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  • 2019/11/19

ローカル5Gとは何か? 総務省の狙いやNEC、パナソニック、東芝の動きなどを解説

5Gの商用サービスが、日本でも2020年より始まる。5Gのメリットは高速、大容量、低遅延、そして1つの基地局により多くの端末が接続できること。そのため、「モバイル通信の体験を変える」と期待されているのだが、5Gのポテンシャルはそれだけではない。IoTやスマートファクトリーなど、企業や自治体のニーズへの活用だ。そこで総務省が打ち出した「ローカル5G」について、詳しく解説しよう。

フリーライター/エディター 大内孝子

フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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ローカル5Gとは何か?
(Photo/Getty Images)

ローカル5Gとは何か? 5Gを取り巻く状況もおさらい

 まず「ローカル5G」について端的に説明しよう。日本でもやっと商用サービスの始動が見えてきた5G(第5世代移動通信システム)。この5G通信環境を、企業や自治体が「自営網で」構築し、IoTやスマートファクトリーで活用しようというのがローカル5Gである。

 ローカル5Gについて詳しく解説する前に、大元となる5Gを取り巻く状況についておさらいしておきたい。ご存知のとおり、5Gの特徴は高速・大容量、低遅延、多数同時接続(以下、多接続)と大きく3つのポイントがある。

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図1:5Gの特性

 これまでのモバイル通信の進化は、2Gから3G、あるいは3Gから4Gと、より高速化・大容量化した新たな規格が既存の規格を置き換える形で進んできた。もちろん完全な切り替えではなく、移行期間を設ける形になる。携帯電話向け2Gサービスは移行期間を経て2012年に終了、同じく3Gはドコモが2020年代半ば、auが2022年終了と発表している。

5Gについてのわかりやすい基礎解説記事はこちら

 しかし5Gの場合、移行期間うんぬん以前に、4Gからの乗り換えにどこまで需要があるかが課題の1つとされる。よく「5Gはスロースタート」と言われるが、背景には近年のスマートフォン需要の伸びが緩やかになってきていることが大きい。そして、そもそもモバイルの体験として現状のコンテンツを楽しむには4Gの品質で十分という状況がある。すでに高画質の動画配信をストレスなく楽しめるのに、何を5Gの売りにするのか。キャリア各社がコンテンツプロバイダーも含めて、5Gに乗せる新たなコンテンツの開発、あるいはサービス体系などの構築に取り組んでいる。

 4Gの登場、モバイル通信というユースケースにおける通信インフラの置き換えは、私たちの生活、そして社会に非常に大きな変化をもたらし、ある意味「暮らし方を変えてしまった」とも言える。そのため、モバイル通信の既存インフラを置き換えるという活用では、「5Gは4Gの延長線上のものにしかならないのではないか」という懸念がより大きいのだ。

 一方で、5Gの低遅延、多接続という特性をビジネスに活用するための議論はかなり早くから始まっていた。通信の遅延は4Gに比べて10分の1に、1つの基地局との接続デバイス数も100万と4Gの10倍が見込まれる。それをどう活用していくか。

 その活用方法の1つとして、総務省が構想しているのが、冒頭で述べた「通信キャリアに依存せず5Gのネットワークを構築する方法」、ローカル5Gである。

総務省が提示するローカル5G 3つのコンセプト

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 総務省では、情報通信関連企業だけではなく、東芝、パナソニック、NEC、日立など電機メーカーや、ノキアなど情報端末製造メーカーなど、民間企業各社にヒアリングを実施。未使用周波数帯域のうち、新たに利用可能な割当枠を「ローカル5G帯域」として、その使い方、無線局の免許申請など制度化を進めている。

 これはつまり、5Gの特性をIoT、スマートファクトリー、さらに自動運転基盤など新たなICTのインフラとして使おうということだ。技術的な条件も含め、スタートに向け検討を進めている段階ではあるが、徐々に形が見えつつある。

 総務省が提示するローカル5Gのコンセプトはこうだ。

  1. 第5世代移動通信システム(5G)を利用
  2. 地域において、ローカルニーズに基づく比較的小規模な通信環境を構築
  3. 無線局免許を自ら取得することも、免許取得した他者のシステムを利用することも可能

 低遅延、多接続という5Gの特性から特に期待されているのは、たとえばスマートファクトリー、ドローンや重機、建機、ロボットの遠隔操作などである。もちろん、これらに限らずだが、「現場の大量の情報(画像やセンシングデータなど)をクラウド側に送信」し、「クラウドでデータ処理・解析」し「アクションを返す」、この一連の動作をリアルタイム(超低遅延の状態で)に行えるというのは大きい。スマートシティや自動運転はまだ少し先だとしても、さまざまな分野に潜在的なニーズがある。

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図2:ローカル5Gのユースケース
(出典:総務省「ローカル5G作業班 第一回会合 5Gの自営的利用について」をもとに作成)

 このローカル5Gの目玉は「比較的小規模な5G通信環境を自前で構築」できることだ。つまり、自敷地内という限られたエリアで周波数の割り当てを受け、5Gを使った通信環境を構築できるのだ。

 たとえば、工場をオートメーション化したい企業が、自社の敷地内に5Gネットワークを自前で張ることができるということになる。通常、リモートのデバイスをクローズドのネットワークに接続するにはWi-Fiなど近距離無線を使うが、その部分を5Gという安定した高品質の通信に置き換えることができる。

 周波数帯域としては4.6~4.8GHzおよび28.2~29.1GHzの周波数を利用することが想定されている。現在、他の帯域に比べて検討事項が少ないとして、28.2~28.3GHzの100MHz幅について先行して技術的条件などがとりまとめられている。以下では、28.2~28.3GHzの100MHz幅における運用の方針について紹介する。なお、4.6~4.8GHz、28.3GH~29.1GHzにおいては、この方針に縛られずに検討を続け、また28.2~28.3GHzについても追加検討の余地がある、とされている。

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図3:ローカル5Gの候補帯域
(出典:総務省「ローカル5Gの審議再開」をもとに作成)

 基本的には、所有する(=所有権、賃借権、借地権を有する)土地、または建物を対象にした割り当てとなる。そして、所有権のない土地における利用については、土地の所有者がローカル5G帯域を使用しない場合に限り、固定通信(基地局も端末も原則として移動しない利用)を行うことが可能だとされている。これは建物など、遮蔽(しゃへい)物による減衰への対策として、中継基地的な施設の運用を考慮に入れてのことだろう。

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図4:「所有者利用」と「他者土地利用」のイメージ
(出典:総務省資料「ローカル5G検討作業班資料」より)


 所有者から依頼を受けてローカル5Gのシステム構築を行うことも可能なわけだが、ポイントは、全国向けのサービスとして5G帯域の割り当てを受けている通信キャリアは、ローカル5G帯域の免許取得を「当面は不可」とされている点。つまり、ここに新たなビジネスが生まれる余地があるということになる。

 すでにNECや富士通、パナソニック、東芝がローカル5Gを使った「スマート工場」サービスへの参入を表明している。

【次ページ】ローカル5Gへの参入を表明している東芝、パナソニック、NECの動き

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