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- 2019/02/19 掲載
BIMとは何か?CADとどう違う?活用のメリットや代表的なソフトウェアまとめ
大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もある。
注目を集める「BIM」とは?
BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略称だ。建物を実際に建設する前に、コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデル(BIMモデル)を構築することで、建築の無駄を省くことができる。まず、BIMモデルは、建材パーツや設備といったオブジェクトの集合体として構築される。BIMに登録する建材パーツのデータには幅や奥行き、高さといった基本的な情報から、組み立てるための工程や時間も盛り込める。そのため、プロジェクトメンバーは図面以外の工数といったデータも参照することができる。設備機器には品番やメーカー、価格などの詳細な情報を入力できるので、メンテナンスや資材管理でも活用できる。
BIMモデルはすべてのデータが連動しているため、修正を行えば平面図から立面図、断面図、屋根伏図、パース、面積表、数量表などが自動修正される。そのため、実際に建物を建てる段になって、現場に運び込まれた建材同士が合わない、サイズが違う、実物と図面の内容が異なる、という事象を防ぐことができる。さらに、こうしたことを修正していくための時間や手間を大幅に削減することが可能だ。
また、線だけで描かれた図面は業界に熟達した人材しか読み解けないが、BIMなら立体的な構造が視覚的に把握できるため、設計の段階から完成イメージを共有できる。基本設計から実施設計に至る過程で設計変更が生じた際に、最初から図面を修正する手間がなく、設計変更の要望を受けた際もすぐに修正できるため、見積もり契約段階で予算との大きなギャップが生じにくくなるのも特徴だ。そんなBIMは日本のゼネコンでも順次導入されており、今後もますます普及していくことだろう。
3D CADとの違い
従来の3D CADは、2次元の図面を作成した後に3次元の形状を組み立てて、CGでシミュレーションするという流れが主流だった。3次元化した後に修正が入った場合、関連する2次元の図面をすべて修正してやり直さなければならず、膨大な工数をかけなければならなかった。一方、BIMモデルは最初から3次元で設計し、3次元から2次元図面を切り出して作成することになる。BIMモデルを部分的に修正した場合でも、関係する図面の該当箇所はすべてリアルタイムで修正が反映され、図面間の整合性を常に保つことが可能になるのだ。
2次元の図面を作成する必要がなく、修正した場合もすべての図面が自動で修正されるBIMは、無駄な作業を大きく削減して生産性向上に寄与するだろう。
BIMでの作業の流れ
BIMを実際に使用する場合、以下のような流れで作業することになる。1.3Dモデルの構築
建具や家具などの建築要素やパーツを組み合わせ、3Dモデルを構築する。各要素には寸法だけでなく、素材や品番、単価などあらゆる情報を付与できる。
2.ビューの作成
構築したモデルから各図面の基礎となる平面図、立体図、配置図などのビューを作成する。必要に応じて2次元の製図ビューも用意する。
3.集計表の作成
面積表などの集計表を作成する。BIMでは壁の位置などを変更すると、リアルタイムで集計表の内容も修正されるため、手戻りを防止することができる。
4.設計図面の作成
ビューを図面枠用のシートに貼り付け、設計図面とする。仕上げ表や平面図、建具表などを作成し、印刷して出力すれば設計図面が完成する。
BIMの9つのメリット
従来発生していた無駄な作業を削減し、業務効率の改善に大きく貢献するBIMのメリットをより具体的に見ていこう。・3Dモデルの構築と管理がスムーズに
従来のCADでは、各図面を別々に作成した後、それぞれを照らし合わせて整合性をチェックしなければならなかった。その点、BIMは1つの3Dモデルから配置図や平面図などを作成できるので、何枚も図面を作成して確認するという作業が不要になる。
また、BIMモデルと図面が自動で連携するため、モデルを変更した後に図面を修正する手間もない。1つのモデルにすべての情報を集約できるため、設計から施工まで安定した管理が可能になるのだ。
・設計初期段階から各種シミュレーションを行える
かつては照明シミュレーションなどといった各種シミュレーションは、専門家へ依頼する必要があった。BIMは会社のデスクでもシミュレーションを行うことができるため、大きなメリットとなる。設計初期段階にシミュレーションを行えば、事前に建築物の課題を把握できるため、早期に修正対応することが可能だ。
建築モデルで入力したオブジェクトはソフトウェア上ですべてカウントされるので、躯体などの数量を把握でき、単価を入力すればおおよその工事金額を簡単に見積もることができる。
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