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  • 2019/04/17 掲載

世界で高まる「不動産テック」投資熱、三井不動産・三菱地所・ソフトバンクの動きは

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不動産×テクノロジーの「不動産テック」。米国では1000社以上、世界では3000社を超えると言われ、現在も次々にスタートアップが台頭している。今後、業界の破壊者(ディスラプター)になるであろう、これらの不動産テック・スタートアップには多くの投資家が関心を寄せている。特にソフトバンクの出資額は世界でも群を抜き、すでに100億ドル以上を投じている。国内外の不動産テック調査を進め『不動産テック 巨大産業の破壊者たち』(日経BP社)を著した3名が、ソフトバンクや三井不動産・三菱地所らを例に挙げその投資状況を説明する。

北崎 朋希、本間 純、(監修)谷山 智彦

北崎 朋希、本間 純、(監修)谷山 智彦

北崎 朋希
2006年に野村総合研究所に入社後、主に都市・不動産・インフラに関する調査研究及びコンサルティング業務に従事。2015年から日系大手不動産会社のニューヨーク支社において米国不動産市場に関する調査研究に従事。2018年からは東京本社で国内外における都市計画や不動産市場に関する調査研究に携わる。

本間 純
日経BP社に入社後9年間、IT分野の取材を経験。日本におけるネットビジネスの草創期に立ち会う。「日経エレクトロニクス」「日経コンピュータ」などの媒体を経て、2006年より同社のニューズレター「日経不動産マーケット情報」に所属。現在、同誌副編集長。国内外の不動産プロフェッショナル、金融機関、機関投資家を対象として、100億円超の非公開取引を中心に数多くのインサイドストーリーの発掘と、不動産データの定量分析・調査に関わる。

谷山 智彦(監修)
2004年に野村総合研究所に入社後、主に不動産・インフラ等のオルタナティブ資産に関する調査研究及びデータサイエンス業務に従事。2017年11月から野村総合研究所とケネディクスとの合併会社であるビットリアルティ株式会社の取締役に就任し、不動産テック事業を推進。また、国土審議会土地政策分科会企画部会専門委員、内閣府「都市再生の推進に係る有識者ボード」委員等の他、早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)などで非常勤講師を務める。

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不動産テックスタートアップが次々に生まれる中、注目すべきは。
(Photo/Getty Images)


不動産テックとは何か

 不動産テックは、賃貸・売買といった取引、資産管理といった業務、市場調査や鑑定といった評価の各場面に応じて先端テクノロジーを活用し、新たな付加価値を生み出す概念と言い表せる。

 同分野で先行する米国を含め、その言葉の定義についてはさまざまな意見があるが、本稿がこれから紹介しようとしている不動産テックの姿をここではっきりさせておきたい。すでに金融業界で話題になっているフィンテックと同様に、業務プロセスや特定の作業を効率化するためのIT化にとどまらない概念だ。

 たとえば、民泊ビジネスで一躍有名となったエアビーアンドビーは、自宅を貸したいホストと旅行などで滞在したいゲストをWebサイト上でマッチングすることで、これまで特定の世帯が永続的に占有していた住宅という空間を、旅行者の宿泊空間へと変身させた。これは住宅やホテルという存在の垣根を消失させるものであり、宿泊・観光業界のみならず各地の小売業や文化にも多大なインパクトをもたらした。

 不動産テックとは、単にデジタルツールを活用して漸進的な業務改革をめざすものではない。新しいテクノロジーを活用することで、不動産に関連する事業や市場を変え、そして不動産に関わる人々の意識そのものを変革する。組織変革やビジネスモデルの転換に重点を置いた用語を使えば、デジタル・トランスフォーメーションをめざす動きといえよう。

世界、そしてソフトバンクの投資先は

 英サヴィルズによれば、世界の不動産市場規模は217兆ドル。利益率で金融業に次いで2番目に高い産業となっている。その巨大さにもかかわらず、業界には情報の非対称性、労働集約型の産業構造など多くの非効率が温存されてきた。米コンサルティング会社PwCストラテジー&によると、不動産業界のデジタル化浸透度は運輸・物流業と同程度で、大半の産業と比較して遅れた立場にある。

 巨大で利益率が高く、かつ非効率な市場こそ、一般にテック企業の参入余地が大きいとされる。オンライン化される前の旅行業界や証券業界などが典型だ。野心に燃える起業家、投資機会に貪欲なベンチャーキャピタリストなどの顔ぶれが、次なるユニコーンを求めてこの業界に流入している。

 米調査会社のCBインサイツによると、世界の不動産テック・スタートアップへの投資は年率180%のペースで増加しており、18年は44億ドル(約5000億円)を超えるのが確実だ。国別に見ると、世界最大の不動産市場である米国が約5割を占めた。

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世界の不動産テック資金調達額と、国別資金調達額
(出典:CB Insightsを基に作成)

 米国不動産テックのスタートアップを見渡すと、数の上で目立つのはリスティング(物件検索)サイト、小口投資家の資金を不動産取得・開発に投資するクラウドファンディング、不動産会社に業務支援ソフトを提供するマネジメントツール系不動産テックなどである。資金調達額ランキングの上位には、ウィーワーク、エアビーアンドビーを筆頭に不動産仲介会社のコンパス、買い取り再販事業を手がけるオープンドアなどの顔ぶれが並ぶ。

 同国ではVC業界最大手のセコイアキャピタルや、有名スタートアップ・アクセラレーターのYコンビネーターなどが複数の不動産テック企業に出資。ここに来て、不動産テック専門アクセラレーターも相次いで設立されている。

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直近5年間の米国不動産テックにおける資金調達額ランキング

(出典:Crunchbaseと各社報道を基に作成)

(対象は2014年以降の私募による資金調達事例。累計調達額は設立以来の額)

 数あるベンチャー投資家のなかでも、日本のソフトバンクの存在感は米国において群を抜いている。サウジアラビアの政府系ファンドなどと共同投資するビジョン・ファンドを中心に約150億ドルを投資してきた。

ソフトバンクグループの不動産テック企業への投資
(出典:Crunchbaseと各社報道を基に作成)
投資先 業態
WeWork コワーキングオフィス
View 自動調光ガラス開発
WeWork China コワーキングオフィス
Katerra ITを活用した建設会社
Compass デジタル仲介
Opendoor 住宅買い取り・再販
Housing.com 住宅ポータルサイト
Reonomy 不動産データベース
Fieldlens 建設プロジェクト管理
Updater 引越し手続き代行サービス
OYO IoTを採用したインドのホテルチェーン
Prop Tiger インドの不動産リスティングサイト

 最近では住宅買い取り再販大手オープンドア、オンライン型の不動産仲介会社であるコンパスへの大型投資が注目を集めた。中でも目立つのがコワーキングオフィス運営大手、ウィーワークへの投資だ。18年1月に実施した30億ドルの新株予約権の引き受けや、19年1月に発表した20億ドルの追加出資などを合わせ、すでに104億ドルを投じている。

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