラの老朽化がスマートシティ化を促す

 今後20年というスパンで見れば、全米のいわゆる大都市のほぼすべてがスマートシティ化に向けて動き出すといわれている。背景にあるのは都市の老朽化したインフラの存在だ。

 ミシガン州フリントで2015年、水道水に鉛が混入するという事件が起きて大騒動となったが、その後昨年までの2年間で水道水に基準値を超える鉛が混入している場所は1000箇所以上という調査結果もあり、人々にショックを与えた。

 このため全米の自治体は今後20年間で41兆ドルを費やし、インフラ整備に加えてIoTを活かした都市づくりを行うとしている。電力に関してはすでにスマートグリッドへの投資が2017年末の時点で267億ドルに達している。今後EVや自動運転車両が増えるに従い、それに対応する新たな都市作りが急ピッチで進むことになる。

 もちろん米国だけではない。フロスト&サリバンによると全世界でスマートシティへの投資額は2025年には3兆3,000億ドルにまで膨らむという。この中で最大のものはスマート・ガバナンス及びスマート・セキュリティで全体の36.8%、次にスマート・エネルギーが23.4%、スマート・インフラストラクチャーが11.4%、以下スマート・トランスポーテーション(ICTで運輸サービスに付加価値を加え、より便利なサービスを提供するソリューション群・サービス群)、スマート・ヘルスケア、スマートビルディングと続く。



 ここで興味深いのは、スマートシティという比較的新しいコンセプト実現に向け、都市と企業との提携が急速に進んでいることだ。デンバーとパナソニックを例に挙げたが、サンノゼはインテル、ベライゾンと提携するなど、企業にとっても独自のスマートシティ・ソリューションのモデルケースとして都市と提携し技術のショウケースとすることが重要となっている。

 そんな中、ロサンゼルス市が選んだパートナーは通信大手のAT&Tだ。AT&Tはスモールセル(補完的携帯電話基地局)を活用して市内にデジタルキオスク(スタンド一体型の自立式のデジタルサイネージ)を設置し、ネット・ニュートラリティ(インターネットサービスプロバイダーはすべてのデータを同様に扱わなければならないという考え方)を都市にもたらし、ロサンゼルス市で生活するすべての人が安全かつ便利な生活を享受できることを目標とすると語っている。

 都市部をカバーするWi-Fiネットワークの充実、さらに5Gネットワークによるスマート・トランスポーテーションの導入により、ロサンゼルス市の最大の問題点といわれる交通渋滞の解消、災害予防、安全化などが図られる。

 もちろんスマートシティという一大計画は1つのパートナーシップだけでは実現しない。多くのIT企業、地元の大学なども含めての構想が必要だ。しかしロサンゼルス市の場合、とにかく28年の五輪開催で訪問客が増えるという喫緊の課題がある。重要なのは空港から市内まで、観光客をいかにスムーズに移動させるかだ。

【次ページ】急速に進むスマートシティ化、しかし意外なところに課題が

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